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2016/05/27

永年の誤解

今更ながらに正直に告白すると、永年(ほとんど20年近く)誤解してたことがあった。
それはナチュラルトランペットに関する英語について。

今博物館においてあるような歴史的ナチュラルトランペットは単なる真鍮の管なのだが、これだと出せる音が自然倍音のみなので、いわゆる平均律から音程が大きく乖離する音がいくつかある。現代になって古楽器のリバイバルブームが起きたときに、この問題を解決するためにナチュラルトランペットの管の途中に小さな穴をあけることが考案された。1960年代のことである。

最初は管長の2/3のところに穴を1つ空けて管の中の振動数をそこで止めることにより4度上の倍音列になるようにしたのだが、それ以外にも小さな穴をいくつか空けて他の倍音列にしたり、本来は出ない音も出せるような工夫がなされた。それによって演奏の安全性や音程の調節のたやすさなど、ナチュラルトランペットが持っていた演奏上の困難な問題をかなりの程度克服できるようになった。

今ではごく一部の勇敢な純正ナチュラルトランペット奏者以外は世界中のほとんどのピリオド奏者(自分も含め)がこの3つか4つの穴が開いた”えせ”ナチュラルトランペットを使ってピリオド楽器によるピリオド奏法、と言ってコンサートやレコーディングをしているわけだ。
ちなみに、長らくバーゼルのスコラの教授だったエドワード・タール氏はこの古くて新しい楽器のことを「ナチュラルトランペット」と区別して「バロックトランペット」と呼んでいるので、僕もずっとそれに倣っている。

前置きが長くなったが、問題はこの穴の名称。英語だとvent holeと呼ばれている。機能は上述した通り、その穴の地点で波動を止めて倍音列を変えることなのだが、僕はてっきりbent(曲げる)と混乱していて、波動を変化させて音程調節に使うという意味で「補正孔」という言葉を充てていた。最近改めてもっとぴったりした単語はないかなとずっと考えていて「変調孔」とかどうかな、とか思案しながら、辞書を引いてみてびっくり! なんのことはない、「vent=(管楽器の)指穴」 とあるではないか。なんか考え過ぎだったというわけだ。
ということで今後はこの小さな孔のことを「指穴」と呼ぶことにしよう。

今までさんざん「補正孔」として書いてきたブログの記事とかどうしよう。それが新たな問題だ。

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トランペットの話題」カテゴリの記事

コメント

ワォッ! 驚きです!
でも、Vent holeだと、指穴の穴で重複しちゃいますね(^o^;)

投稿: バッハHr. | 2016/06/01 04:00

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