「ふがいない僕は空を見た」
最近読んだもの
角田光代「八日目の蝉」
角田光代「Presents」
窪美澄「ふがいない僕は空を見た」
人の数だけ物語がある。当たり前のことだけど、普段は自分の物語の中だけで生きている。なので同じことがらを複数の視線で捉えてみるというのは作家にとってとても面白い試みなんだろうね。あるいはそのほうがむしろ作品を立体的にするのに楽なのかもしれないが。
力量のある作家の作品は読んでいてぐいぐい引き込まれる。そうじゃないとささいなことに捕われてしまって作品の中に入って行けないから。
「八日目~」は映画を観たわけから読んだわけではないのだが、映画→本、はありと思うけど、本→映画、はあまりそそられないパターン。機会があれば自分の作り上げたイメージが薄れた頃にDVD観てもいいかな。
「Presents」は短編集。どの話も良かったけど、僕には「鍋セット」がツボだった。角田さんの本、どれもはずれがなくて好きだなあ。
「ふがいない~」はひょんなきっかけ(証券会社のレポート読んでて興味惹かれた)で読み始めたけど、なんていうんだろう、深刻なテーマ(複数)を扱っているわりにこの屈託のなさ。普通に共存しているというか。どんなテーマでも飲み込んでしまえる漫画という媒体を小説にしたらこんなふうになるよ、と提示された感じ。この新しい感覚が本屋大賞を受賞した理由なのかな。5人の語り手が紡いで行く話は後半になるにつれて集中していって一気読みしてしまった。面白い。
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