コルネット(古楽器)の演奏を聴くなら
世界のコルネット奏者たち
コルネットという楽器の復興に先駆的に貢献した第1世代というべき人々としてはアメリカのドン・スミサーズ、イギリスのマイケル・レアード、ドイツのエドワード・タールやホルガー・アイヒホルンという先人が挙げられます。この人たちの功績は大変偉大なものの、演奏という面では今や歴史的な部類に入ってしまいますので、今からコルネットを学ぼうという人の参考にはならないでしょう。
次に第2世代に当たる人たち。これらの人たちは奏法の技術向上、レパートリーの開拓、演奏スタイルの確立という面で今日のコルネット界の一番の立役者といってもいいでしょう。今も現役でアンサンブルでの演奏や音楽大学で後進を指導するなど第一線で活動中の方々です。
ブルース・ディッキー(アメリカ人、在イタリア、コンチェルトパラティーノ主宰)
ジャン・ピエール・カニヤック(フランス、レ・サックブティエーズ・デ・トゥールーズ主宰)
ジェレミー・ウェスト(イギリス、ヒズ・マジェスティズ・サックバッツ&コルネッツ主宰)
ローランド・ウィルソン(ドイツ、ムジカ・フィアタ・ケルン主宰)
彼らはそれぞれ自分のアンサンブルを持ち、積極的にレコーディングを行ってきたので、CDもたくさん出ていますし、数あるモンテヴェルディのヴェスプロのCDなどでもこの人たちの名前の入っていないCDを探すのが難しいくらいです。
そしてその次の世代。先の第2世代に教わった人たちで、先輩達の業績を土台にさらにレパートリーや奏法の可能性を広げていっている人たちです。今一番旬でエキサイティングな演奏を聴かせてくれる人たちと言って良いでしょう。
濱田芳通(日本、アントネッロ主宰)
ジャン・チュベリー(フランス、ラ・フェニーチェ主宰)
ウィリアム・ドンゴワ(フランス、レ・コンチェルト・ブリーゼ主宰ほか)
ドロン・シャーウィン(アメリカ人、在イタリア、コンチェルトパラティーノのメンバー)
さらに次の世代については、これからどんどん若い人が出てくるのでしょうが、まだ第3世代をしのぐような逸材は出てきていないというのが現時点での私の正直な感想です。第3世代でかなりのところやり尽くしちゃったんじゃないかという気もして、果たしてそれを超えるビッグな奏者がでてくるのかどうか自体が疑問でもあります。
独善的おすすめCD
日本に住んでいてコルネットをやろうというのなら、なにはともあれまず濱田氏率いるアントネッロの演奏を聴くべきです。世界一流のコルネットの腕もさることながら、音楽とはいかにあるべきかということについて重大な示唆を与えてくれること必定です。
Anthonello/ Il Chiostro Manieristico (マニエリスムの回廊)Cookie & Bear 00001
Anthonello/ Estro Venetiano(ヴェネチアの霊感)Cookie & Bear 00002
Anthonello/ Viva Ciaccona!!(ビバ!チャコーナ)Cookie & Bear 00004
Anthonello/ Frescobaldi, Arie, toccate e canzoni スウェーデン BIS CD-1166
Anthonello/ Tarquinio Merula, toccate, canzoni e canzonette 伊Symphonia SY02201
アントネッロ/ 薔薇の中の薔薇ー聖母マリアのカンティガス Anthonello Mode 10001
アントネッロ/ ナトゥラーレ Anthonello Mode 10002
アントネッロ/ 天正遣欧使節の音楽 Anthonello Mode 10004
正統的コルネットの模範演奏はこちら、ブルース・ディッキーのものは聴いておかねばなりません。なにしろコルネットを芸術楽器として今ある位置まで高めたのはブルースですし、わざわざ研究のために文献の豊富なボローニャに移り住んいることから判る通り、実践的な研究に基づいた史実に忠実な演奏習慣の復活に長らく奉仕してきたコルネット界の大御所です。今活躍している世界的コルネット奏者で彼の教えを乞うたことのない人はいないくらい彼の影響力は偉大だと言えましょう。演奏は堅実ながらスタイルはしゃれています。
Bruce Dickey/ Virtuoso solo music for cornetto ベルギーAccent ACC9173D
Concerto Palatino/ Sonate concertate in stil moderno ベルギーAccent ACC9058D
Ensemble Sonnerie/ Sonatas Fontana, Cima and Turini 英Virgin Veritas 7243 5 45199 25
Concerto Palatino/ Gabrieli, Sonate e Canzoni 独harmonia mundi HMC901688
ここから先は好みの問題になります。
ヴィルティオーゾ的技巧を聴いてみたい人にはジャン・チュベリーの演奏がいいでしょう。まるでリコーダーを吹くように軽やかにコルネットを操っていて、これがどんなに困難な楽器であるかをみじんも感じさせません。ジャンほど技巧的ではないけれど、やはり鮮やかな演奏はウィリアム・ドンゴワのものです。この人の即興はすばらしい。カニヤックの演奏もものによっては参考になります。いずれもフランス人ですが、ラテン人の粋な面というのはこういう演奏で伺い知れることができます。
La Fenice/ Dialoghi Venetiani 仏Ricercar RIC157142
La Fenice/ Lassus & Palestrina 仏Ricercar RIC152137
La Fenice/ Dario Castello In stil moderno 仏Ricercar RIC206422
Le Concert Brise/ La Barca D'amore 独Carpe Diem 16254
Le Concert Brise/ La Golferamma 独Carpe Diem 16258
Le Concert Brise/ Musique Transalpine 独Carpe Diem 16263
Les Sacqueboutiers de Toulouse/ Giovanni Martino Cesare 仏Accord 205 532
誤解を恐れずに言えば、それ以外の演奏は聴かなくても良いと言えるでしょう。積極的にはお奨めしません。これらを凌ぐコルネットの名演はないと思いますから。ただ、違うスタイルの演奏を聴いてみたいとか、どうしてもその団体しか音源として録音が存在していないというときには聴いてみるのはいいかもしれませんが。限られた予算でコルネットの良い演奏、いい音楽を聴きたいのであれば上記に挙げたCDで充分だと思います。
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