マウスピースについて
(前から続く)奏者の立場からみて現代のトランペットとナチュラルトランペットが大きく違う点にマウスピースの問題があります。現代のマウスピースに比べ、当時のものは、リムの内径が大きく、リムの肉厚が広くかつフラットです。またカップからスロートに行く時のエッジが急で鋭い、といった特徴があります。カップの深さはモデルによってさまざまですが、それほど浅いものは使われないようです。初めてバロックのマウスピースを唇に当てて受ける印象はモダンに比べてすごく大きい感じがするのではないでしょうか。それは主にはリムが広くて唇に接触する面が広いことからくるのだと思われます。
ナチュラルトランペットを指導する人の中(主にイギリス系)には、マウスピースの切り替えに抵抗のある人にはアジャスターをつけてモダンのマウスピースで吹くことを勧める人もいます。私はこの点については補正孔のときとは逆の立場で、なるべく当時のオリジナルのマウスピースを使うべきだという考えです。原因は一つにはその音色の差です。モダンのマウスピースでバロックのそれと同じいい響きを得ることが難しい。これはバックボアーの長さなどサイズの違いからくるところもあるでしょうし、エッジの形状からくるものかもしれません。もう一つは、バロックで必要とされるクラリーノ奏法にモダンのマウスピースは適していないのではないかと思われるからです。モダンのマウスピースだと細く鋭く息が通り過ぎて、ややもすると力任せに吹くことになりがちです。クラリーノ奏法のときはあたかも木管楽器を演奏しているくらいの感覚が必要なのです。
ただしマウスピースを換えることは非常にセンシティブな問題なのでなるべくならば普段使用しているマウスピースでまかないたいという気持ちが誰しもあるのはわかります。モダンとバロックの形状の違うマウスピースを両立させることは(特にプロの人にとっては)難しいことですし、頻繁に双方を行き来するとアンプシュアを壊してしまう原因にもなりかねません。従ってこれはあくまでも「事情が許せばその方が望ましい」といった程度にとどめておきましょう。
エッガー等の市販されているナチュラルトランペット用のマウスピースはさまざまなモデルがあって、低音奏者(プリンシパル)用、中音域用、高音域(クラリーノ)用と主に演奏する音域によってモデルを分けてあります。モデルの違いによる差は極めて大きいので、注意が必要です。
エッガーのホームページに詳しい解説がありますので個々のマウスピースについてはそちらを参照していただきたいのですが、もし1本でいろいろな音域をカバーしたいというのであれば7番(S7もしくはSI7)を選択することをお勧めします。主にオケで2ndパートを担当するという場合は6番を、どうしても高音主体というのであれば8番を選んではいかがでしょうか。モダンからの移行の抵抗感を少なくしたいのであればRのついたモデル(S7Rなど)はリムがフラットではなく丸く肩を落としてありますのでそれを選ぶという手もあります。私自身はレパートリーによってバロックのときはSI7を、クラシカルのときはB1を使っています。
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