珍しいシンフォニア・コンチェルタンテ
古典派のシンフォニア・コンチェルタンテといえばまず思い浮かべるのがモーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのためのだろうか。その次にやはりモーツァルトのオーボエ、クラリネット、ファゴットとホルンのためのもの。そしてハイドンのヴァイオリン、オーボエ、ファゴットとチェロの組み合わせ。少しマイナーなところではシュターミッツやディッタースドルフを挙げる人もいるかもしれない。
前置きが長くなった。
当時(1800年頃)は後代に残っていないだけで様々なシンフォニア・コンチェルタンテがあったんだろう。というのも昨日、珍しい組み合わせの曲が入ったCDを入手したからなんだけど。
作曲者はレオポルト・コジェルフ(Leopod Kozeluh)。モーツァルトと同時代のボヘミアの作曲家で1792年からはウィーンの宮廷作曲家に任ぜられているから当時は有名な音楽家であったに相違ない。ピアニストとしても活躍したらしい。
で、そのソロ楽器の組み合わせはというと、クラッペン(キイ)・トランペット、マンドリン、コントラバスそれにフォルテピアノ。この曲の存在は本では知ってはいた。数少ないキイ・トランペットのためのレパートリーだからだ。でもそれを実際に聴くことができるとは思ってなかった。多分その組み合わせの妙からバランスが悪くて聴きものにならないんじゃないかと勝手に判断していたせいもある。
演奏はWillens指揮ケルン・アカデミーというドイツのピリオドオケ。キイ・トランペットはRobert Vanryne(キーヴィと共同でナチュラルトランペットを製作していた人)、演奏に使っているキイ・トランペットも自作だそうだ。写真からではよく判別できないがキイの数は少なくとも5つあるように見える。
曲は3楽章構成の古典派の堂々としたものだ。コンチェルタンテだけあってそれぞれの楽器が順繰りにソロを受け持つので演奏時間は優に30分を超える。トランペットやピアノフォルテに負けないくらいの音量でマンドリンがソロを弾いているんだけど、これって編集のおかげだよね?という点はおいても一聴に値する作品に思えた。なぜマンドリンやコントラバス?という点については多分にそのときの演奏者や依頼者の都合でイベント的にそうなったに違いない。
このCDでは他にもSchiedermayr のメゾソプラノとキイ・トランペットの曲とかFialaのキイトランペットとオーケストラのためのディベルティメントとか、うーむ、よく探して来たねえというようなレパートリーが入っている。そういう意味では貴重というよりマニアックな選曲になっているかも。
キイ・トランペットという楽器の復刻が広がるのに歩調を合わせて、こうした埋もれた曲の発掘も進んでいくんだね。古いものが新しいってなかなか面白い。
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