もののあはれ
藤原正彦「国家の品格」を読む。
うむうむ、そうだよなあ。と目からウロコ。かなり独断の部分があって話に飛躍もあるものの、うなずけるところがたくさんあった。
この数年は内田樹にはまっていて、いろいろ考え方に影響を受けていたんだけど、彼はフランスの知性で攻めてきてるわけで、それはそれなりに傾聴するところ多いものの、こうやって久しぶりに日本の情緒を大事にすべしというような議論を真っ正面からされると、「そうだ、これだったんだよ、忘れていたことは」という気持ちにさせられる。あ、決して内田樹が日本文化を軽視しているわけではなく(彼は武道家だし)、論理論理で考える思考形態にこちらが疲れて来たということなのかもしれない。
現に今まで速攻で買っていた内田本も、最新刊のは(店頭で見たところ)ほとんどブログの焼き直しだったから、手を出さないでしまった。前だったら考えられない心の変わりよう。
そこでこの本。国語、算数などの基礎教育を大事にすべし。論理で全てが片付くわけではない。自由、平等を疑う。日本の貴重な立ち位置と果たすべき役割。それぞれに同意できるところが多い。特に自分のように資本主義の権化みたいな仕事に従事しているものにとっては、合理性を突き詰めれば必ず最良の結果が得られる(いわゆる神の見えざる手)という議論が虚構であることを痛感させられているからかもしれない。論理では割り切れないものも大切にしなくっちゃあね、ということ。
きっとそれはこの著者の藤原氏が美を重んじる数学者だからなのかも。理由はうまく説明できないが。
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