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2019年2月

2019/02/27

近況報告(その2)

 シンガポールの案件より前のことになるが、定年退職してから本格的にやろうと考えていたのは音楽書籍の翻訳だ。特に金管楽器関係の本でまだ翻訳書が出ていない外国の良い本を訳して日本に紹介したいと考えていた。

 まずは自分に翻訳の力をつけることが先だと思い、青山にある翻訳学校、フェローアカデミーに通うこととした。
 大学卒業以来の学校通いは新鮮な気分でいいものだ。専門学校というところは目的がはっきりしているし、講師も第一線のプロだし、受講生の意識も高くて参加していて充実感がある。フェローが提供する講座のうち、まずは初級講座を半年くらいで終了し、その後通信講座も含めると、一年半ほどかけて中級の実務翻訳、出版翻訳、ビジネス・自己啓発書翻訳などの講座を受講した。英文法も学び直し(特に駿台の故伊藤和夫先生の「英文解釈教室」にはお世話になった)、それまで我流でやっていた翻訳が多少はマシになったのではないかと思う。
 シンガポールの話が来たのはそれらがちょうど終了した頃だった。

 訳したい本はいろいろあるのだが、まずは出版社に受けてもらわないと話にならない。今はシノプシス(本の概略をまとめ、試訳をつけたもの)を作って企画を出版社に持ち込む一方、これはという本を訳す作業を日々コツコツと行っている。まだ単行本としては成約に至っていないが、つい先日、某雑誌が僕の訳した文章を載せてくれるという話がまとまった。発行されるのが楽しみだ。出版翻訳も引き続き地道に努力していこう。

== 近況報告(その3)に続く ==

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2019/02/25

近況報告(その1)

 先月末で63歳になった。あっというまに年月は過ぎていき、その間身辺もずいぶん変化していくものだ。60歳で会社を定年退職してから、それこそ1年先は闇という感じで過ごしてきたが、だいぶ環境も気持ちも落ち着いてきたので、とりあえずまとめて近況報告しようかなと。

 一昨年の夏のこと、昔勤めていた会社の同僚からの紹介で、とあるヘッジファンドで働くこととなった。昔取った杵柄で職務は株のトレーディング。その会社は東京とシンガポールにオフィスがあって、申請中の一任勘定のライセンスが取れるまではトレードはシンガポールからせざるを得ないという事情だそうだ。前の会社を辞めて一年半、ぱたっと収入がなくなって気分的にも不安定だったし、なんだか自分が無価値になったような気もして、少し悶々としていた時に転がり込んできた話。金融関係はもういいかと思っていたのだが、せっかくのお誘いだし、しばらくの間ならシンガポール勤務できますよ、と彼の地に向かったのがおととしの9月だった。

 それまでシンガポールは出張で何度か行っていたけれども住むのは初めて。海外勤務も久々に携わるトレーディングもヘッジファンドという業界も刺激的で面白かったが、勤めている間にオーナーと意見の食い違いが広がってきたのは想定外だった。ちょっと不愉快なことが重なるにつれ、長く続けるべきではないなと判断し、退社して帰国したのが昨年の6月、わずか9ヶ月間の勤務だった。

 小さなヘッジファンドに勤めたのは業界を知る意味でも、いろんな会社があるんだなと知れた意味でもいい体験だった。成績も良く成長性もある会社だったし、自分の経験を活かして給料がもらえるというありがたい環境ではあったのだが、今では早めに抜けて正解だったと思っている。

== 近況報告(その2)に続く ==

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2019/02/20

フンメルのコンチェルト新譜

Cherubini_a  Cherubini_b

昨日CDショップを物色していたらこのCDに出会った。

Cherubini in Wien  "ウィーンのケルビーニ"

指揮:Martin Skamletz
演奏:Concerto Stella Matutina
ソロ:Herbert Walser-Breuß (Keyed Trumpet)

ケルビーニはイタリア人だけれどパリで成功して活躍した作曲家。ケルビーニのオペラはウィーンでも大人気で、1805年からしばらくはウィーンに逗留していたそうだ。このCDはケルビーニの作品、並びにそれを題材にしてウィーンでアレンジされた作品たちが収められていて、収録された曲のほとんどは世界初録音らしい。初録音でないのはフンメルのトランペットコンチェルトのみ。だがそれもキイ・トランペットでの演奏ということでかなりマニアックなレコーディングだと言える。

フンメルのコンチェルトの第3楽章はケルビーニのオペラ「二日間」の第二幕終曲のパロディだということは有名で、僕のコンサートやブログでも申し上げてきたことだ。僕はフンメルが勝手にパクったのかと思っていたのだが、このCDの解説を読むと、この曲を使うようにと時のマリア・テレジアが指示したのだそうだ。初耳。CD全体に流れるテーマなのだが、ナポレオンのウィーン攻略目前の政治的に不穏なウィーンで、このケルビーニの音楽が果たした役割というのが浮き彫りになっていてとても興味深かった。

演奏に当たっているコンチェルト・ステラ・マトゥティナは気鋭の若手たちによって2005年に設立されたオーストリアのアンサンブルで、メンバーの多くはコンチェントゥス・ムジクスとかイングリッシュ・コンソートなど様々な団体で活躍しているとのこと。スイス国境に近いVorarlbergが本拠地。よく知られた名曲の他に、知られざるレパートリーの発掘にも積極的で、このCDもその一環だし、ディスコグラフィを見てもその意欲的なことがうかがわれる。

肝心のフンメルの演奏だが、まず最初に感じたのが、キイ・トランペットの音色の独特さ。なんだかジャズのトランペットのようにハスキーな音色なのだ。最初は違和感があったけれど、慣れてくるとそれはそれで(キイを開けた音と閉じた音の)音色の統一性が取れていて良いのかなとも思えてきた。それからアーティキュレーションだが、八分音符の羅列などところどころアクセントが明確でスタッカート気味。これも従来のクラシカルの演奏とちょっと一線を画した解釈だなと思った。

僕の個人的な関心事でもある、譜面上の波線の処理については案外に平凡で、キイを使ったトリルで済ませている。それにこのCDのテーマにもなっているケルビーニのパロディである3楽章は、他の人たちのフンメルの演奏と同じで、早いテンポを採用している。この3楽章はソリストのヴィルティオジティを示すのではなく、もっと洒脱な雰囲気を出すべきで、そのためにはあまり早すぎないほうがいいと僕は思うのだ。それが証拠に、このコンチェルトの前後に引用されているケルビーニのオペラバージョンやウィーンの他の作曲家によるパロディにおいても、この部分のテンポはもっと遅いのである。細かい検証の上に制作されたであろうアルバムであるがゆえに、この点はちょっと納得がいかないのであった。

ソリストはオーストリア出身のヘルベルト・ヴァルザー=ブロイス。このアンサンブルを始めたメンバーでもあり、ウィーン・コンチェントゥス・ムジクスなどで演奏する他、ジャズも活発に演奏しているそうだ。使用しているキイ・トランペットは1823年のAlois Doke をモデルとしてエッガーが制作したもの。

フンメルのキイ・トランペットでの演奏は僕の所持するCDではフリードリッヒ、スティール=パーキンス、カッソーネに次いで4枚目となる。演奏の巧さではやっぱりフリードリッヒが一つ頭抜けているかなあ。

アンサンブルのHPからリンクしたこのCDの紹介ページはこちらです。演奏も一部聴くことができます。

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