レクチャーコンサート
上野の国立科学博物館で開かれた「楽器の進化、ホルン」というレクチャーコンサートに行ってきた。
会場の本館講堂は昭和初期の学校講堂みたいで趣きがある。200人くらい入るホールは満席。年配の方や子供も多くてむしろ業界関係者はあまり見当たらず。ホルンの塚田聡氏はコルノダカッチャとナチュラルホルンとモダンのホルン、そして最後にワグナーチューバまで披露。ピアノフォルテの小倉貴久子さんと対談形式でやさしく金管楽器の構造からホルンがどのように進化してきたか、右手の使い方とか一般の人にもわかりやすく説明があって、前半にモーツァルトのホルンコンチェルト3番、後半にピアノソナタのトルコ行進曲とコンチェルト1番の実演があった。(ホルンはいづれもナチュラルでの演奏)
ナチュラルホルン上手い、さすが第一人者。それから話もうまい。ちゃんと台本を組み立てて素人にも親しみやすくプログラミングしてあるのもえらい。すごく得をした気分のレクチャーコンサートだった。
それにしても同じナチュラルでもホルンとトランペットは全く別ものだということが納得させられた。
ホルンは基本的に管の長さが変わってないからダブルのフレンチホルンはB管からC管までのナチュラルホルンの集合体という説明はすごく理解しやすい。
マウスピースも基本的に差がないし、右手が使えるからラッパが一番苦労するベンディング奏法も必要ないのでアンブシュアはモダンだろうがバロックだろうが同じで済む。ラッパと共有するモダンと違う問題点はアーティキュレーションくらいだろうか。
いいよなあー、と思う反面モダンと違いがなさすぎてやる気が出てこない一因かもしれない。
平たく言うと、例えばモダンのホルン吹きに「ちょっとこれ吹ける?」ってナチュラルホルンを渡したとして、彼らはそれほど違和感なく吹きこなすだろう。もちろんそれでいきなりホルンコンチェルト吹けって言っても無理だけど。それには右手の練習も必要だしアーティキュレーションも違う。でもゲシュトップ奏法なんて普段からやってるんだから面食らうこともなさそうだ。「どう」「軽くていいねえ、素朴な感じがするし。でもやっぱりちょっと不自由だよね、音階なんか」こんな会話になりそう。
では仮にモダンのラッパ吹きにバロックのマウスピースをつけたナチュラルトランペットを手渡したらどうだろう。
「うわっ!でかっ!なにこのマッピ!」音出す前にまず一言。で、吹いてみて「何の音吹いてるかつかめないよ、これ」「ヴィヴァルディのコンチェルトとか吹けそう?」「無理だよ、調子っぱずれだし、そもそも高い音でないし」という仮想会話になるだろう。
だからやりがいがあるんだけどね。
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