スライド・トランペット(その2)
スライド・トランペットが演奏しづらいのは主に次の2点が原因です。
1 (マウスピース部分を除く)楽器全体を伸び縮みさせて演奏するため、楽器を保持する際にバランスが悪いこと
2 スライド部分が(アルファベットの)I の字状態でストロークを長くとる必要があること。
これは同じスライド楽器のトロンボーンと比べると明白です。D管のスライド・トランペットはEs管のアルトトロンボーンとほぼ同じ管の長さなのですが、トロンボーンはU字型になっているスライド部分のみを動かせばいい(朝顔部分は固定)のに比較して、トランペットは一番重たい朝顔部分を最も体から離れたところで行ったり来たりさせる必要があります。また、伸ばす長さも、例えば半音下げるためにトロンボーンが7cmスライドを抜くところ、トランペットだと14cm動かさなければなりません。機動性に欠けることこのうえないです。
まあ、そんな訳でトロンボーンは古代から生き残って現在に至ったのに対してスライドトランペットは廃れちゃったっていうことなんでしょうね。
歴史的には楽器としてスライド・トランペットが指定してある最後の例としては J.S.バッハのカンタータ集があります。譜面にはTromba da tirarsi という名前になっていますが、伸び縮みするトランペットという意味で、主に合唱と一緒にコラールを演奏する役目に使われています。
バッハはまたいくつかの教会カンタータのコラールにコルネットを指定してもいます。おそらく皆で唄う賛美歌にはコルネットやスライドトランペットなどの古めかしい音色がふさわしいと思ったんでしょうね、あまり機動的に正確に演奏しない方が作曲者のイメージにあっているのではないでしょうか。(言い訳?) 店長
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