CDその229 Telemann / Trumpet & Horn Concertos
カテゴリ:German Trumpet Music
タイトル: Telemann / Trumpet & Horn Concertos
演奏団体: Sigiswald Kuijken / La Petite Band
Trumpet: Jean-François Madeuf
共演: Pierre-Yves Madeuf (horn)
収録曲目: Suite in D major for trp, 2vn, va & b.c., TWV55: D7
Sonata in D major for trp, 2vn, va & b.c., TWV44: D1
Concerto in D major for trp, 2vn & b.c., TWV51: D7
録音年月: 2016. 1, Antwerp
レーベル: ACCENT ACC 24318
コメント: 出ました。師匠によるテレマンのコンチェルト。もはや自分ではバイアスのかかっていないコメントはできないので、ここは米国ヒストリック・ブラス・ソサイエティの記事を引用することにしよう。評者はJeffrey Nussbaum
ジャン=フランソワ・マドゥフは、現代の他のどの演奏家よりも精力的に、金管楽器のさまざまなレパートリーを歴史的考察に基づいて実践するという活動を続けてきています。これはその一環の最新のCDで、その成果はこの上なく素晴らしいものです。今回彼はモダン楽器古楽器を問わず今まで非常に良く演奏されてきた曲をプログラムに選びました。世に名盤が多くある曲に対して自分なりのアプローチを対比することができるよう敢えて選んであるようです。収録されているのは、ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681-1767)のトランペットのための組曲、ホルンのためのコンチェルト、トランペットのためのソナタ、2本のホルンのためのコンチェルト、そしてトランペットのためのコンチェルトの5曲です。ボーナストラックとしてトランペットのためのソナタから第1楽章と第3楽章のトランペットなしの演奏がついていますが、これはスコアにそういう演奏形態もあり得ると書いてあるからです。
巷には歴史的名盤と言われる有名な録音があります。このCDで取り上げられている曲の中でも、例えばモーリス・アンドレやヘルマン・バウマンなどのような偉大な奏者が数十年前にレコーディングしたものがそうです。若い時にその演奏に触れると、すっかりその演奏が意識に刷り込まれたりします。筆者にとってもモーリスアンドレが演奏したテレマンのトランペットコンチェルトはそれに該当します。まさにそういう刷り込みがあるからこそ、マドゥフ氏はそれらの曲を選択したのではないかと思います。そしてその対比は狙い通り明白に示されているといえるでしょう。今まで多数残されてきたトランペットとホルンのコンチェルトのモダン楽器での演奏は明らかにソリストとしての立ち位置であり、室内楽として奏者間で対等にコラボレーションをしアンサンブルを作り上げるというものではありませんでした。ラ・プティット・バンドの編成は1パート一人もしくは二人であり大オーケストラではありませんが、そのことがミュージシャン内のアンサンブルの緊密性を高めています。
マドゥフ兄弟の演奏は正確かつ音楽性に豊んだものです。装飾とアーティキュレーションは18世紀に広く共有されていた演奏習慣に従っています。ピエール=イヴはライヒナムシュナイダーのオリジナル楽器をグレアム・ニコルソンが複製した楽器を使用し、ジャン=フランソワもホルン2本の曲では同じ楽器を使って演奏に参加しています。トランペットの曲ではジャン=フランソワはヨハン・ウィルヘルム・ハース作のオリジナルのナチュラルトランペットで演奏しています。マドゥフ兄弟はいわゆる「スイッチ・ヒッター」、つまりトランペットもホルンも両方演奏しますが、これは当時ホルン奏者とトランペット奏者は同一であったのではないかという音楽歴史学者の説に沿うものでもあります。どちらかの楽器に特化したのはその後の時代であったのでしょう。ピエール=イヴはハンドストップ奏法は使っていませんが、これもバッハより後世に開発された演奏法と考えられているからです。
もう一点触れておきたいのは、ジャン=フランソワ・マドゥフがトランペットで使用するマウスピースは非常にカップの大きいということです。このCDのジャケットを飾るのは名手ヴァレンタイン・スノウがトランペットを演奏する様子を描いた美しい肖像画(1715年ジョン・ハリス作、ロンドン、フェントン・ハウス所蔵)ですが、この絵においてもマウスピースは今のどの基準に照らし合わせてみても非常に大きく描かれており、これはマドゥフのマウスピースの大きさに対する考え方と一致しています。
もしこのCDをお聴きになる方が、筆者と同じように、若い時にこれらの曲をモダンで聴いて育った経験を持っているのであれば、このCDはある種の挑戦状ということになるでしょう。マドゥフ兄弟、シギスバルト・クイケンとラ・プティット・バンドが自信を持って突きつけてきた挑戦状です。私はこれを広いこころ(耳)でお聴きになることをお奨めします。そうすればこの類いまれなCDがテレマンの素晴らしい音世界につながる新しい(ある意味では古い)聴き方へ導いているということが分かるでしょう。
お奨め度: 特選盤
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