「オッサンになる人、ならない人」
ここでの「オッサン」というのはイケてない中年の総称だと見た。よってオバサンも対象となるのだが、最初からタイトルに入れてないのは反発を喰らうのを懸念してのことだろうか。
章立ては
第1章 オッサンの兆候
第2章 オッサンの様々な周期
第3章 オッサンの驚くべき法則
第4章 オッサンのどん詰まりと憂鬱
第5章 オッサンの老化現象
第6章 オッサンの明るい未来
タイトルだけで大体中身が想像できそう。
例えば第1章「オッサンの兆候」〜こうなってきたら要注意〜では
・「あれ」とか「それ」とかが多くなる
・「自分は気持ちが若いから、歳はとっていない」と思っている
・他人をまじまじと見る
・気づくと独り言をつぶやいている
・自分の行動を、わざわざ口に出して説明する
・若者コトバに腹が立つ
・爪が早く伸びる
・妙に愚痴が多い
・テレビも見ないしマンガも読まない
といった具合で自分を省みても当てはまることがいっぱいある。爪が早く伸びたりはしてないけどね。
それくらい自覚してるよ、と言いたいところだが、ちょっとハッとしたのは「自分は気持ちが若いから歳はとっていないと思っている」というもの。それって内側の時計が昔のまま止まっているから自分の気持ちは昔のまま「古く」なっているってことだと指摘する。つまりタイムカプセルを保存した「昔の若者」が存在しているわけで、自分はいつまでも若いときのままだと感じていたら要注意ということだ。なるほど。
かって大学祭ですごい年配のOB達がそろって昔の格好をして寮歌を披露しているのを見て我々現役生はちょっと引いてたりしてたけど、彼此のギャップがあれに近いってことだね。
さて、指摘をするだけならどこにでもある本だけど、この本がちょっとユニークなのは、古今の哲学者の思想を引用してそれらに対する対応法を提供しているところ。
この著者なにもの?と思って奥付をみたら河合塾日本史や駿台予備校倫理学などを歴任したいる人気講師だとか。なるほど道理で文章が平易だし洒脱なわけだ。なにしろ予備校の講師は大学の先生と違ってどうやって目の前の生徒たちの心をつかみ理解させるかということに長けているからね。著作も結構ある。ペンネームはトマス・アキナスから拝借したものだそうだ。
この本が自分のオッサン化阻止にちょっとは歯止めになるかも。
| 固定リンク
「本・雑誌・映画」カテゴリの記事
- 「ドライブ・マイ・カー」(2022.01.21)
- 翻訳初出(2019.04.20)
- The Cambridge Encyclopedia of Brass Instruments(2020.04.06)
- 「暇と退屈の倫理学」(2018.05.24)
- 「良心をもたない人たち」(2018.05.23)
コメント