ナチュラルトランペットをオケで使ってみよう!(その5)
5. いざ実践!
楽器が手に入ったら、とりあえず吹いてみて楽器に慣れよう。練習にあたって念頭に置いておきたいことは、ナチュラル/バロックトランペットは管の長さが違い、身体とマウスピースと楽器の関係がモダン楽器とは全く異なるから、いい音を出すためにはモダン楽器とは違うバランスが必要とされるということである。これは実際に吹いてみて徐々に体得するしかないと思う。
ナチュラルを最初に手にした人が陥りがちなのは、モダンと同じ感覚で吹いてしまい、つい強奏になってしまうことだ。決して楽器をコントロール(制覇)しようと無理をしないように。自然といい音になるにはどの程度の息づかいでどこを狙って吹いたらいいかの按配を楽器と一緒に探って行くのが良いだろう。また音程のツボもモダンとは異なるので、自然倍音の音程に慣れるのにも時間が必要だと思う。もとより難しいパッセージを吹ける楽器ではないので、基本に忠実にロングトーンやフレキシブルスタディを続けると、楽器の方からこう吹くのがいいよと教えてくれるようになる。
さて、楽器も手に入って楽器にもマウスピースにも慣れてきたら、いよいよオーケストラの中で使ってみよう。この際に強調したいのは、繰り返しになるが、モダン楽器と同じ感覚で吹かないことだ。周りの音量に影響されることと、楽器のベルが遠くて自分の音が聴こえづらいことから、オケの中に入るとついついオーバーブロウになってしまいがちだ。音も乱暴になり、せっかくナチュラルを導入した意味そのものがなくなってしまう。むしろ自分の音が木管楽器や弦楽器とどのようにブレンドしているかを確認することを優先し、慣れてきてから音量を上げるのがいいだろう。
・身内にファンを増やそう
ここから先は友人の協力が必要になる。古典派の曲は2管編成が基本だということは前に述べた。つまり一人だけ楽器を替えてもあまり意味はないのだ。トランペットを古楽器に替える際には、パートごと(つまり二人とも)古楽器にする必要がある。モダン楽器と古楽器を一緒に鳴らしても効果はないどころか、音色も音量もアンバランスになって逆効果だ。更にもし可能であれば、上述したオーケストラが皆そうしているように、ティンパニもバロックティンパニを使ってもらうのがベストだろう。古典派の曲においてはトランペットとティンパニは一緒にリズムやアクセントを刻むことが多く、ほとんどセットと言ってもいいくらいなので、この2パートの音色が変わるだけでオケに対するインパクトは大きいものがあるはずだ。
実際にオケで使ってみると、他のパートのメンバーも、最初は物珍しさがあるだろうが、ナチュラル/バロック本来の音が鳴っていればその良さにきっと気づいてくれて、むしろその方がいいと思ってくれるはず。さらにもっと重要なのは、指揮者の理解を得ることだろう。ひょっとするとこれが一番最初に必要かもしれない。もし指揮者が味方になりナチュラル/バロックトランペット使用の支援者になってくれるとありがたい。そうなればきっとドイツ・カンマーフィルや山形交響楽団に続くムーブメントとなり、古典派には古典派にふさわしい楽器を使うことが当たり前のことになっていくのではないかと僕は確信している。
<この稿終了>
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