オペラ「アーサー王」観劇
神奈川県立音楽堂の開館55周年記念 音楽堂バロックオペラ「アーサー王」の初日を観る。指揮はエルヴェ・ニケ、オケと合唱はル・コンセール・スピリテュエル。 (2/27 神奈川県立音楽堂)
事前に同じメンバーでフランスで上演したDVDがあまりに意表をつくものだったので、期待値は高かった。が、後に述べる通り残念ながらそれは裏切られた形。
先に音楽の話をしよう。
パーセルは大好きだし、しかもアーサー王は一番好きなオペラでもある。自分が座った席は前から2列目のステージに向かって右側、ちょうどトランペットの真ん前の僕にはおあつらえ向きの良い席だった。ただこの木のホールは残響が少ないのか、オケが鳴り始めた瞬間は響きに慣れなくて、左手のヴァイオリンと右手のヴィオラが溶け合わない(というかヴィオラばかり聴こえてしまう)ので「あれれ?」という感じだったのだが、これは音楽が進みにつれてやがて慣れた。あちらの人たちのヴァイオリンってなんであんなに力が抜けていていい音するんだろうね。反対側で遠かったけど、リコーダーも良かった。
トランペット奏者はプログラムを見るとJean-Baptiste Lapierre とSerge Tizacの二人。舞台に登場すると残念ながら期待したナチュラルではなくてエッガーの3孔タイプの楽器だった。うーむ、出番少ないんだし、高い音もないし、ニケだし、ここはナチュラルトランペットが聴きたかったなあ。1st奏者が舞台上にもサイレントブラスのミュートを持ってきていて出番前にチューナーで音を確かめていたのが(うん、気持ちわかるなあ)面白かった。
歌手と合唱もすぐれものだった。ソリストではバスのJoan Fernandes がいい声だった。合唱も積極性があってアンサンブルが見事。
で、何が裏切られたかというと、舞台と演出。
2年前のオルフェオと同じでオケが舞台に乗っているため、どうしてもフリースペースが限られてしまう。今回は上手と下手に大きい四角い台があって、ソリストや合唱がときどきそこに出てきて歌う。また、バレエやマイムにも利用するという形だった。舞台中央にちょっと張り出したスクリーン上のものがあってそこにいろいろ映像を映す。字幕はその上の天井に近い壁に映写されるという形式だった。
オペラはやっぱり演出に依るところが大きい。限られた予算の中でどう見せるかっていうのはとても難しい問題なんだと思うけど、それにしても今回のはあまりに残念な結果だった。
DVDのモンペリエの上演でもそんなに凝った大道具や仕掛けがあったわけではない。が、要所要所にコメディアンを登場させたりやシルクスクリーンを利用して効果的な舞台になっていたし、なにより観客が見ていて楽しい。
それに比べるのは酷なんだろうけど、パンフレットで伺えるニケの意図と演出家の結論とはすれ違いがありすぎた。
しかも中央スクリーンに文字による(演出家の)解釈や説明。911や事業仕分けへの強引なこじつけ。あげくの果てのR18のマークや顔文字。それはないでしょう。
正直、途中からスクリーンは見ないことにしてしまった。
バレエ(男女ペアと4人のコールド)が加わっていたのは視覚的に楽しめて良かったけどね。
幕間の休憩もなく5幕が1時間半ほどであっという間に終わってしまった。初めて見る人には今何幕をやっているのかもさっぱり分からなかったのではないだろうか。
オペラ上演と銘打つよりはコンサート形式のオペラにしてしまった方が良かったんじゃないかと思う。
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