« カンタータ第106番 | トップページ | ナチュラルトランペット吹きによる座談会(その2) »

2012/09/06

(記事)ナチュラルトランペット吹きによる座談会(その1)

以前にまとめたナチュラルトランペットに関する記事をこちらに転載しておこう。ちょっと古い話にはなるが、1995年夏にアメリカ、アマーストで行われたHBSのシンポジウムの時にナチュラルトランペット奏者たちにフリートークをしてもらった。以下はその模様。

 

座談会の参加者は以下の6人で、司会はBob Riederが務めた。

Barry Bauguess (BB), Igino Conforzi (IC), Fred Holmgren (FH), Freiedemann Immer (FI), Paul Plunkett (PP), Edward H. Tarr (ET)

ET:1976年にモントルーの会議場にフリーデマンが颯爽と登場したときのことはよく覚えているよ。バロックトランペットでブランデンを吹けるやつが現れたっていうんでね。それから2年後だっけ、ポール(プランケット)がオーストラリアから現れた。フレッド、君と会ったのは79年くらいだったっけ?それからジノ・コンフォルツィ。バリー、君はフレッドと一緒にいい仕事をしてたよね。そう、相乗効果で活躍場所を広げてきた。仕事が活躍の場所を広げるっていうけど、僕らの場合はラッパ吹きたちがいい意味で活躍場所を広げてきたと思う。

FH:確かに。ところであっち(展示場)にいろんなメーカーの楽器が並んでたけど、こんなに楽器を吹き比べるチャンスってそうないよね。

BB:いろいろありすぎて混乱しちゃうよ。

司会:そうなんです、私はこのチャンスに楽器を注文しようと思って準備してきたんです。どれが欲しいかはあらかじめ決めてあって。で、ポールに先週楽器を見せてもらって、それからいろんな楽器を試してみて・・・

BB:で、迷っちゃったと・・

司会:そういうことです。これだけ選択肢があると楽器を選ぶ際には何が決め手になると思いますか?

FH:ホールで演奏しても響きが気に入るような楽器を選ぶべきだよ(参加者一同賛同)。狭い部屋で吹いてる時には全然問題なかったのにステージに持っていったらさっぱりだったというおぞましい経験を結構したからね。

FI:もし楽器を探しているんなら本当にいいのにしたほうがいいよーー本当にいいというのはオリジナル楽器のいいコピーということなんだけど。博物館に行ってオリジナルを吹かせてくれるチャンスがあれば、それでなにができるのか、音程がいいとはどういうことか、穴なしで何が吹けるか、本当に分かるよ。オリジナルかそうじゃないかという議論は大なり小なりプレーヤーのレベル次第でなされていることが多いけど、メーカーのレベル次第だとも思うんだ。僕はナチュラルトランペット演奏の秘密の少なくとも半分はその作り方にあるんじゃないかと思ってる。つまるところ、「この楽器はどうやって作られたのか?」ということだ。もし本当のオリジナル楽器を吹いてみたら何が本当にいいか、どうあるべきかということが分かる。僕は今月の初めにもニュルンベルグでオリジナル楽器のいくつかを吹くチャンスがあったんだけど、中でも貴重品保管庫にあった1本はそれは本当にほれぼれするほど見事だった。メーカーはすべからくああいう楽器のコピーを作るべきだね。ここの試奏でも僕はそんな楽器を探してるよ。

FH:あのさあ、長いこと僕は思ってるんだけど、博物館に展示してある楽器たち、なぜそれらは博物館に収められているんだと思う?昔使われてた楽器は使っているうちにいろんなところにぶつかったり、落としたりして凹んだりしたんだと思う。で、それを修理して使う。修理するときはよっぽどちゃんと焼きなましをしないとその部分が固くなる。そして、また凹ませる、修理する、固くなる。これを繰り返すとしまいには割れたり継ぎ目もはがれてきたりする。つまりクズになるというわけ。博物館にあるのは、だからあんまり使われなかった楽器、つまりそれほど良い楽器じゃなかったからなんじゃないのかなあ。もちろんそれがすべてじゃないだろうけどさ。

FI:でも陳列品じゃなくて保管庫にあるものの中にはほんとに良い楽器があるよ。10年ほど前、ドイツでの修復に関するシンポジウムに参加した時、ライナー・ヴェーバーがあるトロンボーンについてこんな話をしてたよ。それは彼の博物館にあったアルトトロンボーンで、素晴らしい、まったく見事な楽器だったけど、中には緑青がたくさんついていたそうだ。で、博物館の人たちは中をきれいに掃除した。そしたら緑青と一緒に楽器の良さも失われてしまった。ホントに何にも残らなかったんだって!そこで大きな疑問にぶつかる。管の中にあったものは何だったのか、そして今は何があるのか?もしその何かは3世紀にわたって溜まったホコリなんだろうか、そしてそれがないといけないんだろうか?これは修復屋にもメーカーにもそして我々にも共通の疑問だ。とにかく我々はメーカーと一緒にもっといろいろ研究しなくちゃいけないと思うんだ。

|

« カンタータ第106番 | トップページ | ナチュラルトランペット吹きによる座談会(その2) »

トランペットの話題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« カンタータ第106番 | トップページ | ナチュラルトランペット吹きによる座談会(その2) »