ITW Report(Day 1)
勤め先で少し長めの休暇が取れることになったので、今はドイツに来ている。Schwerinという街で開かれているITW (Internationaler Trompetenbau Workshop) に参加するためだ。ITWとは1週間でナチュラルトランペットを自作するコースで、かれこれ20年続いているが、今年はここドイツのシュヴェーリンとイギリスのケンブリッジ、アメリカのブルーミントンの3カ所で開催されることになっている。
我々が工作をする部屋に入るとこんな感じで1人ずつに材料と工具がセットされていた。全部で13人分ある。
工具と材料。これらの金属片が5日後にはラッパになって音が出せるようになるのかと思うとワクワクして「よーし、絶対良い楽器を作るぞ」と気持ちがはやる。
我々を17世紀のトランペット作りの世界に導いてくれるマイスターの方々は3名。
写真の順にRobert Barclay (Canada), Richard Seraphinoff (USA), Michael Münkwitz (Germany) の各氏。
バークレイさんは現代にナチュラルトランペットを昔ながらの工法で作ることを復活させたこの世界での第一人者だ。この写真だと難しそうな顔をしているけれど、実際はそんなことはない(ときどき混じるジョークがキツいかも)。セラフィノフさんはご自身がホルン吹きでナチュラルホルンのメーカーとして有名、ナチュラルトランペットも製作している。ミュンクヴィッツさんはドイツでの主催ということもあり幹事的にワークショップのマネジメントをしてくれている。
ワークショップの進め方は極めてシンプルだ。まず最初にバークレイズ氏がこれから行う作業の手順を説明、実演してくれる。同時にいろいろ付随する注意点をあとのお二方もアドヴァイスしてくれる。先生によって微妙にやり方が違うのも面白い。
それを聴き見終わったらそれぞれ自分の作業台で見よう見まねで自分のパーツに取り組むわけだ。3名の先生方は見回りながら各自の様子を見つつ質問に答えたりちょっとした手助けをしてくれる。13名に対して3人の先生方というのはこういうやり方だとちょうどいいバランスのような気がした。
さて、それではいよいよ作業スタート!
*** 作業1:パイプ作り ***
まず長いヤード(yard)の部分の2本と前後半円形のボウ(bow)の部分となるパイプを作成する(ボウを曲げるのは後の行程になる)
長い金属片を横に渡した直径11mmの棒に巻き付け(手作業および木のハンマーで)パイプを作る。接合部がきっちり揃うように金属のハンマーで微調整。それができたら接合部にロウを塗ってバーナーでハンダ付けを行う。火を使うので要注意な作業だ。
パイプの片方を指で塞ぎ、もう片方から息を吹き込んで溶接もれの穴がないことを確認しつつ、出来上がったのがこちらの3本(後で磨いて綺麗にする)
組み合わせたらそこをハンマーで叩き隙間がないようにしたうえでハンダ付けをする。このときに使うハンダはパイプのときよりも太いものだった。ハンダ用の材料は40%銀を含みとても高価だから最少の量でやるように(つまり贅沢に使いすぎるなと)お達しがある。
朝の9時半にスタートし、ランチ休憩を挟みながら5時まで、都合7時間で初日に出来上がったものがこちら。
今まで写真や動画などで見ていて作業内容については知っていたつもりだったけれど、見るのとやるのでは大違い。マイスター方の助けを得ながらとりあえず今日の作業は終了。ホントはパイプ磨きの作業とかを完了したかったけれど時間切れ。タイムキーピングには厳しく「残業が決して許されないところ」などドイツらしいかも。
明日はこのベルを叩いて広げる作業になる予定。音がうるさいから耳栓をするんだとか言ってたっけ。
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