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2005/02/21

8年ぶりの納得

そのときには気がつかないけど、あとになって「ああ、あれはこういうことだったのか」と初めて理解できるってことがあります。

なぜそういう成り行きになったのかといういきさつを話し始めるととても長くなってしまいますのではしょりますが、時は1997年10月、場所は愛媛の今治で、僕はイギリスのトランペット奏者であったフィリップ・ジョーンズ氏の公開クリニックの通訳をしていました。

ある参加者から「高い音と低い音のタンギング(舌使い)の違い」について質問がでました。氏の答えはかいつまんで言うと、高い音域の時は上の歯茎のあたりの高い位置でタンギングする、低い音域になるにつれその位置が低くなってくるけれど、あまりに低いところまで下げすぎない方が良い、との回答でした。

僕はちょっと釈然としなかったけれど(というのは上の歯の歯茎あたりでタンギングするというのは技術的に不可能だと思ったからです。それじゃ息が出て行かない)、とりあえずそのまま訳しました。質問した人もあまり納得できなかったみたいな様子でした。

ところが、つい先日たまたまその時の録音を聴き返していたとき、はたと気がついたのです。僕ら日本人はタンギングというと舌を突くことと解釈しますが、氏の言ったタンギングとは単に舌の位置関係だったのではないかと。

この1、2年、僕の中では高音域をどうやって克服するかというのがずっと頭にこびりついている課題なんです。で、ことあるごとにハイノートの得意なラッパ吹きをつかまえては「高い音を確実に出す秘訣はなんなの?」と聞いてまわっています。結果、どうも共通する意見は、普通のプレーヤーが第一に気にするアンプシュア(唇の形)ではなくて、1)音をサポートする息と 2)舌(べろ)の位置、すなわち口の中で盛り上げるような形状にして狭い空間を空気が鋭く通るような状態をつくる、それから 3)高音を苦手と思わないマインドコントロール、この3点に集約されるようです。これ、自分の中では得た結論としてかなりの秘伝なんですけど。

で、数年ぶりにフィリップ・ジョーンズの録音を聴いて、「あ、あのときこのことを言ってたんだ!」とすごい納得してしまいました。のどにつかえていた魚の小骨がとれたような気分になったと同時に、あの質問者にきちんと正しい回答をしてあげなくて申し訳なかったな、と思いました。ほんの少しね。    店長

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