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2019/02/20

フンメルのコンチェルト新譜

Cherubini_a  Cherubini_b

昨日CDショップを物色していたらこのCDに出会った。

Cherubini in Wien  "ウィーンのケルビーニ"

指揮:Martin Skamletz
演奏:Concerto Stella Matutina
ソロ:Herbert Walser-Breuß (Keyed Trumpet)

ケルビーニはイタリア人だけれどパリで成功して活躍した作曲家。ケルビーニのオペラはウィーンでも大人気で、1805年からしばらくはウィーンに逗留していたそうだ。このCDはケルビーニの作品、並びにそれを題材にしてウィーンでアレンジされた作品たちが収められていて、収録された曲のほとんどは世界初録音らしい。初録音でないのはフンメルのトランペットコンチェルトのみ。だがそれもキイ・トランペットでの演奏ということでかなりマニアックなレコーディングだと言える。

フンメルのコンチェルトの第3楽章はケルビーニのオペラ「二日間」の第二幕終曲のパロディだということは有名で、僕のコンサートやブログでも申し上げてきたことだ。僕はフンメルが勝手にパクったのかと思っていたのだが、このCDの解説を読むと、この曲を使うようにと時のマリア・テレジアが指示したのだそうだ。初耳。CD全体に流れるテーマなのだが、ナポレオンのウィーン攻略目前の政治的に不穏なウィーンで、このケルビーニの音楽が果たした役割というのが浮き彫りになっていてとても興味深かった。

演奏に当たっているコンチェルト・ステラ・マトゥティナは気鋭の若手たちによって2005年に設立されたオーストリアのアンサンブルで、メンバーの多くはコンチェントゥス・ムジクスとかイングリッシュ・コンソートなど様々な団体で活躍しているとのこと。スイス国境に近いVorarlbergが本拠地。よく知られた名曲の他に、知られざるレパートリーの発掘にも積極的で、このCDもその一環だし、ディスコグラフィを見てもその意欲的なことがうかがわれる。

肝心のフンメルの演奏だが、まず最初に感じたのが、キイ・トランペットの音色の独特さ。なんだかジャズのトランペットのようにハスキーな音色なのだ。最初は違和感があったけれど、慣れてくるとそれはそれで(キイを開けた音と閉じた音の)音色の統一性が取れていて良いのかなとも思えてきた。それからアーティキュレーションだが、八分音符の羅列などところどころアクセントが明確でスタッカート気味。これも従来のクラシカルの演奏とちょっと一線を画した解釈だなと思った。

僕の個人的な関心事でもある、譜面上の波線の処理については案外に平凡で、キイを使ったトリルで済ませている。それにこのCDのテーマにもなっているケルビーニのパロディである3楽章は、他の人たちのフンメルの演奏と同じで、早いテンポを採用している。この3楽章はソリストのヴィルティオジティを示すのではなく、もっと洒脱な雰囲気を出すべきで、そのためにはあまり早すぎないほうがいいと僕は思うのだ。それが証拠に、このコンチェルトの前後に引用されているケルビーニのオペラバージョンやウィーンの他の作曲家によるパロディにおいても、この部分のテンポはもっと遅いのである。細かい検証の上に制作されたであろうアルバムであるがゆえに、この点はちょっと納得がいかないのであった。

ソリストはオーストリア出身のヘルベルト・ヴァルザー=ブロイス。このアンサンブルを始めたメンバーでもあり、ウィーン・コンチェントゥス・ムジクスなどで演奏する他、ジャズも活発に演奏しているそうだ。使用しているキイ・トランペットは1823年のAlois Doke をモデルとしてエッガーが制作したもの。

フンメルのキイ・トランペットでの演奏は僕の所持するCDではフリードリッヒ、スティール=パーキンス、カッソーネに次いで4枚目となる。演奏の巧さではやっぱりフリードリッヒが一つ頭抜けているかなあ。

アンサンブルのHPからリンクしたこのCDの紹介ページはこちらです。演奏も一部聴くことができます。

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