僕がラッパを高く掲げるわけ
ただカッコをつけているわけではない。
ラッパの音が鳴るしくみを単純化すると、肺からのど、口を通って送り込まれる空気、音の高さを決める口蓋の形状、振動を生む唇、この3つが人間の体の役目で、そこから後は音の性格を決定するマウスピースを経て管と朝顔が音を増幅するだけに過ぎない。楽器本体は音色や音程を確定することはできても音を作り出すことには何も貢献できない宿命だ。
従っていかに体を使うかがラッパを上手く吹けるかに直結している。これは当たり前でとても重要なことなんだが、ややもすると技術的な瑣末事項に気をとられてしまって忘れ去られがちだ。
オルガンに於けるふいごの役割を果たす肺は充分な息をしっかりしたサポートで送り込まなければならない。胸は大きく開くべし。両手で楽器を持つのは胸を狭くするので厳禁。空気の通過過程もなるべく邪魔がないほうがいい。途中のどを絞めたりするのはもってのほか。うつむき加減の姿勢で吹くと空気の通り道が(人体を横から見て)英文字のJをさかさにしたかたちになって抵抗を生む。できれば逆さ文字のLのほうがいいに決まっている。
そのためには顔を上げてラッパを地面に並行するように持つ必要がある。マーラーのシンフォニーで時々指示が出てくる"ベルアップ"を始終やってることになる。ナチュラルはただでさえ楽器が長いし、長く持っているとだんだんしんどくなるんだけどね、そこは我慢。
そうする(ベルアップ)ことは副次的効果も生む。すなわち楽器を意識的に水平に保つには、通常の人間の口の作りからは不自然だが、上の歯と下の歯の並びを垂直に揃える為に敢えて下あごを出す(すなわち受け口にする)必要がある。
それがどう影響するかということだが、振動を作り出す唇は上下同様の働きをしていると誤解されているかもしれないが、実は振動して音を出しているのは上唇なのである。下唇およびそれをサポートする下の前歯は上唇がフレキシブルに振動しやすいように 位置決めをし、固定されてなければならない。
これが逆に上下の歯並びに傾斜がある(うつむき加減だ)と、上唇および上の前歯がポジショニングすることになり、自ずから振動出来る部分を殺してしまうことになる。
以上の論理の正しさを裏付ける証拠として、昔の絵を見ると、ラッパ吹きは必ず右手で(左手は馬上だったらたずなを持っていなければならないので)ラッパを高く掲げて回りに聴こえるように朗々と吹いている。重力には逆らっているが理にはかなっている。
斜め下をねらって吹いているような絵は(マーチングを除いて)一つも残っていない。
以上の話も今年の夏マデウフさんから教わった大事な教えだ。
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