ポルトガルの首都リスボン。ここの国立馬車博物館の中に18世紀のゴージャスなナチュラル・トランペットが保管されている。

この由緒ある建物は旧博物館で、現在は左のモダンな建物に移設されている。
その名の通り、この博物館ではさまざまな馬車が展示してあり、その中には大層煌びやかなものも。
一時代を築いたポルトガル王室の絢爛さが偲ばれる。

自分にとっては、イベリア半島の端にまで来てのお目当ては馬車ではなく、当然歴史的楽器のコレクション。
ここの存在は D. Smithersの本 "The Music & History of the Baroque Trumpet before 1721"(p55)や、E.H.Tarr の "The Trumpet" (p91-92)に記載があり、トランペットのアンサンブル曲 Charamela Real のことで知っていた。
館内を探してみると、馬車のそばに王宮で使われた楽器が展示してあった。

これはハンティングホルン
19世紀にリスボンの国立軍事兵器庫にて製作されたもの
別の一角にナチュラルトランペットとドラムがあった。
ここには6本のナチュラルトランペットが展示してあるが、実際は22本も保管してあるらしい。
戦場などで使われていないので、とても綺麗な状態で保存されているのが素晴らしい。



本体は銀製で、ボールとガーランド(朝顔をぐるっと取り巻く装飾部分)を含むベル、それにファレル(管の結合部分)は金メッキが施されている。
先に挙げた本によると、22本のトランペットのうち、20本は1761年製、2本が1785年製で、製作者は不明(ガーランドには時の王や王妃の名前しか刻印されていない。通常ここには製作者マイスターのイニシャルが記されている)だが、おそらく地元ポルトガルのメーカーではないかとのこと。
当時ドイツの著名なトランペット奏者であったアルテンブルクは、その本 "Trumpeters' and Kettledrummers' Art" に、ボルトガル国王はこれに先立つ1722年にドイツから20人のトランペット奏者と2人のティンパニ奏者を招聘して、かなりの高待遇で雇った記録している(Tarr訳 p39)。僕はこの記事から、てっきりこれらの楽器もドイツ(多分ニュルンベルグ)から輸入したものだったのではないかと思っていたが、どうも記憶違いでポルトガル製だったようだ。確かにガーランドの装飾もエーエやハースのお馴染みのものとはちょっと異なるデザインになっている。
当時のトランペット奏者のコスチュームも展示してある。お相撲さんの化粧まわしではないが、ドラムにも豪華なタペストリーを巻いたようだ。

楽器の状態もいい(吹いてどうかは別にして)が、ここにはアンサンブル曲集 Charamela Real のパートブックが展示してあるのが保管の良さを示している。また、当時どのような音楽が演奏されていたのかが分かる貴重な資料となっている。

これらは1760年-1770年のもの。手書きの譜面を革で綴じ込んで、金箔で装飾してある。遺失した2冊を除く22冊が残っているそうだ。
リスボンには観光の見どころが多いが僕にとってはこの博物館が最も重要な訪問先だったので実物が見れて満足だった。しかし、ここにはこの博物館の他に音楽博物館 Museu da Musica があると知ったのは帰国後。行っときゃ良かったと思っても後の祭り。