コルネットのメーカー
コルネットのメーカー
コルネットのメーカー(制作者)についての情報についてはヒストリック・ブラス・ソサイエティのニュースレターが一番豊富です。最近は更新されていませんが1999年夏の12号には次のメーカーについて連絡先、作っている楽器の種類と値段、コメントなどが載っています。(ABC順)
Victor Aragon(ベネズエラ、Merida)
Serge Delmas(フランス、Meru)
Paolo Fanciullacci(イタリア、Prato)
Henri Gohin(フランス、Boissy L'Aillerie)
Jacques Leguy(フランス、Malabry)
Philippe Matharel(フランス、Toulouse)
John R. McCann(アメリカ、Uta)
Christopher Monk Workshops(イギリス、Forest Hill)
Graham Nicholson(オランダ、Den Haag)
Bent Nielsen(デンマーク、Valby)
Nicholas Perry(イギリス、St. Albans)
Toni Romera(スペイン、Manresa)
Lluis Sole(スペイン、La Garriga)
Siem van der Veen(オランダ、Le Burgum)
Roland Wilson(ドイツ、Koln)
Romano Zolss(オーストリア)
これらのメーカーのほとんどは自身がコルネット奏者であることが多く(要するに必要に迫られて自分で作り始めたというケース)、少数の例外(クリストファー・モンク・ワークショップ)を除いて個人で手作りしているところがほとんどですから、たいていは注文生産になります。
自分が実際に吹いてみた経験から各メーカーのコメントをしましょう。
セルジュ・デルマス
多分ヨーロッパで(いや世界で)一番人気があるのはフランスのデルマスでしょう。僕がメインで使っているのもここの楽器です。茶色の羊皮紙をカバーに使っているのが特徴で、茶色の楽器を持っていたらデルマスだと思って間違いないです。通常の黒の牛革のもあります。素材の木にはつげ、梨、りんご、くるみ、ローズウッド、エボニーなどなどいろいろな材質を使っています。オリジナル楽器のコピーではありますが、プレーヤーの要請によりさまざまな修正を施してあり、使っていて一番安心できます。初期の頃の楽器は仕上げがやや粗雑だったようですが、最近は改善されて綺麗な仕上がりです。
パオロ・ファンチュラッチ
ブルース・ディッキーが一時愛用していたことからイタリアのファンチュラッチも人気があります。僕のA=440の楽器はちょっと太めで、指孔が他のメーカーに比べると少し大きいので若干操作性が大変な気がします。音色はデルマスよりちょっとくぐもった感じ。でもこれは個体差のあることなので一般的ではないかもしれません。さすがイタリア、仕上げは美しく、刻印されているハートのマークがかわいらしいです。
アンリ・ゴワン
フランスのゴワンはミュートコルネットやストレートコルネットなど、一本の木から切り出した直管の楽器に定評があります。普通のコルネットは吹いたことがないので判らないのですが、ここのテナーコルネットはとてもいいです。テナーだったら迷わずこの人の楽器ですね。
ローランド・ウィルソン
ドイツのケルン在住のローランド・ウィルソンはさまざまなピッチのコルネットを提供しています(A=490なんてのもある!)。私は残念ながら試してみたことはありません。ドイツの初期バロックといえばシュッツですが、そのコルネットの使い方なども高音が多く、例えば今のピッコロトランペットのような響きを好むような気がします。コルネット特有の艶のある魅惑的な音とちょっと違うような気がするのは私だけでしょうか。彼の演奏したCDを聴くとそういう印象を持ちます。
ジョン・マッカーン アメリカやカナダではやはりマッカーンの楽器を持っている人が多いですね。この人は1975年からコルネット作りをやっていて、ラインアップもいろいろあります。彼はさまざまなオリジナル楽器のX線写真を撮って採寸し、コンピューターなども駆使してコピー楽器を作っているそうです。もちろんすべて手作りです。私は人の楽器を借りて吹いたことがありますが、いい楽器でした。(残念ながら私の好みではありませんでしたが)
クリストファー・モンク さて、モンク・ワークショップの楽器です。もともとはクリストファー・モンクという人がさまざまな古楽器を製作することで始まったのですが、イギリスはアメリカと並んで古楽愛好家が多いのか、規模が大きくなってきたので会社組織にし、演奏家のウェスト氏も経営に参画しています。製作は主にキース・ロジャースという人が担当していましたが、近年亡くなってしまいました。モンク氏は1991年に他界しましたが、古楽器の復元に多大な功績を残した人です。この工房も楽器の種類、材質、ピッチなどさまざまな楽器を提供しています。僕の持っている楽器はちょっと華奢な印象です。
なお、このメーカーの最大の特徴はレジン(合成樹脂)製の楽器を廉価で作っているところです。安くて手に入りやすく、かつ大量生産していますので、このレジン製の楽器でコルネットを始めたという人は数えきれないほど多いのではないでしょうか。私もその例外ではありません。ウェスト氏が来日したときに「レジンの楽器は世界中ありとあらゆるところにあまねく売ってきました。今もコンスタントに売れる我が社のヒット商品です」と語っていました。
以上が私の独断的コメントですが、最後にリストに載っていなかった日本のメーカーを紹介します。
桑原孝広(日本、福岡)
桑原さんの楽器は素晴らしいです。彼はデルマスの楽器を参考に独学でコルネット製作を始めた人(コルネット奏者でもあります)ですが、持ち前の器用さでもって、非常に品質の高い良い楽器を作るようになりました。芯のあるつややかな良い音がしますし、ピッチも正確です。注文生産ですが、素材もいろいろな木を使っています。私も愛用していて、演奏会ではデルマスの楽器か桑原さんの楽器、どちらかをプログラムによって選んで使ってます。なにより便利なのは楽器の調整をすぐ頼める点ですね。メインテナンスも含めて大変お世話になっています。
どの楽器を買うか
これからコルネットを買って練習を始めてみようかなという人、どの楽器を手に入れるか迷っていらっしゃる方への究極のアドバイスをしましょう。
1. まずモンク社のレジンの楽器を手に入れて音を出す練習をしてみてください。
2. 「こりゃー無理だ」と思った方は、そのままレジンの楽器を部屋のインテリアにでも使ってください。あるいは友人が家に来た時に「ほら、こんな変な楽器あるんだよ」と話のたねに使えます。
3. 「なんとか吹けそうなのでもう少しやってみよう」と思った方は、迷わず桑原さんに楽器を注文して木のコルネットを手に入れましょう。
4. それで充分満足できるはずですが、他のメーカーのも欲しい と思われた方は、お好みでデルマス、ファンチュラッチ、マッカーン、ウィルソンなどの楽器を手に入れてみてはいかがでしょうか。その段階に至る頃には家の中に確実に数本のコルネットがころがっているという状況になっているでしょう。
マウスピースのメーカー
自分に合ったコルネットのマウスピースを見つけるのは結構大変です。モダンのトランペットのように規格化されたものではないし、第一いろいろ試してみることすら難しい状況です。とりあえずクリストファー・モンクのレジンの楽器を買うとトランペット型の大きめのマウスピースとドングリ型の小さいマウスピースがついてきます。まずはこれで感触をつかんでから自分に合いそうなものを注文するのがよいでしょう。メーカーとしては次の3つを紹介しておきましょう。
クリストファー・モンク・ワークショップ
ジパング社(及川茂さん)
中川隆さん
モンクのマウスピースのカタログはウェスト氏のホームページで見ることができます。
ジパング社のものは東京古典楽器センターにおいてあるはずです。いろいろなモデルを作製していて一番ラインアップが豊富です。ジパング社のホームページに詳細が載っています。
中川さんのマウスピース(私はこの数年ここのNo.2というモデルを愛用しています)については雑誌アントレに広告が載っていますので、連絡先はそちらをご参照ください。
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コメント
はじめまして
モンク・ワークショップでコルネットを購入しようと思っているのですが、440と466のピッチが選べるようです。ネットで調べた限りでは、466は半音高くなる・他の通常の楽器と合奏するのは難しい、程度しかわかりませんでした。一人で自宅で趣味の程度と考えていますので、合奏はかまわないのですが、演奏の難易度は変わるのでしょうか? ピッチの高い管楽器は音程が取りにくいと聞いたことがあるのですが・・・。私は指が短いので、466ピッチの小さいサイズが合うのではないかと思っているのですが。
どうかご教授お願いします
投稿: ウミネコ | 2009/01/01 07:58
ウミネコさん
コメントありがとうございます。
合奏をもともと考えていらっしゃらないのであれば466ピッチの方が練習にはいいと思います。
そもそも昔のヴェネチアの現存する楽器は466ピッチがほとんどだったようで440はモダンのピッチに合わせるため拡大したもののようです。
ただし、人と合わせることになると回りの人に半音上げてもらうか自分が半音下げて演奏する必要が出てきますのでご注意ください。
投稿: 中村 | 2009/01/01 08:14
はじめまして。
毎回、楽しみに拝見しております。私は地方在住で、金管古楽器の情報に触れることは少なく、中村さんのお話は大変貴重です。2年前にこの記事を拝見して、いつか木製のコルネットを吹くことができたらと考え検討を始めました。
そこでご推薦の桑原孝広さんのコルネットのおよその価格と連絡先をお教えいただければ幸いです。
因みに私は個人的な楽しみでリコーダーを、そして10年ほど前からモンクの樹脂製コルネットを、昼休みに時々練習しています。これほど思うようにならないコルネットを細々ながら継続しているのは多少の縁があるのかも知れません。
コメント欄からの不躾なお願いで誠に恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
投稿: ヤマシャクヤク | 2010/10/17 15:23
ヤマシャクヤクさん
書き込みありがとうございました。
日本語で読めるコルネットやナチュラルトランペットの情報は確かに限られていて、そうした中私のブログが多少でもお役に立てるとしたら本当にうれしい限りです。
お問い合わせの桑原さんの連絡先などについてはメールでお返事します。
これからもよろしくお願いします。
投稿: 中村 | 2010/10/17 23:25
お久しぶりです。サブの楽器として桑原さんの楽器に興味があります。私にも連絡先を教えてください。
投稿: 高橋 実 | 2011/03/25 22:54
はじめまして。「おーぼえもふきます」と言います。
記事のアドバイスの通り、去年末からモンクのレジンツィンクを貸してもらい、練習しています。
そして、記事の通り、少し何とかなるかなと思い始め、何が悪いのかC'のピッチが悪いような気がしてまいり、ちゃんとした楽器を手に入れることを検討しようかと思い至りました。
まさか日本の方の楽器がそれほどによいとは思いも寄らず、ぜひ桑原さんの連絡先を教えていただきたいと思い、コメントを書かせていただきました。
10年以上も前の記事へのコメントに、お返事を書いてくださるかどうかとは思いましたが、万に一つの希望をこめて。
マウスピースのメーカーなどもうなくなってしまっていますね。
ツィンクは非常に肉体的な喜びを感じる楽器であるように思います。心身の意志がそのまま音になるような連帯感というか一体感というかを感じます。
自分の身体がリードになるからでしょうか。
このところの災厄のおかげで手ほどきしてもらいに出かけることができません。
しばらくは我流で吹いてみます。
ぜひよろしくお願いいたします。
投稿: おーぼえもふきます | 2020/04/18 02:47
おーぼえもふきますさん、
弊ブログの記事をお読みいただきありがとうございます。
お問い合わせの桑原さんですが、今も作っていらっしゃるか、ちょっと確認してからメールでお返事します。
マウスピースについては元ジパングの及川さんにも連絡は取れますが彼はもう作っていないんじゃないかな。
中川さんに連絡をされるのが一番いいと思います。モデルもたくさんお持ちですのですぐ入手できると思います。
記事にあるアントレも最近廃刊になってしまいましたね。合わせて連絡先をメールでお知らせします。
それではしばらくお待ちください。
投稿: 中村 | 2020/04/18 05:37