マドゥーフ氏へのインタヴュー(その2)
(続き)
その頃には徐々にそう難しい曲でなければ自分の楽器で正確に演奏することができるようになってきた。それでも調子はずれの音を調整するのはまた別の問題だった。第11倍音のファとファのシャープを区別するのはできたけれども第13倍音はやっかいだった。その楽器ではあまりにフラットすぎたので第14倍音(シのフラット)からずり下げることを試みてみた。これはゆっくりとしたフレーズだと使えたが早いパッセージでは問題があった。それで結局やや低いものの第13倍音を使うことにした。解決方法は楽器そのものあるいはマウスピースを改良するかしかないように思えた。
昔のマウスピースを採用するにあたって、ザルツブルグ博物館にあるマウスピースの一連のコピーを使ってみることとした。バーゼルのライナー・エッガーがコピーしてくれたこれらのマウスピースを使うとより柔軟に吹きやすくなった。中でも一番大きいサイズのマウスピースが高音域に難はあったもののベストの結果が得られた。
12年前にリヨンでドン・スミザーズに会ったことも自分のやり方に確信を持つのに大いに寄与した。彼の長い経験と研究によると当時の図版や実物からは当時は現代のものよりもずっと大きいマウスピースを使っていたというのである。これは私の意見と一致した。
私は博物館にあるマウスピースのコピーをグラハム・ニコルソン、ブルーノ・ティルツ、ギートジャン・ファン・デア・ハイデやライナー・エッガーなどのメーカーに注文した。何週間かそれらで練習しながら一つ一つ淘汰していって最終的に最良の結果が得られるものを選んだ。これが自然と大きいカップでもどの音域も吹けるアンプシュアを作るのに役立ったようだった。
やがてヨーロッパのさまざまな博物館にあるオリジナル楽器を吹く機会も増えてきた(これはエドワード・タールとロバート・バークレイのおかげだ)。今から考えるとエーエの1746年のモデルが一番良かったように思われるが、これは特段驚くことではないのかもしれない。というのも現在いろんなメーカーがその楽器をモデルにしているからだ。さきほど挙げたメーカーに本当の複製の楽器を作るように依頼をした。というのもほとんどのモデルや1990年代に出回っていた楽器は補正孔がついていたからだ。
こうした試みのなか、ロバート・バークレイの本「トランペットメーカーの芸術」に示された厳格なモラルの話にはとても動機づけられたし励まされもした。バークレイとも連絡をとるようになったし、あるいは同僚のジョエル・ラエンス、ジャイルズ・ラピン、グラハム・ニコルソンなどからの音楽的なサポートは、多くの人が使い物にならないと考えていた自分のアプローチが実を結ぶまでの精神的な支えとなった。
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