ハイドンのトランペット協奏曲聴き比べ
ハイドンのトランペット協奏曲。
現在手に入るキイ・トランペットソロでのCD4種類を聴き比べてみた。
以下録音の古い順に並べると
1.
Trumpet/Friedemann Immer (Rudolf Tuts 1984 Vienna model)
Cond./Christopher Hogwood
Orch./The Academy of Ancient Music
Recording/August 1986
L'Oiseu-Lyre 417 610-2
2.
Trumpet/Mark Bennett (Robert Vanryne 1990 Nuremberg model)
Cond./Trevor Pinnock
Orch./The English Concert
Recording/October 1990
Archiv 431 678-2
3.
Trumpet/Reinhold Friedrich (Rudolf Tuts of Innsbruck)
Cond./Martin Haselbock
Orch./Wiener Akademie
Recording/October 1994
Capriccio 10 598
4.
Trumpet/Crispian Steele-Perkins ( Steele-Perkins 2000 copy Josef Riedl of Vienna)
Cond./Robert King
Orch./The King's Consort
Recording/January 2001
Hyperion CDA67266
以下感想
1のインマーのCDはなかなか入手できなくて今回ようやく届いたもの。もう今から20年以上前の録音になる。キイトランペットでのパイオニア的録音とでもいう位置づけだろうか。バロックトランペットを吹くインマーのイメージからするとかなりおとなしい演奏というのが第一印象。音色もずいぶん柔らかい。中低音域でクラッペンを空けたときの音色がいかにもキイトランペットだなと思わせるが高音ではさほど気にならない。イントネーションもしかり(中低音域が若干不安定)。それよりはアーティキュレーションがすべてにテヌートぎみで音にシェープがなくモダンっぽいのとトリルの終わり方が中途半端なのに違和感がある。1楽章のカデンツはおそらく自作、若干間延び気味で間が保たない感じ。もったいない。3楽章は短いチャーミングなカデンツあり。オケのラッパは Stephen Keavy と David Staff で控えめな演奏。
2のベネットの演奏はまず最初にびっくりするのがオケのラッパのアグレッシブさ。メンバーは Michael Laird と Michael Harrison。ソロは上手でクラッペンの不揃いさもあまり感じさせない。カデンツはベネット作。2楽章の音色などはしっとりとしていてキイトランペットならではの良さを感じさせる。ただオリジナルの楽譜のスラー、タイをもうちょっと意識しても良かったのではないだろうか、やや綺麗に流れ過ぎ。3楽章も上手なんだけど若干乱暴気味な気もする。124小節目のカデンツと180小節目に工夫を凝らしたパッセージが入っていておしゃれかも。ちなみにこの演奏だけピッチがa=421になっている(他の3盤はa=430)。
演奏技術、出来映えという点では間違いなく3のフリードリッヒに軍配が上がる。この人はバロックトランペットにしろピッコロにしろ道具がなんであれ器用に吹く。ここでもクラッペンの存在を全く感じさせないイントネーションと音色の安定感、しかも高音域の音も伸びがあって輝かしい音質だ。フィンガリングも全く問題無し。むしろこういうのを聴かされると「キイ?どこが違うの?」という気すらしてくる。1楽章のカデンツは自作、残念なのはカデンツの終わりに余計な(と思われる)パッセージが入っていておしゃれじゃないことかな。2楽章は早めのテンポでサクサク進むが半音進行なども音程はばっちり合っている。3楽章も難しいパッセージもものともせず音楽的に聴かせる。124小節目にカデンツあり。オケのラッパは目立たない(クレジットもなし)。このCDはカップリングされているフンメルのコンチェルトも達者な名演だ。
4のパーキンス。この人の演奏はYou Tube でも見ることができるけど、フリードリッヒとは対照的に「これが不自由なキイ・トランペットです!」と宣言してでもいるかのような演奏。はっきり言って上手くない。フリードリッヒの演奏を聴いた後だから余計そう思うのかもしれないが、ともあれ僕が最初に手に入れたキイの演奏がこのCDで、聴いてがっかりした覚えがあるからこれ単独で聴いても同じ印象なんだと思う。1楽章第1主題の提示部分からしてドレミが並ばないのか〜と思ったもんな。これだとハイドンが物好きにも不自由だけど新種の楽器にコンチェルト書きましたという受け取り方になっちゃう。曲の完成度が高いだけに、それをピリオド楽器で演奏する良さを出さなければーー特にこの人はパイオニアなんだからーーいけないんじゃないの?と思ってしまう。後輩のベネットにも負けているかな(勝ち負けという問題ではないんだが、当然)。しかも後発のリリースだし。3楽章はカデンツなし、216小節目のラの音を初稿通り1オクターブ上げて演奏しているのは珍しい。録音とオケは秀逸。オケのラッパは James Ghigi と John Hutchins。
You Tube パーキンスのフンメル2楽章の演奏はこちら
そういうお前はこれらを超える演奏ができるのか?というのは無しね。あくまでも純粋なリスナーとして聴き比べをした訳だから。
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