重圧
おとといのSG(ソシエテ・ジェネラル)の巨額損失のニュースにはびっくりした。リスク管理のうるさい今時そんな事態が隠し通せたことに対してである。バックオフィスの経験もある一人の先物トレーダーが約1年にわたり取引して損失が雪だるま式に累積、その間帳簿をバックオフィス業務に詳しいその一人が操作してごまかしていたというのだから、パターンとしては過去に起こったD銀行NY支店やイギリスの名門B証券シンガポール支店の事件と同じだ。
しかし、先物取引は市場で毎日値洗い(清算)するもの。損失がでればその分日々資金を調達してこなければならない。いわば個人が信用取引するときに評価損が発生すれば追加証拠金(追証)を迫られるのと同じ仕組みだ。49億ユーロ(7600億円!)という金額はファンディングするには半端な金額じゃないから誰かを巻き込まないでは続けられるものではない。
SGはこの個人が全く一人で行った不正取引と表明しているが、管理の目が行き届きづらい支店で起こった話ならともかく、パリ本店での話なのだから本当だとするといかにも管理体制が緩すぎると言わざるを得ないだろう。
一方、マスメディアの報道では触れられてないが、この担当者の取引ではそれまで表向きには同じ期間かなりの利益が計上されていたとも聞く(あくまでも未確認情報だが)。だとすると、ポジション両建てにしておいて利益はポケットに、損は闇に葬るというその手口がこれまた過去につらい経験をしたY証券の例が思い起こされる。Y証券は組織的(しかもトップも認識の)な不正だったけど、SGは本当に一人の仕業と言い切れるのだろうか。
さらにまたSGのプレスリリースによると不正発覚は先週末のことで19,20日に内部で精査をして今週に入ってからポジションの解消をしたということ(株式市場が今週むちゃくちゃな動きをしたのはこのせいもあったんだー)だが22日にアメリカの中央銀行(FED)が緊急利下げをした時にはSGからこの話はまだFEDにも知らされていなかった。急落する世界の株式市場に対応して緊急措置をとったFEDにとってはどさくさの最中に後からもたらされたSGの報告には「だまされた」という気持ちが働くのではなかろうか。
まあ、そんなこんなでいろいろ邪推が働いてしまうのだが、そういう不正ができる環境にあったということは、その個人がウィークチェーン(鎖の弱い部分)を担わされていたということで、ある意味被害者であったとも言える(あくまでも私服を肥やしていなければの話だが)。
トレーダーという同業者としては「そんな巨額損失を一人で抱えてしまっている状態」っていうのはどんな心情なのか、やっぱり四六時中そのことばっかり考えて他のことは手につかないのか、重圧に押しつぶされることはないのか、そういったメンタルな面がどうなっているのか知りたかったりもする。
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コメント
同感です。今までは安定がとりえのSGどうなるのでしょうか。こちらも気になりますね。
投稿: 星の王子様 | 2008/01/27 17:45