製造業はすごい
「すごい製造業」(中沢孝夫著、朝日新書)を読む。
章立ては
序章 もっと誇ってもいいのだ
第1章 Aクラス社員の育て方
第2章 日本はなぜ強いのか
第3章 「よい会社」には共通点がある
第4章 「オンリー・ワン・ブランド」獲得への道
終章 「カタカナ語経営」の危うさ
著者は兵庫県立大学環境人間学部の教授。主に中小企業に焦点をあて、日本にどんなに競争力のある会社があるか、そしてその背景、強い会社の持つ共通点、教育や技術の伝承の問題などを丹念な調査から浮き彫りにしている。非常に分かり易く示唆に富んでいる。
日本のメーカーは強い、という主張だけど、かといって手放しで礼賛しているわけではなく、ブランド力とか、大企業病とか、ダメなところはダメときちんと分析していて好感が持てる。
トヨタが強いのは誰もが知っている。でもトヨタと同じように「カイゼン」しながら日々競争している日本の製造業はいくらもあるんだね。
で、翻って非製造業、特に我々のいる金融業界。優秀な人材はいるはずなんだけど、ものを作るというのとは違って目的が明確ではないからか、いまひとつ「すごい」という感じが(内部にいると)しないんだけど、それは自分の所属するところだけ? 一応日本の大手も外資系も経験したんだけどなあ。
今はどうか分からないけど、かって僕が就職活動をしたとき、文系のみというその大学が特殊だったのかもしれないが、製造業はあまり人気がなくて、銀行や商社、保険などの業種が人気ランキングの上位を占めていた。メーカーは額に汗して何か作るっていうのがダサイ感じがしたのと、生涯賃金の差(金融は初任給は安いけど30代からはいいんだぜ、といったうわさ)がその背景にあったように思う。
その判断基準の中に、企業理念の善し悪しとか、技術を通じて自己を磨く、とか、何かを作り上げる達成感や充実感 といったものがあまりに少なかったんじゃないかと。これは自分の場合だけれども、周りを見てもどうもそういう風潮があった。
僕の所属したサークルでもゼミでも一番多数を占めた就職先は銀行だった。20数年経った今、最初に入社した銀行に今でも籍を置いているものは数えるほどしかいない。離職したのにはそれぞれの理由があり、また必ずしも終身雇用がよい物差しとはいえないが、就職先選択で判断が甘かったんじゃないのという一つの証左になるんではなかろうか。
話が本からそれてしまったけど、とにかく近頃メーカーを見直すことが多い。
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