「帝国オーケストラ」
今年(昨年?)はベルリンフィル創設125周年とかで、この世界的なスーパーオーケストラを内側から描いた映画が2本封切られている。戦時下のオケを扱ったものがこれ。もう一つはラトルの元での現在のオケ(アジアツアー)を扱ったもの。
まず、映像が貴重だ。戦時中はオケが宣伝大臣ゲッペルスの広告塔として利用されただけに当時の演奏や演奏旅行の映像が豊富に残っている。フルトヴェングラーやチェリビダッケの若い時の指揮姿。ナチの集会(ヒットラーの生誕記念演奏会の割にはいつも当人は不在なのはなぜ?どこかの国みたいですが)でのワーグナーやベートーヴェン。焼け野原になったベルリン市街もすごいね。
ドキュメンタリーは当時団員だった人たちや団員の家族たちの語りでつながれている。基本ドイツ語だからずっとスクリーンを追っかけて行くのはちょっと疲れる。中にアメリカに移住したメンバーの息子さんへのインタヴューになったときは英語だからほっと一息の瞬間だった。
存命の2人の団員の証言もすごい。というか、かなりの高齢(ヴァイオリニストのヴァスティアンは96歳、コンバスのハルトマンは86歳だそうだ)なのにものすごい記憶力だ。人の名前とかも次々出てくるし。どのようにオケの周辺が変化していったか、記憶が全く風化していない。ベルリンフィルと共に育ち、オケ生活一筋だったろうから記憶が強化されているのかもしれない。
面白いかと言われれば?疑問符?のつく映画だけど、今じゃなきゃ残せない記録だなということを痛感した。
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