ガーディナーとフィリップ・ジョーンズ
手持ちのモンテヴェルディのヴェスプロのCDの中にジョン・エリオット・ガーディナー指揮の初期の頃のものがある(DECCA 414 572-2)。合唱とオケは手兵のモンテヴェルディコアとオーケストラ(コンマスはケネス・シリトという人、知らないなあ)。それにフィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル(PJBE)とデヴィッド・マンロウ・リコーダーアンサンブルが賛助で加わっている。
録音は1974年1月。この時期はまだモダンに限りなく近いスタイル。今久しぶりに聴いてみると古楽黎明期の時代を感じさせる演奏だ、が、これはこれでありかなと思ってしまう。
1974年ということはガーディナーもマンロウもまだ30代前半(とはいえマンロウはこの2年後にはもう亡くなっているのだが)、意欲的な活動を始めたばかりの頃ということだね。
で、以下はフィリップ・ジョーンズから直接聞いた話。
このヴェスプロの録音のあとに、ガーディナーから「今度は古楽器でやってみないか」と誘われたそうだ。PJBEの中にはマイケル・レアードやロジャー・ブレンナーのようにロンドン古楽アンサンブルでマンロウと一緒に古楽器をやってたメンバーもいたからガーディナーの提案は極めて当然の成行きだったように思える。
が、ジョーンズ氏は「それはたいそう面白い試みだが、今から古楽器にチャレンジするには自分はもう年を取りすぎている。残念ながらお断りする」と返答したそうだ。時にジョーンズ氏は46歳。それが年を取りすぎているかどうかは別にして、プロとして自分になにができてなにができないかの見極めがはっきりついていたということだね。
一方、話は伝聞になるが、ある古楽器奏者がモーリス・アンドレに「ナチュラルトランペットで演奏するのはいかがですか」ときいたときのこと。アンドレ氏は古楽器には全く興味がないとのことだったらしい。あれだけバロックの曲を発掘しレパートリーに持っていたのに、それはソロ活動で自分のヴィルティオージティを示すためだけだったということだろうか。ちょっと残念な話ではある。
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