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2008年8月

2008/08/26

バロック音楽の演奏スタイル

エドワード・タールの上記のタイトルの文章を見つけたのでかいつまんで紹介したいと思います。

 

バロック音楽の演奏スタイル

 

現代のオーケストラの演奏に比べるとバロック音楽のスタイルは、ートランペットに限らずーいくつかの顕著な違いがあります。

 

(1)音程(音律)
1550年頃から1815年頃までに主流だったいろいろな音律は1つの共通点がありました、すなわち3度を純正にとる(振動数でいうと5対4の比率)ことを優先するというものです。これはナチュラルトランペットには都合のいいことでした。というのも自然倍音では必然的に5対4の比率になるからです。従って平均律に調律された現代の鍵盤楽器は理論的には調子はずれということになります。

 

(2)強拍と弱拍
強拍と弱拍の違いは、現代の均等で器楽的なスタイルに比べると遥かに大きかったという違いがあります。さらにカッチーニの「新しい音楽(1600)」やファンティーニの教本(1638)の双方に記述されているバロック時代初期に始まった声楽の装飾法、「メッサ・ディ・ヴォーチェ」ーー長い音のときはクレッシェンドとディミヌエンドを伴う、という独特のものもあります。これはバロック時代を通じて使われており、レオポルト・モーツアルトのヴァイオリン教本(1756)にも、個々の音のボウイングについて「初めはゆっくり、中程を早く、音の終わりにかけて消え入るように弾く」とあります。

 

(3)発音(アーティキュレーション)
アーティキュレーションについては1535年から1795年までに著されたさまざまな資料に記述があります。トランペットでは有名なファンティーニの教本の10ページと11ページばかりでなく、リコーダーやコルネット、フルートの教本などで詳細に取り扱われています。これらに共通する一般的なルールは音程が2度のときには不均等なアーティキュレーション(tやdなどの強いシラブルとrやlなどの弱いシラブルを交互に発音することによって得られる)を使用し、同じ高さの音が続く場合あるいはアルペジオの時には同じシラブルを使用するというものです。

 

(4)即興
初期の木管の教本ではいかにして即興をするかということにかなりの部分が充てられています。ただしベンディネッリやファンティーニ、アルテンブルグなどのトランペットの教本では少なめの取り扱いにはなっています。(スケールにおける自由度が少ないためと思われます)

 

(5)ピラミッド
バロックトランペットは現代のピッコロトランペットに比べて優しい音色です。それは管の長さ(224cm対65cm)と大きめのマウスピース(ボアの径が4-6mm対3.6-3.8mm)によりもたらされるものです。バロックトランペットのアンサンブルを演奏するのはオルガンに例えるといいかもしれません。オルガンの音はあたかもピラミッドのように低音がずっしりと重く大きく、高音部分は軽やかです。これに対してジャズのビッグバンドではリードトランペットがどのパートも圧して上に君臨して聴こえなければなりません。バロック時代のトランペットの名手たちはファンティーニからショア、ライヒェにいたるまで、そのパワーではなくてその華麗さに対して賞賛を受けていたのです。

 

(6)結論
ルネサンスとバロックの時期の器楽の基本はとにかく人の声を真似ることでした。先に述べた5つのポイントはとりもなおさずトランペットの演奏を声楽的な基本的スタイルにするためのものです。近年、バロックオーケストラがいわゆるピリオド楽器を使っているのは、後年のレパートリーを演奏するための近代的大オーケストラに対する反動でもあったのでした。しかしながら、バロックトランペットを持っているからといってバロックのスタイルの演奏ができるというものではないのです。

 

エドワード・タール

 

(この稿終わり)

 

 

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2008/08/17

ナチュラルトランペットの教則本

楽器を手に入れたならさっそく練習です。
ここでは教則本の紹介をしましょう。

 

ナチュラルトランペットの教則本については迷うことなくエドワード・タールの著作による次の全3巻をお勧めします。

 

  Edward H. Tarr / The Art of Baroque Trumpet Playing (Schott)
   vol.1 Basic Exercies
   vol.2 Method of Ensemble Playing
   vol.3 A Beautiful Bouquet of the Finest Fanfares

 

タール教授が長年バーゼルで後進の指導にあたっていた成果が結実した実践的な教則本になっています。取り扱っている内容、取り入れられている練習曲、解説、写真、いずれもナチュラルトランペットに焦点を合わせた厳選された内容ですので、実際の練習に使うばかりでなく見るだけでも楽しめます。また2巻3巻は重奏曲集としても充実していて、この2冊だけで充分にアンサンブルが楽しめます。

 

ただしこの教本は孔を使った練習についてはカバーしていません。そこを補足するには別の教則本を使う必要があります。あるいはバッハやヘンデルの実際の曲で指使いについて実践的に慣れていくという方法もあるでしょう。バロックトランペット向けには以下のような教則本が出版されています。

 

 Paul Plunkett / Technical and Musical Studies for the Baroque Trumpet (Spaeth/Schmid 1994)

 

 Michael Laird / Brass WorkBook for Natural Trumpet (BrassWorks 1999)

 

 Claude Rippas / Kleine Anleitung zum Spiel der Barock-Naturtrompete (Toppbrass)

 

 Robert Farley / Natural Trumpet Studies (Brass Wind Publications 2003)

 Ralf Probst / Übungen für Barocktrompete (Spaeth/Schmid 2003)

 

 Steffen Wardermann / Naturtrompetenschule (Imperium Musikverlag 2010)

 

 Patrick Henrichs / Die BarockTrompetenSchule (Flugelpferd 2013)

 

最後にオリジナルの古典的な教則本について挙げておきましょう。

 

 Cesare Bendinelli / Tutta o'arte della Trombetta 1614 (Manuscript Facsimile reprint, The Brass Press)

 

 Girolamo Fantini / Mode per Imparare a Sonare di Tromba 1638 (ed. Conforzi / Ut Orpheus)

 

 C.Eugéne Roy / Méthode de Trompette sans clef et avec clefs 1824 (Editions Bim)

 

 François Dauverné / Méthode pour la Trompette 1857 (IMD)

 

ベンディネッリは主にプリンシパルの演奏パターンについてこれでもかというくらい豊富な譜例がついています。ファンティーニも同時代ですが高度なクラリーノ音域のシラブルについて非常に勉強になります。ロイの教則本は前半がナチュラルトランペット用、後半がキイトランペット用の練習曲となっています。なお、ここに挙げた以外にも古典とされる当時の教則本はあるのですが、それらは最初に挙げたタールの教則本の第1巻にそのエッセンスが収録されています。そういう意味でもとりあえずタールの教本で必要充分じゃないかと思います。

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2008/08/16

どの楽器にするか?

いざナチュラルトランペットを始めたいという人にとって、最初の難関はどうやって楽器を手に入れるか、どの楽器がいいのかという問題です。なにしろ楽器屋さんに在庫がありませんから行って試奏して気に入った楽器を選ぶということができません。一番のお勧めはナチュラルを持っている人の楽器を吹かせてもらって検討するということでしょうか。でも1本だけでは比較になりませんので、ナチュラルトランペットの練習会などの催しに参加していろいろ吹き比べできるのがベストです。

 

モダンの楽器から移行して試みにオーケストラでナチュラルを使ってみたい場合などは、その機能性などから3つ孔のショートタイプのモデル(エッガーやナウマン、マインルなど)が向いているのではないかと思います。ただ、ショートタイプはオリジナルの形状ではありませんので、いわゆる見た目のかっこよさを求めるのであればロングタイプ(エッガーなど)、しかも少々値段は張りますが装飾もたくさんつけてもらった方がいいかもしれません(ウェッブとか)。とりあえず手に入れていろんな曲をさらってみたいという場合は実用向きのロングタイプ(キーヴィやパーカー)でしょうか。いずれにしろ実際に使うこと想定しているのであれば孔付きの楽器をお勧めします。

 

指使いという面からみると、ショートタイプの方が苦労は少ないかもしれません。出せる音の数からすると4つ孔タイプに軍配があがります。それから慣れの問題ではありますが、ロングタイプは右手を伸ばして若干不自然な体勢で指孔を押さえることになるので人によっては辛い場合があるかもしれません。実際に手に取って試してみたほうが無難です。
いろんなナチュラルトランペット奏者の使用楽器をみると、欧州で普及しているのはやはりショートタイプのようです。ドイツでは圧倒的に3ホールショートタイプ。ロングタイプはその開発の経緯からか、イギリス全土と一部のヨーロッパ(イタリアなど)それにアメリカで使われています。ドイツでも南のトロッシンゲン音大の出身者はマイケル・レアードが教鞭をとっていた関係でパーカーやキーヴィなどの4ホールロングタイプを使っていますね。

 

最初の楽器としていきなり正統派(ニコルソン、ハイデなど)から入るのは、吹奏感においてモダンとのギャップが大きいこと、ベンディングの壁が高いことなどからあまりお奨めしません。でもナチュラル本来の音色や奏法を楽しみたいということであれば、こうしたオーセンティックな楽器でトライしたいものです。

 

 

注文と支払い

 

メーカーとモデルのタイプを決めたらメールで直接メーカーに注文するのがベストです。のちのちのメインテナンスやオプション製品の購入など(これも結局メーカーに発注することになるので)のことも考慮すると、始めから直接制作者とコンタクトを取っておいた方がいいでしょう。納期や値段についても正確なところが分かります。

 

注文後の支払いには私は銀行(シティバンク)からの電信送金を使っています。メーカーに振込先を問い合わせれば、銀行口座の明細などを教えてくれますので、それに従って間違いのないよう送金します。納期の長いところは注文時に予約金として20%程度の前払金を求めてくるところもあります。それから為替レートの変動によって円での支払い代金が変わりますから、なるべく円高時に支払った方がお得なことは言うまでもありません。

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勝手コメント(トランペットのメーカー)その2

さて、次はオリジナル楽器の復元にこだわった正統派メーカーたちです。

Barclay
バークレイ氏はカナダのオタワで長年博物館の楽器保管や修理・修復に携わってきました。17,18世紀の工具、工法で手作りで製作する正統派です。モデルはHeinlein (1632) と Ehe (1746)。残念ながらもう引退してしまって新しい楽器は作っていないとのこと。もしセコハンの楽器が出回っていたらめっけものです。
引退後の今はナチュラルトランペットを1週間で手作りするというワークショップをセラフィノフ氏やミュンクヴィッツ氏と共にアメリカやヨーロッパで毎年行っています。参加した友人によると実際にそこそこの楽器ができて音も出せたから感激したという話でした。The Art of the Trumpet-maker (Oxford University Press ISBN 0-19-816605-2) という本も出しています。

van der Heide
ここもバークレイと同じく手作りにこだわった正統派。バロックのモデルは Ehe (1725) で、基本的に補正孔はありません。ただリクエストすれば1つ孔の替え管を付けてくれます。納期は10ヶ月ほどかかります。注文に応じて当時の装飾をほどこした、それは美しい楽器も作ってくれます。オリジナルに基づいたマウスピースは楽器とマッチしてなるほどナチュラルはこういう音質かという音色が得られます。

Graham Nicholson
オランダのニコルソンも正統派のメーカー。補正孔はありません。ニコルソン氏自身もプレーヤーで、クイケン指揮のラ・プティット・バンドなどのCDで彼のナチュラルの演奏を聴くことができます。吹奏感はとても良く、芯のしっかりした音色です。バロックのモデルに加えてクラシカルのコピーも作っています(リベラ・クラシカで使用)。

Markus Raquet
マルクス・ラケットはバークレイ氏と同じく楽器の修復が専門の人です。ベルリンの大学で修復と保存を学んだ後、1995年よりニュルンベルグの国立ドイツ博物館で働いています。彼は現在ナチュラルトランペットはHaasとEhe III のコピー楽器を作っています。制作方法は上に述べた他の人たちと同じく昔の工法に則ったこだわりのあるもの。バーゼル・スコラ・カントルムの教授マデウフ氏がこの楽器を使っています。

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2008/08/15

勝手コメント(トランペットのメーカー)

それでは各社メーカーへの私の独善的勝手コメントです。
まずは補正孔付きのバロックトランペットを主に作っているメーカーから。

 

Egger スイスのバーゼルにあるエッガーの工房ではルネサンスからバロック、スライドトランペットまでさまざまなモデルを作っています。バロックタイプのモデルは Ehe III (1746)、 ショートタイプ(補正孔3つ)ロングタイプ(補正孔4つ)の2つがあります。希望によりベルを Haas のモデルに変えることも可能です。ヒストリカルモデルは伝統的工法で手作りで作ったもの、スタンダードモデルは一部近代的工法も利用して作ったものです。ヒストリカルの方が製作に手間がかかる分値段設定が少し高くなっています。
ここの工房はフリーデマン・インマーやエドワード・タールなどナチュラルトランペットの普及に努めた人たちと長年共同で開発をしてきているので、製品の品質も良く信頼がおけます。またいろいろな調への替え管(クルーク)のオプションも豊富です。孔なしのナチュラルトランペットももちろん製作しています。マウスピースもいろいろなモデルがありますので重宝します。ナチュラルトランペットにおける Vincent Bach (モダン楽器のスタンダード)っていう位置づけでしょうかね、ここの製品は。私がメインで使っている楽器もエッガーです。安心してお奨めできます。
日本でも取り扱っているところがありますし、アメリカのバロックトランペットショップ経由でも購入できます。ただ本当に選択肢が多いので、直接エッガーにメールしてマイスター(Rainer Egger)や彼の奥さん(Rose Egger)と相談しながらモデルやパーツを決めて購入するのが一番納得感があるかもしれません。

 

Keavy
ステファン・キーヴィはイギリスのナチュラルトランペット奏者です。トン・コープマン指揮するアムステルダム・バロックオーケストラのバッハのカンタータ全集でトランペットを吹いていますね。補正孔4つのロングタイプを作っています。彼自身が奏者だからということもありますが、実務的なイギリス人らしくオケでも使える安定感のある実用的な楽器を提供してくれています。モデルはいくつかのオリジナルを参考にしていますがモダン仕様に近い感じがします。機械を使って製作しているので値段も高くなく、注文してから届くまでの納期も長くないです。クルークも一通りの調が廉価で揃う(AからFまで)ので古典派までカバーしようという際には便利だと思います。マウスピースを挿入するリードパイプの標準仕様がモダンのマウスピース用になっていますが、バロックのマウスピース用のアジャスターも売っています。コストパフォーマンスを考えるととりあえず初めの1本という場合に向いているのではないかと思います。
ホームページはないので注文はメールでということになります。

 

Monke ドイツではモンケの3つ孔バロックは入門用としてかなり普及しているようです。ちょっと楽器の傾向がモダンに近い感じがします。

 

Munkwitz 北ドイツの港町、ロストックのミュンクヴィッツの制作する楽器はバロックではやはり3つ孔のショートタイプです。ここは他のメーカーと違いドレスデンのリーデルというオリジナルをモデルにしています。オリジナル工法に則った良心的な作りの楽器ですが、近年はずいぶんと値上がりしてしまいました。日本で総代理店になっているところが神奈川県の茅ヶ崎にありますので、試奏して購入することができます。

 

Naumann アメリカのメーカー、ナウマンは当初補正孔3つのショートタイプを作っていましたが、近年は4つ孔のロングタイプも製作しています。キーヴィと同じくレスポンスなどがモダン楽器から移行して初めて吹くのには適していると思います。私が最初に手に入れたナチュラルはここの製品でした。最近はカナダに移住したバロックトランペットの名手ニコラス・エクルンドやオーストラリアのジョン・フォスターがアドヴァイザーになっているようです。バロックトランペットショップ経由で購入することができます。

 

Parker イギリスのパーカーはバロックタイプでは Ehe III (1746) をモデルとした補正孔4つのロングタイプを作っています。つまりエッガーと同じモデルで、私の吹いたところ吹奏感はキーヴィに似ている印象です。値段も高くなく、納期は数ヶ月と短めです。難点はこの楽器はずっしりと重たく、長く持つには辛いかもしれないっていうところでしょうか。

 

Webb イギリスのオリジナル楽器(Harris, Shaw)に基づいたロングタイプ(補正孔4つ)を製作しています。ベルのところに銀で美しい装飾が施されています。値段は少々高め。納期は1ヶ月だからすぐ手に入ります。ここの楽器はある音大の備品として納品されているのを吹いたことがありますが、それは楽器が古かったせいか、いまひとつという感じでした。ちゃんとした楽器を吹いてみて評価を下したいので、品質についてはノーコメントとしておきましょう。日本で輸入を手がけていた店があったのですが、今は店じまいをしてしまいましたので購入するには直接メーカーにコンタクトする必要があります。

 

次回はオーセンティックな楽器製作のメーカーの紹介です。

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2008/08/14

ナチュラルトランペットのメーカー

さて、まずはどのメーカーがナチュラルトランペットを作っているかを調べてみましょう。これもコルネットと同じくヒストリック・ブラス・ソサイエティのニュースレターが一番総合的に網羅しているものと思われます。一番直近の調査は14号(2001年)にジェフリー・ナスバウムがレポートしているものですが、そこには以下のメーカーの楽器についてコメントが載っています。(ABC順)

 

  名前 (都市、国名)
  Romeo Adaci (Steinfeld, Germany)
  Robert Barclay (Gloucester, Canada)
  Bohm & Meinl (Gerestried, Germany)
  Piero Callegari (Bologna, Italy)
  David Edwards (Surrey, UK)
  Rainer Eggar (Basel, Switzerland)
  Endsley Brass Instruments (Denver, USA)
  Helmut Finke (Vlotho-Exter, Germany)
  Geert Jan van der Heide (Putten, Netherland)
  Kalison (Milano, Italy)
  Stephen Keavy (Chinnor, UK)
  Hans Kromat (Wilstedt, Germany)
  Ewald Meinl (Geretsried, Germany)
  Josef Monke (Cologne, Germany)
  Michael Münkwitz (Rostock, Germany)
  Andrew Naumann (Wisconsin, USA)
  Marco Nesi (Firenze, Italy)
  Graham Nicholson (Den Haag, Netherlands)
  Janos Orendi (Budapest, Hungary)
  Matthew Parker (Berkhamsted, UK)
  Markus Raquet (Bamberg, Germany)
  Paul Rawson (Queensland, Australia)
  Toni Romera (Manresa, Spain)
  Fabio Somaini (Como, Italy)
  Richard Seraphinoff (Bloomington, USA)
  Friedbert Syhre (Leipzig, Germany)
  Max and Heinrich Thein (Bremen, Germany)
  Frank Tomes (London, UK)
  Juergen Voigt (Markneukirchen, Germany)
  John Webb (Wiltshire, UK)

 

個々のメーカーについてのコメントは次稿で。

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2008/08/13

マウスピースについて

前から続く)奏者の立場からみて現代のトランペットとナチュラルトランペットが大きく違う点にマウスピースの問題があります。現代のマウスピースに比べ、当時のものは、リムの内径が大きく、リムの肉厚が広くかつフラットです。またカップからスロートに行く時のエッジが急で鋭い、といった特徴があります。カップの深さはモデルによってさまざまですが、それほど浅いものは使われないようです。初めてバロックのマウスピースを唇に当てて受ける印象はモダンに比べてすごく大きい感じがするのではないでしょうか。それは主にはリムが広くて唇に接触する面が広いことからくるのだと思われます。

ナチュラルトランペットを指導する人の中(主にイギリス系)には、マウスピースの切り替えに抵抗のある人にはアジャスターをつけてモダンのマウスピースで吹くことを勧める人もいます。私はこの点については補正孔のときとは逆の立場で、なるべく当時のオリジナルのマウスピースを使うべきだという考えです。原因は一つにはその音色の差です。モダンのマウスピースでバロックのそれと同じいい響きを得ることが難しい。これはバックボアーの長さなどサイズの違いからくるところもあるでしょうし、エッジの形状からくるものかもしれません。もう一つは、バロックで必要とされるクラリーノ奏法にモダンのマウスピースは適していないのではないかと思われるからです。モダンのマウスピースだと細く鋭く息が通り過ぎて、ややもすると力任せに吹くことになりがちです。クラリーノ奏法のときはあたかも木管楽器を演奏しているくらいの感覚が必要なのです。

ただしマウスピースを換えることは非常にセンシティブな問題なのでなるべくならば普段使用しているマウスピースでまかないたいという気持ちが誰しもあるのはわかります。モダンとバロックの形状の違うマウスピースを両立させることは(特にプロの人にとっては)難しいことですし、頻繁に双方を行き来するとアンプシュアを壊してしまう原因にもなりかねません。従ってこれはあくまでも「事情が許せばその方が望ましい」といった程度にとどめておきましょう。

エッガー等の市販されているナチュラルトランペット用のマウスピースはさまざまなモデルがあって、低音奏者(プリンシパル)用、中音域用、高音域(クラリーノ)用と主に演奏する音域によってモデルを分けてあります。モデルの違いによる差は極めて大きいので、注意が必要です。
エッガーのホームページに詳しい解説がありますので個々のマウスピースについてはそちらを参照していただきたいのですが、もし1本でいろいろな音域をカバーしたいというのであれば7番(S7もしくはSI7)を選択することをお勧めします。主にオケで2ndパートを担当するという場合は6番を、どうしても高音主体というのであれば8番を選んではいかがでしょうか。モダンからの移行の抵抗感を少なくしたいのであればRのついたモデル(S7Rなど)はリムがフラットではなく丸く肩を落としてありますのでそれを選ぶという手もあります。私自身はレパートリーによってバロックのときはSI7を、クラシカルのときはB1を使っています。

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2008/08/12

補正孔の是非について

前から続く)従って、ナチュラルトランペットに音程補正のための孔を開けたバロックトランペットは、純粋な意味でのピリオド楽器(その時代に使われた楽器のコピー)とは言えませんし、現に真に正統な演奏を追求するには孔なしの楽器でなければならないと主張する人たちもいます。その論拠として、楽器に穴をあけることによってナチュラル特有の音色の良さが失われるという他に、「調子はずれのトランペットの音列は、そういうものとして当時の人たちに認知されていた」という説がありますが、私はこれは少し違うのではないかと思っています。古代から音楽を数学・天文学の一分野とし、ピタゴラス音律、純正律、ミーントーン、さらにさまざまな音律をよりよい和声とより少ない妥協を求めて開発してきている音楽の歴史の中にあって、ひとり金管族の自然倍音だけが大きく乖離したまま許されたということはないと思います。強いて言えばやむを得ずはずれものとして存在を許されていた、というところではないでしょうか。そうした居心地の悪さを少しでも少なくしようとして、当時のトランペット奏者たちはベンディングなる高等技術をもって解決しようとしたし、実際ギルド的な秘伝の訓練の成果で少数ながらも本当に上手に音程を操れる人たちがいたおかげで、当時の作曲者たちはその本来は調子はずれな音も使用して作曲できたのだと考えます。そうでなければ、ヘンデルが第11倍音のファの音を所に応じてシャープにしたりナチュラルに指定したりはしないでしょうし、バッハが倍音列にないド#やミb、その他さまざまな音をトランペットに要求するはずがありません。

さて、そこで問題は現代のわれわれが同じ努力をする必要があるかどうかということになりますが、私はこれには否定的な考えです。実際補正孔の助けを借りて吹いてみると実に楽に音程の調整ができますし、さらに使える音も増えます(先ほどのド#ミbなど)。また、高次倍音(上のミやソなどの音)においては、音を当てる時の安全性が増します。そうしたメリットに比べて失うものは、確かに響きが薄くなるなどの欠点はありますが、許容範囲ではないかと私は思います。人によっては正統性という看板を下ろすことにかなりの抵抗があるのかもしれませんが、そこにどれだけのこだわりを持つか、現実的に考えられるかどうかの違いでしょう。例えは少々乱暴かもしれませんが、バロックヴァイオリンを弾く時に楽器を安定させたいから顎当て使いたいという人に対して、それはもうバロックじゃないよ、と非難するといった類いの偏狭な考え方に近いのではないでしょうか。

補正孔を使ってでもバロックトランペットを使い、その響きを活かした方がいいと思いますし、そうした考えが広まってバロックトランペットが古典派などを取り上げるオーケストラなどにもっと普及してその違いを実感してもらうほうがいいのではないかと考えています。(次に続く

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ナチュラルトランペット復興の歴史

前から続く)16世紀から18世紀にかけて活躍したナチュラルトランペットですが、バルブの発明以降、徐々に廃れてしまって使われなくなりました。現存するオリジナル楽器は、2度の世界大戦でかなり失われてしまったものの、今でも欧米の博物館などに行くと見ることができます。

オリジナル楽器の複製の動きは第2次世界大戦後に始まりました。1959年にドイツのメーカー Helmut Finke が有名なライヒャ(JSバッハの専属トランペット奏者だった人)の肖像画に描かれているコイル型のトランペットを復元したのがその嚆矢です。その楽器には Otto Steinkopf のアイデアにより3つの孔が開けてあって、音程を補正する形式でした。これを使ってケルンのトランペット奏者 Walter Holy が初めてピリオド楽器によるブランデンブルグの演奏に成功したとされています。

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次に複製を試みたのはやはりドイツのメーカー Meinl で、1967年に ニュルンベルグのオリジナル楽器であるHaas をモデルにした1つ孔のトランペットを作りました。このメーカーはのちに1つのループからなるクルークを取り付けたショートタイプを開発し、それにより Steinkopf 発案の3つ孔を搭載したモデルを完成させました。同時期にEdward Tarr の協力で Egger が同タイプのモデルの開発を進め Hainlein や Ehe 、Wolf などのコピー楽器を製作した結果、このショートタイプのモデルはドイツを中心にヨーロッパで広く使われることになりました。

B64bfc1ba8a843028e8c83e46231dcd6(写真:Edward Meinlのホームページより)

このように3つ孔のショートモデルが最初に普及したのですが、イギリスでは別のシステムであるロングタイプ4つ孔のモデルの開発が Michael Laird のアイデアにより進められました。このモデルによる楽器は主にイギリスのメーカーによって製作されましたが、のちにEgger など大陸のメーカーも作るようになってきました。(次に続く

01dce56b2f8e4920812e79735e87807d(写真:Egger instrumentのホームページより)

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ナチュラルトランペットとは

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ナチュラルトランペットに関連する記事の目次はこちらです。

ナチュラルトランペットとは

16世紀から19世紀にかけて(音楽史的にはバロック時代から古典派にかけて)ヨーロッパで使われていたトランペットは、基本的な発声の原理は同じながら、形状は現代のものとは大きく異なっていました。すなわち、マウスピースで唇の振動を音に変え、それをある一定の長さを持つ管で一定の音程にし、朝顔部分で音量を拡大するという基本原理は同じです。しかしながら、管の長さや音の高低を変える機能は異なっており、別の楽器ととらえた方がいいかもしれません。バロック時代の楽器ではオーボエやヴァイオリンなど他の楽器も現代のものとでは違いがありますが、トランペットの場合はその隔たりがとりわけ大きいように思います。また、その違いは同じ金管楽器と比べてみてもホルンやトロンボーンにおけるその格差よりも数段大きいと言えます。

現代では当時のトランペットを(その機能に着目して)ナチュラルトランペットと呼んでいます。「ナチュラル」、すなわち自然倍音のみを出すトランペットという意味で、構造としては金属のマウスピース、真鍮の円筒管プラス朝顔部分から成る極めて単純な楽器です。現代のトランペットのようなピストン(バルブを押すことによって管の長さを延長させる機能)はついていません。管の長さが長くなればなるほど、より多くの自然倍音を吹奏することが可能になるので、なるべく多くの音を出すためには必然的にある一定以上の長さが必要となります。

バロック時代のトランペットでよく使われる調性はCとDですが、A=440Hzの場合のC管のトランペットの長さは8フィートありました。現代のC管の楽器の長さは4フィートですから、ちょうど2倍の長さです(倍の長さは振動数からすると1オクターブに相当します)。この8フィートの楽器を使うと、下の自然倍音の図にあるように、音としては下から、ド(ペダルトーン)、ド、ソ、ド、ミ、ソ、シb、ド、レ、ミ、ファ#、ソ、ラ、シb、シ、ド(以上第16倍音まで)の音が使用可能になります。これに対し現代の楽器ではピストンの助けにより第8倍音まで使えば同じ音域の音が出せることになっています。
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ナチュラルトランペットの大きな特徴としては、この高い倍音列を使うことによるメリットとデメリットがあります。メリットは音色です。音の中に複数の倍音が混じることにより豊かな音色が得られます。これはバロックのレパートリーをピッコロトランペットで演奏したものと比較すれば一目瞭然です。ピッコロトランペットはナチュラルの4分の1の長さしかありません。また使うのも第5倍音くらいまでです。ピッコロトランペットの音色はきらびやかである反面、鋭すぎるという面もあります。一方、デメリットは高次の近接する倍音を使うため、しかもそれを唇の振動のみでコントロールしなければならないため、音を外しやすいということ。さらに、いくつかの音(11倍音のファ#および13倍音のラ)は現代の平均律と比較すると、音律から離れた調子はずれの音程であることなどです。

当時のトランペット奏者はこうした調子はずれの音および倍音以外の音(バッハの曲には頻繁に出てきます)を出すために、ベンディング(唇をゆるめることによって音程を微妙に下げる)という技術によって補っていました。これは簡単に出来るものではなく、かなりの訓練を必要とするものです。実際当時のギルド的なトランペット奏者の世界では一人前のラッパ吹きになるために師匠の元で最低2年間の泊まり込み修行が必須だったとされています。そこで朝から晩まで高度なテクニックを習得するために厳しい訓練を重ねていたのです。

その後、ナチュラルトランペットが活躍した時代が終わってしまった後になって、この昔の時代の楽器を復興するという動きが盛んになった時に、ナチュラルトランペットに関しては、この音程の乖離の問題と演奏の困難さをなんとか解決しなくてはという問題が生じました。その過程で、1960年代になって、楽器の管の途中に小さな孔をあけることにより、音を外しにくくなったり、調子はずれの音の音程を調節できるということが発見されました。この補正孔の数はシステムの違いによって1つ、3つ、あるいは4つと異なりますが、こうした補正孔を施した楽器を、本来のナチュラルトランペットと区別する意味で「バロック・トランペット」と呼ぶようになりました。(次に続く

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(写真上がナチュラルトランペット、下が4孔バロックトランペット)
(このページの最初の写真はJohann Leonhard Eheが1746年に製作したナチュラルトランペット。ニュルンベルク、ゲルマン国立博物館蔵)

 

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2008/08/03

ホームページの記事再掲

今は閉鎖してしまった「なかなかや」のHPに掲載していたコルネットとトランペットに関する記事をここに再掲したいと思います。

日記的性格のBlogに載せるのはちょっとお門違いなのは承知しているのだけれど、ナチュラルトランペットに関する情報を求めてこのブログを訪問してくれる人も多いので、殊にWeb上で日本語情報の少ないコルネットに関する記事を載せておくのは意味があるんじゃないかと思ったのがその趣旨です。

では数回に分割して載せますね。

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2008/08/02

真夏のコンサート

こちらのコンサートが終了。

10周年記念ということでカンタータの147番全曲が第1部、第2部にソリスト達によるロ短調ミサ、マタイ、ヨハネ、クリスマスオラトリオの有名どころのアリア、さらに第3部としてミサ曲ト短調BWV235という満腹感一杯のプログラム。
夏のコンサートは会場の往復も暑いけど、ステージも暑くて汗だく状態。ソリスト達は合唱も歌っていたし、ステージが変わるたびに着替えもしていたから一番大変だったのではなかろうか。

僕の出番は147番とクリスマスオラトリオの8曲目。この団体で演奏するのは初めてだったけど、曲の良さと優秀なオケメンバーのおかげで楽しみながら演奏させてもらった。傷が何カ所かあるのが悔やまれるが、それでもバロックトランペットの響きの違いや遊び心は伝わったみたいで合唱団員の方々からも非常に好評だった。打ち上げにもお邪魔してほろ酔い気分で帰宅。

次のコンサートは9月19日のシュッツ合唱団のシュッツ「ダヴィデ詩編」。コルネット/トランペット持ち替え。

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