Because it is there
イギリスの登山家、ジョージ・マロリーの言葉とされているものである。
「なぜならそこにそれ(山)があるから」
果たしてマロリーはエベレスト(チョモランマ)初登頂に成功したのか否か、それを史実に基づいて小説にしたのがジェフリー・アーチャーの新作「遥かなる未踏峰(原題はPaths of Glory) 」だ。
アーチャーの作品は昔すごく好きだった時期があったんだけどしばらくご無沙汰してた。読者を物語に引き込んで行くストーリー・テリングとしての力量は相変わらずさすがだ。遠征隊を巡るいろんな軋轢と家族愛とがうまく盛り込まれていて一気に読んでしまった。
(ここから脱線)
クラシックのトランペット吹きにとってみると、バッハのブランデンブルク協奏曲第2番がそれ(it)にあたるかもしれない。今では楽々吹いてしまうプロの奏者が何人もいるこの曲もかっては大変な難曲だった(そして今でも我々凡人には大変な難曲であることに変わりはないが)。
タール教授によると現代における最初の復刻演奏は1898年、ベルギーのトランペット奏者Theo Charlierによるもの。使われたのはG管のトランペット。以下
1902年 Alphonse Goeyens(F管、1906年にはピッコロB管でも演奏)
1905年 Ludwig Werle(アレキサンダーのF管)
1922年 Herbert Barr(ベッソンのF管)
など。演奏の記録が残っているのもすごいが、それだけ記念碑的だったということだろう。最初のSPの録音は1933年のフランス人Pierre=Joseph Vignal(ケノンのピッコロB管)によるもの。イギリスのGeorge Eskdaleが1936年にリリースしたもの(F管)はセンセーションを巻き起こしたとある。
一方ピストンに頼らないピリオド楽器でのチャレンジは1960年のWalter Holy(フィンケの作ったコイル状のナチュラルトランペット)あたりが最初だろうか。その後Immerさんが目の覚めるような録音を残してからはもうそれこそいろんな奏者がピリオド楽器で自在に吹きのけているのはご存知の通り。
読後感想から横道に入ってずいぶん脱線してしまった。
自分にとっては永遠にそこ(there)にあって手が届かないんじゃなかろうか、ブランデンの2番。でもいつまでも攻め続けたいものだ。
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