ヤマカズ
自分が体験した中で一番好きな指揮者はなんといってもヤマカズです。山田一雄。僕が新交響楽団にいた時期にヤマカズの得意とするマーラーをはじめ、いろんな曲を振ってもらいました。
ヤマカズの棒はよくオケ奏者からは分かりにくいというぼやきも多くて、確かに打点を大事にする人にとってはそうかもしれません。でもそんなことより音楽をしたいという意思が全面に溢れ出さんばかりの指揮で、一緒にその音楽にのれるとこんなに気持ちのいいバトンはないのでした。
アインザッツ(音の出だし)が明確で、楽曲の構造もよく把握していて、っていう指揮者の場合は、それはそれで演奏はしやすいのですが、単に破綻がないだけと言えます。仕事片付けました、みたいな。今考えるとヤマカズは子供のような純粋さで大人の音楽をしていたんだなあと思えます。
エピソードを2つ
曲は未完成。演奏は珍しく指揮と一体になってすばらしい出来でした。2楽章の最後の和音が天上の音楽のように響いて消えていった直後です。お客さんや演奏していた我々もがその余韻を慈しんでいたそのとき、ヤマカズがふと指揮台の上で一歩右に立ち位置を動かしたかと思うと、なんと誰よりもいち早く拍手をしたんです。僕らも演奏には満足したけど、ヤマカズもうれしかったんでしょうね。感動しました。
マーラーの8番でのこと。千人の交響曲とも呼ばれるこの曲は8人のソリスト、2つの合唱団、児童合唱などを含む大規模な作品です。東京文化会館のステージにはそれこそ1000人近い演奏者がいました(よく乗っかったというべきか、ステマネはそれこそ舞台が抜けるんじゃないかと本気で心配してましたね)
さて、この曲、2部の最後のクライマックスで金管奏者のバンダ(別動部隊)が出てきます。彼らは3階客席の右側に位置して待機していました。曲のその部分に到達すると、ヤマカズは合図をしようと左を振り返ります。「あっ、バンダがいないー!」当たり前です、反対側を向いたのですから。しばらく空をきるヤマカズの棒、青ざめる1000人、あっけにとられる聴衆。ヤマカズらしいカオスでした、はあ。
店長(まいど古楽とは関係ない話ばかりですみません)
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