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2008/04/29

古楽コンクールにて

甲府の古楽コンクールでは古楽器や楽譜、CDなどの展示会場もあって、わざわざ甲府まで行ったのにはそこでナチュラルトランペットを展示しているミュンクヴィッツさんに会うのも目的だった。彼とは2年前のこの会場で初めて知り合って、以来楽器を紹介してもらったり、去年のドイツ旅行のときにお世話になったりしてとても懇意にさせてもらっている仲だ。
コンクールを聴くよりも展示会場の方がもっぱらメインの目的だった感もあるくらい。

彼は今年もいっぱい楽器を持ってきていて、今までのリーデルモデル(1752 ショートタイプとロングタイプ)とハインライン(1632)に加えて、昨年復元したビルクホルツ(1650)と最近開発中のクラシックタイプも展示してあった。

クラシックタイプは1810年頃のSauer(?)がモデルだということで、3つ穴ショートタイプと4つ穴ロングタイプとあり、ロングタイプはもちろん穴なしにすることも可能。見た目はバロックのモデルとほとんど変わらず、ベルシェイプの広がり方は穏やかでやはりクラシックそのものだがベルそのものはバロックより一回り大きめという感じでそれほど大きくはない。
試奏した感想だが、かなりいい吹奏感で伸びやかに音が広がる。ショートよりはロングの方がいい音がする(ミュンクヴィッツ氏自身はショートの音の方が好みらしいが)。多分管の直径も若干太めな気がした。モダン楽器から持ち替える場合もバロックほど吹奏感にギャップがなくて、古典派のレパートリーのオケで使うには最適という感じだ。最近もある有名なトランペット奏者の肝いりでハンブルグの音大にまとめて納入したとかいう話だった。

僕が思うに、これからはむしろバロック時代の楽器よりこうしたクラシックタイプの楽器の方に需要が出てくるんじゃなかろうか。ヨーロッパだと今やバッハ、ヘンデルにナチュラルを使うのは当たり前のようになってきているが、今はドイツカンマー・ブレーメンやチューリッヒ・トーンハレのように現代楽器のオケでもモーツアルトやベートーヴェンなどの古典派を演るときはナチュラルトランペットを使用する例がだんだん増えてきている。それはおそらくピリオド演奏にこだわろうということではなくてナチュラルだとその曲が求めている望ましい音を出すことが容易だからなんだと思う。

日本でも山形交響楽団のようにナチュラルを使い始めているところが出てきているし、今後もじわりじわりとそうした流れが増えてくるんではなかろうか(若干希望的観測もあるにはあるが)。そうしたときに従来のバロック時代の楽器ではなくて、今回のようなクラシックタイプの楽器を使うとよりスムーズにオケ&奏者にフィットするのは間違いない。今までは楽器そのものの供給がなかったけど、エッガーにしろ、ミュンクヴィッツにしろ近年はヨーロッパの工房が徐々にそうした道をプレーヤーと一緒に開拓しているように思われる。

そういう意を強くした今回の展示会だったが、惜しむらくは金管楽器関係者があまりにも少なくてせっかくの展示がもったいない気も同時にした。多分古楽に的を絞るより金管楽器関係の催し物(トランペットフォーラムとか夏の金管関係のセミナーとか)に出展したほうが興味を持ってくれる人の目により多く触れるのではなかろうか。今度機会があったらそう伝えておこう。

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トランペットの話題」カテゴリの記事

コメント

はじめまして、大阪の宮谷と申します。
アマチュアのオーケストラでTrp.(モダン)を吹いております。
一応アンサンブルにも籍を入れさせてもらっています。
(大阪んブラスといいます。ご存じでしょうか?)

半年ほど前に中村さんのHPを拝見し、以降ずっと読ませていただき
勉強させていただいております。

20年ほど前から古楽器には興味があったのですが、経済面など
いろんな理由で手を出せずにいました。

が、今になってやはり吹きたくなり、こちらのHPにも
辿り着きました。

数年前にオケでモツレクをする機会に恵まれ、その準備で
ピリオド楽器の音源を複数聴いたのが最終的な動機です。
(一番気に入ったのはコープマンでした)

次年度にオケでベートーヴェンの7番をする事になり、
意を決してバロックTrp.での演奏に挑戦する事にしました。

とりあえず調達を、とこちらで知ったEggerにもメールで照会
している最中なのですが、ちょうどその折に今回の日記を
拝見しました。

Eggerなど従来のバロックTrp.では、他がモダン編成での
オケで必要な音量は想定されてないのでは、という思いが
躊躇の原因でもありました。
ところが、日記に書かれたような「19世紀仕様(?)」の楽器が
あれば、より目的に近いと思います。

ご紹介のミュンクヴィッツ氏の楽器も魅力ですが、私としては
やはりEggerに同コンセプトの楽器をリリースする予定があれば
そちらを、と考えてしまいます。

長くなりましたが、中村さまの方でEggerのそうした(バロック
よりも後期の)新しい楽器のお話をご存じであれば、そちらに
ついてもお問い合わせをしたいのですが教えていただけません
でしょうか?

また、先述しました私の購入検討につきまして、もしアドバイス
などいただければ幸いです。

はじめてながら長いコメントで、しかも厚かましいお願いをして
申し訳ありません。

末尾ながら、益々のご活躍をお祈り申し上げます。

投稿: 宮谷 | 2008/05/04 20:30

宮谷さん コメントありがとうございます。
とりあえずメールでお返事しますね。

投稿: 中村 | 2008/05/04 21:34

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