Show off
60年代にバーンスタインがやってた画期的番組 Young People's Concert の現代版ともいえる企画で、小沢征爾とウィントン・マルサリスがタングルウッドの小屋を舞台に子供達に音楽の面白さを教えるWynton on Music というシリーズ物の番組があったのをご存知だろうか。すごくいい番組で確かビデオも出てたはず。
僕のお気に入りはヨーヨーマをゲストに招いてウィントンが「練習と言う怪物」というタイトルで子供達にどうやって練習に取り組むかという心構えを話した回だ。
ウィントンが挙げたポイントは12個あってどれも納得のいく大事なものなんだけど、その中にDo not show off っていうのがあった。
どういうことかというと、ウィントンがラッパを始めてしばらくすると循環呼吸というのができるようになったそうだ。循環呼吸というのは口から息を出しつつ同時に鼻から息を吸って演奏するという難度の高い技で、これを使うと何分でも息継ぎなしに演奏することが可能だ(ホントは息継ぎしてるんだけどね)。
ウィントンは嬉しくなっていつも循環呼吸を使って果てしなく演奏をして友達とかに自慢をしてたそうだ。
それを見ていたジャズピアニストの父親がウィントンにピシリと一言、Don't show off !(自慢するな、ひけらかしは芸が浅い)と言ったそうな。ハッと思ったウィントン少年はそれ以来その戒めを肝に銘じているとか。
最近買ったCD、Alison Balsom (trumpet) のJ.S.Bach Works for Trumpet を聴いてこの話を思い出してしまった。
Alison Balsomはイギリスの若手トランペット奏者。超美人!ラッパも上手い。このCDはモダン楽器だけど、ナチュラルも吹いていて別のCDでは共演しているスティールパーキンスよりもよっぽど上手だ。で、このCDではバッハの曲(チェロ組曲とかVln無伴奏とかチェンバロ曲とか)をトランペット用にアレンジしてなんでも吹ききってしまっているのだけれども、鮮やかな演奏の割には聴いた後に残るものがなにか浅いような気がする。
自分がラッパ吹きだからこそこの演奏のすごさは分かるんだけど、そして多分自分が高校生や大学生だったら絶賛して愛聴盤にするところなんだろうけど、今はSo what? という感じ。
なんて言えばいいのか、あ、ホルン吹きのバボラクがバッハの無伴奏チェロ組曲をCDにしてるけど、あれを聴いた感じと似てるかな。ホルン吹きにはこたえられない演奏だろうけど、それ以外の人にとっての「なにもホルンで吹くこともないんじゃないの、ま、上手いけどさ」ってな感覚だろうか。
なんだろう、ラッパにはアレンジものじゃなくてもっとラッパにふさわしい音楽があるってことなのかな。それともラッパでチェロ組曲を音楽的に演奏するのが至難の技というだけのことなのかな。ラッパ吹きでありながらそこのところがよくわからない。
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