スイッチヒッター
コルネットのマウスピース(唇に当てる部分)はとても小さいのが特徴です。直径を測ってみると、普通のトランペットのマウスピースは 25.5mm 、バロックトランペットのが 28mm に対してコルネットのそれは 17mm しかありません。このマウスピースの小ささがこの楽器の演奏を困難にしている一要因でもあります。(他にもいろんな要因があるんですが)
普通人間の唇は中央の部分が一番盛り上がっていますよね。これは小さいマウスピースを当てるのにはあまり具合が良くないのです。唇の薄い部分、つまり真ん中を避けて右か左、あるいは極端な場合は唇の端っこで吹いた方がコントロールしやすかったりします。その証拠として、昔の絵を見てみると、コルネット奏者は楽器を唇の端に当てて演奏している絵が断然多いのです。
現代のコルネット吹きはどうかというと、まちまちですね。ブルース・ディッキーやカニヤック、ウィリアム・ドンゴワはほぼ真ん中ですし、フランスの名手ジャン・チュベリは確かちょっと左にずれてます。対して私の師匠の濱田さんは完全な右端で吹いています。
僕もコルネットを習い始めた当初は真ん中で吹いていましたが、師匠の影響もあり、いろいろ試した結果、始めて2年目くらいに右端で吹くように奏法を変えました。それによるメリット、デメリット双方あったのですが、メリットが上回ったので以来右端で演奏しています。今も真ん中で吹けないわけでもないのですが、今や通常の位置に比べると不満足な結果しか得られません。
というわけで、急に話は戻りますが、前回の話の種明かしは「マウスピースを普段と違う位置に当てて演奏した」というわけでした。野球で言うスイッチヒッターみたいですよね。結果は、やっぱり良くなかったけど、でも音が出ないより全然ましです。唇をけがしたときとか、バテて音が出ない時などの緊急時にはこの秘技が使えるようです。もちろんサイズの大きいトランペットのマウスピースではこんな技はできませんが。 店長
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