これからはバロックトランペットの時代?
どうしても話題が自分の楽器に偏ってしまうんですが、今回はバロックトランペットのことです。
バロックトランペットとはその名の通りバロック時代に使われていたトランペットということなのですが、正確に言うと当時使われていたものと今使われているものとは微妙に異なっています。というのは、昔の楽器はそれこそ何の細工もない真鍮の管で本来の自然倍音しか出せなかったのですが、今世の中に出回っている楽器はたいてい音程調節のためにそれに3つなり4つの穴(補正孔)を開けたものなのです。そうしないと平均律に慣れた現代人の耳にはひどく調子っぱずれに聴こえてしまう。補正孔は20世紀後半の発明で、もうバロック時代ではありません。そういった訳で厳密にはヘンデル、バッハ時代の楽器はナチュラルトランペット(自然の、あるいは自然倍音の出るトランペット)と呼び、現代の補正孔のついたレプリカをバロックトランペット(バロック時代に使われた形式のトランペット)と呼ぶことになっているようです。(これはエドワード・タール氏が提唱している名称区分方法です)
そうした妥協の上に現代に蘇ったバロックトランペットですが、僕は密かにこれからかなり普及するんではないかと思っています。それはバロック音楽にとどまらず、むしろナチュラルが使われていた古典派(モーツアルトやベートーヴェン)の演奏においてです。なにより捨てがたいのはその音色。管の長さが現代の楽器の倍近く長いことで倍音が豊かですし、オーケストラの中にあって弦楽器の音と融和し、決して出しゃばらない、けれでも聴こえている、という技が可能です。また補正孔のおかげで現代人が聴いてもおかしくない音程が出せるようになっています(そうじゃないとファとかラの音は聴けたものじゃないですから)ベートーヴェンの第九の4楽章の有名なテーマ、ミミファソソファミレ がちゃんと吹けます(もちろん現代の楽器で苦もなく吹ける っていうじゃな〜い、でも細かいこと言うとB管やC管のモダントランペットで吹く第九はニ短調ではないですから〜、残念!)
さて、そんな訳でもうその兆候は世間に出始めています。ベルリンフィル指揮者のラトルやシュツットガルト響のノリントンがピリオド奏法を取り入れて成功していますが、サウンドを追求すればその流れが使用する楽器にまで及んでくるのは必然でしょう。そしてその効果が一番大きいのはトランペットとティンパニだと(私見ですが)思うんですよね。
日本のオケでもプロの山形交響楽団が取り入れているという話を聞いていますし、モダンオケで試しに使ってみて気に入ったという指揮者の方もいらっしゃいます。東京のアマチュアオケで昨年、第九やハイドンのシンフォニーにバロックトランペットを使いましたという話も増えてきました。あるいは今度演奏会で使ってみたいんだけどどんなものでしょうか、という問い合わせもちらほらあります。てなわけでこれから出番が増えてくるのではないでしょうかね。ちょっと我田引水かな?
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コメント
こんにちは、私はドイツ語圏の民族音楽のアマチュアのバンド、アルテ・カペレを主催している者です。
バロックトランペットに興味があり自作のバロックトランペットを持っています。
どこかで、アマチュアのバロックトランペットアンサンブル(トランペットコー)の団体をご存じありませんか?
投稿: アルテ・カペレ ディリゲント | 2011/04/06 17:37
アルテ・カペレさん、こんにちは
自作のナチュラルトランペットですか。すごいですね。
ナチュラルトランペットコアーという形態のアマチュア常設アンサンブルは聞いた事がないですねえ。
ナチュラルトランペット演奏の研究という意味ではラ・トロンバの会というのが都内で定期的に開かれているようですよ。
投稿: 中村 | 2011/04/08 23:03
回答ありがとうございます。
バロックトランペットアンサンブルやるとしたら、自分達で作るしかないかなあ・・・
投稿: アルテ・カペレ ディリゲント | 2011/04/09 22:25