ゲルマン国立博物館に思う
先にレポートはしたが、今回訪問した博物館の中で内容、展示共に最高だった。
しかし、しばらく気づかなかったけれど、ここは「ゲルマン」博物館だから、基本的にドイツのもの主体の展示だった。たくさんある弦楽器の中にクレモナ製をさがそうとして、うかつにもそのことに気づいたのだった。だからトランペットもイギリスのものやフランスのものはなく、だからと言って物足りないかというとそんなことはなく、むしろドイツのものだけでこんなにあるのか、と圧倒されるくらいだった。
ということはここにある美術、彫刻など他の膨大な展示品もそうなのだろう。大英博物館やメトロポリタンのように古今東西、あらゆるものをコレクションにして「どうだ!」とばかりに繰り広げるやり方の対称にある気がした。Heinrich Deutsche!とでも言わんばかりに。
トランペットに関していうと、ここニュルンベルグは16世紀から、それこそ「世界的な」トランペットの生産地だったわけで、最盛期には欧州各地の宮廷から注文が殺到して(しかもマイスター制度やギルト制は厳しく新規参入者を制限していたから)銘器の誉れの高かったハース家やエーエ家はかなり裕福なくらしを享受できていた。
しかし王政の衰退と音楽の大衆化に伴い、そうした特権は過去のものとなり、贅を凝らした華麗な装飾に高いお金を支払ってくれたお客様もいなくなったため、楽器自体も民主化して簡素なもの、機能的なものが求められるようになっていった。楽器がそうであれば奏者も同じ流れであったに違いない。ライヒャのようなスーパープレーヤーがもてはやされる時代は過去のものとなってしまった。
ここに展示されているものは、そうしたトランペットが一番輝いていた時代にフォーカスし、そのあとの古典派以降の時代については他の博物館にその任を譲っているというわけなのだなと思った。
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