ナチュラルトランペットをオケで使ってみよう!(その5)
5. いざ実践!
5. いざ実践!
4. 楽器の入手
さて、実際に使ってみようと思い立ってみたものの、最初に困るのがどうやって楽器を入手するかである。日本にはナチュラル/バロックトランペットを製作している工房はないし、輸入品にしても取り扱っている大手の楽器店はないのが現状だ。幸い、いくつかの代理店が取り扱いをしているので、そこへ連絡するか、あるいは欧州の工房に直接連絡して注文するということになる。在庫がないこともよくあることなので、その場合は出来上がるまで数ヶ月待つということになるかもしれない。インターネットを利用して中古品を探すのも待ち時間が少ないという面ではいいだろう。
3. レパートリーについて
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注)レオノーレ序曲3番を除き、全て2管編成。(すなわち同じ調の管が2本必要となる) レオノーレ序曲はC管が2本、B管はバンダ用で1本のみ必要。
このリストから分かるとおり、C管とD管があれば古典派のかなりのレパートリーをカバーすることができる。C/D以外の管が必要なのは以下の曲ということになる。
・Es管が必要な曲
これら出番の少ない替え管をあらかじめ用意するのは大変なので、モダン楽器との併用も一つの案かもしれない。例えばベートーヴェンの第九やモーツァルトのレクイエムにはB管が必要だが、その出番は少ない(第九は第3楽章および第4楽章のマーチの部分のみ、モツレクはベネディクトゥスの1曲のみ)し、B管はそもそも管の長さが長くて演奏しづらいということもあるので、大半の部分のD管はナチュラル/バロックで演奏し、B管の部分のみモダン楽器を使うという選択も大いにあり得るだろう。
また、この三人以外にも、同時期の作曲家の作品であればナチュラルトランペットで演奏することがもちろん可能だ。シューベルトもその一人だが、未完成ではE管、グレイトではA管を必要とする。また、先に挙げたメンデルスゾーンやシューマンでも曲によっては可能だ(例としてはメンデルスゾーンの交響曲1番やフィンガルの洞窟、シューマンの交響曲2番などがある)。それからロマン派以降の曲でもワーグナーのリエンツィ序曲、マイスタージンガー序曲の3番トランペット、ヴォーン・ウィリアムズの交響曲3番2楽章のバンダソロ(Es管)などはナチュラルトランペットで演奏可能だ。
2. 楽器について
まず、楽器の呼び方について混乱を避けるために、ナチュラルトランペットとバロックトランペットとは何かを明確にしておこう。
永らくバーゼル・スコラ・カントールムのトランペット科教授だったエドワード・タール氏の提唱している定義に従うと、ナチュラルトランペットとは、トランペットのもっとも原始的な形、すなわち真鍮でできた1本の長い管のみの楽器をさす。つまりバルブや指穴などによって音程を変化させる機能をもたない楽器のことだ。広義には古代エジプトから近代の軍隊で使われる信号ラッパまで含めることができるが、この稿では17世紀、18世紀に使われていたのと同じ楽器ということにしておこう。ナチュラルトランペットはバロック時代には片手のみ(通常は右手)で持って演奏されていた。
一方、バロックトランペットとは、20世紀に入って古楽器による演奏が復興してきたときに、ナチュラルトランペットの奏法上の困難を軽減するためにナチュラルトランペットに指穴をあけたもの、つまり後世になって開発された楽器のことをいう。楽器の形状や管長は同じなのだが、管に小さな孔をあけてそれを開閉することにより、音程の修正をしやすくしたり演奏上の安全性を高めたりすることができるようにしてあるものだ。孔の数はモデルにより違いがあり、1つのものと3つのもの、4つのもの、の3タイプが開発されている。演奏するときには左手で楽器本体を持ち、孔を開閉するために右手を使う。孔を開けると振動数が変わる(倍音列が変わる)ので、ナチュラルトランペットに比べると音によっては音色が一定しないのが欠点とも言える。
現代のオーケストラではこのバロックトランペットが使われることが多い。それは奏法上の理由だと思う。つまり、楽器の管長が長くて高次倍音を使うため音を外しやすいという難点を避けるために、指穴を利用して安全性を高めた方がいいという判断だ。実際のところ、今は1つ孔の楽器はほとんど利用されておらず、3つ孔のタイプがドイツを中心としたヨーロッパ全域で、4つ孔のタイプがイギリス、イタリア、オーストリアなどで使われている。
現在楽器を製造しているメーカーにおいても、ナチュラルトランペットしか作っていないところもあるが、たいていは3つ孔、あるいは4つ孔のバロックトランペットも製作している。どちらを選ぶかと言えば、歴史的に正統なナチュラルの音の響きや演奏スタイルの格好良さも捨て難いが、モダンの楽器から移行するにはバロックトランペットのほうが適しているのではないかと思う。穴の数は3でも4でも音色的には大差ないので、操作性重視(3つ孔のほうがコンパクト)か、スタイル重視(4つ孔のほうがオリジナルに近い)かで選ぶと良いだろう。
楽器の調性については、バロックの時代には通常は本体をD管に作っておき、C管にするときにはクルークと呼ばれる延長管をつけることによって全音下げていた。つまり、楽器としては本体1本プラス付属品1つで2つの調性に対応できるわけだ。古典派の時代になると、もっといろんな調に対応する必要がでてきたので、ナチュラルトランペットも本体を短めに作り(例えばF管)、Es、D、C、Bなどのクルークをそれにつけてそれぞれの調にする方法がとられていた。
今回のこの文章、分量もあって長いので数回に分けて掲載することにした。
1. 新しい潮流
この数十年間における古楽の演奏活動の広がりにはめざましいものがある。レパートリーの広がり、曲の新しい解釈、当時の時代の楽器を復元してその時代に則した演奏法を発見したり開発したり、などなど。また、古楽を専門に演奏する団体もたくさん創設され、日本でもバッハ・コレギウム・ジャパンやオーケストラ・リベラ・クラシカ、東京モーツァルト・プレイヤーズなどが、古楽器を使った専門団体として演奏会やレコーディングで積極的に活動しているのはみなさんご存知の通り。
ところが、最近では古楽器オーケストラでなくても、ベートーヴェンやモーツァルトなどの古典派のレパートリーでは、トランペットとティンパニについては古楽器を使用する団体が増えている。一番先行していた例は2006年、パーヴォ・ヤルヴィと初来日したドイツ・カンマーフィルハーモニーのベートーヴェンの交響曲チクルスだった。このオーケストラはすべての交響曲をナチュラルトランペットとバロックティンパニで演奏して、その新鮮な演奏に一層のインパクトを加えていた。その後、来日したヨーロッパのオーケストラでは、イギリスのフィルハーモニア管やスイスのチーリッヒ・トーンハレ管などもそうだし、在日オケでも山形交響楽団や東京交響楽団が活用している。こうした団体が着実に増えて来ているのには単なる物珍しさだけではなく、必然的な理由があるものと思われる。
僕が思うに、その理由の第一はやはり音色だと思う。それは楽器の構造に起因している。ナチュラルトランペットは音を変えるためのバルブを持たないので自然倍音しか出せない。それをカバーするために管の長さをある程度長くして高次倍音を使うことによって出せる音を多くしたのだ。(むしろ話の順序は逆で、バルブが発明されたから時代とともにトランペットの長さが短くなったというのが本来の流れなのだが)。したがって現代のトランペットと昔のトランペットとでは管の長さが違う。ナチュラルトランペットのC管を例にとると、その管長は8フィート(約2.4m)で、現在のトランペットの約2倍の長さがある。ほとんどトロンボーンと同じ長さと言っていい。管が長い分、その音は倍音を多く含む澄んだ音色なので、モダンの楽器よりも弦楽器や木管楽器と溶け合いやすいという利点がある。例えてみれば、ピッコロトランペットと普通のトランペットの音色の違いを想像してみると分かりやすいかもしれない。
第2の理由は、古典派においては曲の調性がはっきり決まっているので、その調に合った楽器で演奏すると和声がきちんとハモるという点だ。さらに第3の理由として、ナチュラルトランペットはモダンと比べて管の直径も細くベルも小振りなので、中規模のオーケストラで普通の音量で吹いても音が大きすぎず、バランスを取りやすいという利点もある。
ナチュラルトランペットについての話(まずはここから)
ナチュラルトランペットの曲紹介
(バロック時代のトランペットの黄金期の遺産)
ナチュラルトランペットに関する参考文献の紹介
読み物など
浜松の友人宅に泊まらせてもらって、今日は高塚より先へ3人で進む。どこまで足を伸ばせるやら。