ナチュラルトランペットをオケで使ってみよう!(その1)
今回のこの文章、分量もあって長いので数回に分けて掲載することにした。
1. 新しい潮流
この数十年間における古楽の演奏活動の広がりにはめざましいものがある。レパートリーの広がり、曲の新しい解釈、当時の時代の楽器を復元してその時代に則した演奏法を発見したり開発したり、などなど。また、古楽を専門に演奏する団体もたくさん創設され、日本でもバッハ・コレギウム・ジャパンやオーケストラ・リベラ・クラシカ、東京モーツァルト・プレイヤーズなどが、古楽器を使った専門団体として演奏会やレコーディングで積極的に活動しているのはみなさんご存知の通り。
ところが、最近では古楽器オーケストラでなくても、ベートーヴェンやモーツァルトなどの古典派のレパートリーでは、トランペットとティンパニについては古楽器を使用する団体が増えている。一番先行していた例は2006年、パーヴォ・ヤルヴィと初来日したドイツ・カンマーフィルハーモニーのベートーヴェンの交響曲チクルスだった。このオーケストラはすべての交響曲をナチュラルトランペットとバロックティンパニで演奏して、その新鮮な演奏に一層のインパクトを加えていた。その後、来日したヨーロッパのオーケストラでは、イギリスのフィルハーモニア管やスイスのチーリッヒ・トーンハレ管などもそうだし、在日オケでも山形交響楽団や東京交響楽団が活用している。こうした団体が着実に増えて来ているのには単なる物珍しさだけではなく、必然的な理由があるものと思われる。
僕が思うに、その理由の第一はやはり音色だと思う。それは楽器の構造に起因している。ナチュラルトランペットは音を変えるためのバルブを持たないので自然倍音しか出せない。それをカバーするために管の長さをある程度長くして高次倍音を使うことによって出せる音を多くしたのだ。(むしろ話の順序は逆で、バルブが発明されたから時代とともにトランペットの長さが短くなったというのが本来の流れなのだが)。したがって現代のトランペットと昔のトランペットとでは管の長さが違う。ナチュラルトランペットのC管を例にとると、その管長は8フィート(約2.4m)で、現在のトランペットの約2倍の長さがある。ほとんどトロンボーンと同じ長さと言っていい。管が長い分、その音は倍音を多く含む澄んだ音色なので、モダンの楽器よりも弦楽器や木管楽器と溶け合いやすいという利点がある。例えてみれば、ピッコロトランペットと普通のトランペットの音色の違いを想像してみると分かりやすいかもしれない。
第2の理由は、古典派においては曲の調性がはっきり決まっているので、その調に合った楽器で演奏すると和声がきちんとハモるという点だ。さらに第3の理由として、ナチュラルトランペットはモダンと比べて管の直径も細くベルも小振りなので、中規模のオーケストラで普通の音量で吹いても音が大きすぎず、バランスを取りやすいという利点もある。
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