Philip Jones に関する仮説
1997年に相模原でブラスアンサンブルクリニックをやったときのこと。
最後のQ&Aで
「デッドなホールやライヴなホールなど響きが様々に違うところで演奏する場合、曲のテンポを変えたりしますか?」と受講生がPhilip Jones に質問した。質問の趣旨は、よく響くところでは細かい音符とかが聴き取りにくくなるので遅くしたりする などの対応を臨機応変にするのかどうか ということを聞きたかったのだろう。それに対する氏の答えは
「いや、全く変えない。ホールの響き方によって変化させるほど器用ではないし、普段練習しているテンポでベストを尽くすのみだ」というものであった。
多分この人には絶対テンポというものがあったんだと思う。
証拠その1
同じ来日時の今治でのアンサンブルクリニックのとき。まな板に乗ったのは我々のアンサンブル、曲はシャイトのLudi Musici から僕が編曲したもの(PJBE盤だと戦いの組曲として知られている曲集)。その当時僕は古楽をかじり始めたということもあって、古楽奏法的なものも取り入れつつ、とにかく脱PJBEで演奏してみた。最初にひと通り聴いたジョーンズ師、「うん、なかなかいいですね、しかし、最初はこういうテンポで始めた方がいいんではないでしょうか」「ここは少しルバートしてみましょう」「ここでポーズをいれましょう」とクリニックが進むにつれ、みるみる聴き馴染んだPJBEの戦いのガリヤルドになっていった。この人にとってこの曲の解釈はこれしかないのだなと思わされた出来事。
証拠その2
つい最近、きっかけがあってウォルトンの「スピットファイアのプレリュードとフーガ」を聴き比べした。これは映画スピットファイアにイギリスの作曲家サー・ウィリアム・ウォルトンが音楽をつけたもの。元はオーケストラ曲だがPJBEはこれをブラスアンサンブルに編曲している。うちにあるCDは3つ
1. ウィリアム・ウォルトン指揮/フィルハーモニアオケ(1963年録音)
2. ネヴィル・マリナー指揮/セントマーチンインザフィールズ室内管(1990年録音)
3. フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル (1976年録音)
マリナー盤はプレリュードがすごく堂々としていてテンポもゆったり、それに比べ作曲者自身の棒は比較的あっさりとマーチを進めて行く。PJBEも弦楽器がないということもあるのか、さくさくと進むテンポ設定。いや、まてよ、よく聴くとテンポからリタルダンドのかけかた、アテンポに戻る呼吸などすべてフィルハーモニア盤にそっくりじゃないか!
考えてみると1963年にはPJはまだフィルハーモニアの首席奏者だったからこの録音にも参加してるのだった!多分、指揮者(作曲者)の解釈を金科玉条としていてそれを忠実に再現したのではないかと推察される。ま、あくまでも僕の推論でできればPJに直接聞いて確かめたいところなんだけど。
それにしても、フィルハーモニア盤、フーガに入りたて5小節目でトランペットが思いっきり違う音を吹いているんですけど。これってPJ? レコーディング・エンジニアもおおらかだよね。
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