Trumpets in Museum (Basel: Historisches Museum, Musikmuseum)
この夏参加しているワークショップのプログラムの一環としてバーゼルの歴史博物館(音楽博物館)を訪問した。博物館は古楽の教育および研究に多大な貢献をしているバーゼル・スコラ・カントールムのキャンパスの近くにある。
これはスコラの門。博物館はここから歩いて2分ほどだ。
ここに来るのは12年ぶり2回目、カウンターで入館料8フラン(団体割引料金)を支払って中に入る。
展示室は広い空間ではなく、テーマごとに細かく仕切られている。最初の部屋(Ceremonial Music)にさっそくトランペットがあった。
ナチュラルトランペットが盛んに作られたのは17世紀後半からで、ニュルンベルクのマイスターたちによるものが世界を独占していたのだが、この博物館にはそれより以前の16世紀末にバーゼルで作られた楽器が2本、かなり良い状態のまま保管されてある。
Jacob Steiger, Basel 1578
2本の楽器が別々のところに展示されていたので少々分かりづらいが、左2つの写真の楽器、および右2つの写真の番号2の楽器がどちらも1578年シュタイガー製の楽器だ。
3階に上がるともっと多くのナチュラルトランペットに会える。部屋のテーマはその名もTympani and Trumpets。どの部屋も入り口が狭くて、なぜなんだろうと思っていたが、ここは昔監獄だった建物を再利用したもので、各展示室は独房をリフォームしたものなんだそうだ。なるほどと納得がいく。完全にモダンで清潔だから今や全くその面影はない。
では個別に見てみよう。
ナチュラルトランペットではハースが7本も揃っている!
No.3 Wolf Wilhelm Haas D管, Nürnberg, 18c前半
No.4 Wolf Wilhelm Haas C管, Nürnberg, 18c前半
No.5 Wolf Wilhelm Haas D管, Nürnberg, 18c前半
No.8 Johann Wilhelm Haas D管, Nürnberg, 1700頃
No.9 Johann Wilhelm Haas D管, Nürnberg, 1700頃
上: Johann Wilhelm Haas Es管, Nürnberg, 1714
下: Johann Wilhelm Haas F管, Nürnberg, 1700頃
Timpani: 製作者不詳, ドイツ製, 18c
ハースと並ぶもう一つの有名工房、エーエの楽器は2本あった。
No.10 Friedrich Ehe Es管, Nürnberg, 1738
No.11 Johann Leonhard III Ehe D管, Nürnberg, 18c中旬
それではその他の製作者の楽器も見てみよう
No.3 Sebastian II Hainlein Es管, Nürnberg, 1657
No.1 Hieronimus Starck C管, Nürnberg, 1672
No.2 Johann Jacob Schmidt D管, Nürnberg, 18c前半
No.7 Hieronimus Starck Es管, Nürnberg, 1693
No.15 Abraham and Paul Blanvalet Es管, Berlin, 1721
No.16 & No.17 J. Philipp Schöller Es管, München, 1757
No.19 Johann Joseph Schmied D管, Pfaffendorf, 1788
No.20 Friedrich Wilhelm Jacobi Es管, Dresden, 1797
この15番の楽器はベルリン製だがボールなどのスタイルはイギリスのナチュラルトランペットに近い。
こちらは純正のイギリスもの
No.1 William Shaw Es管, London, 1814
イギリスものと言えば、イギリス式スライドトランペット(ピンボケになってしまったが)
Slide Trumpet F管, John II Köhler, 19c後半
19世紀になるとナチュラルトランペットも巻きが変わって全体にコンパクトとなり、インベンショントランペットと呼ばれるようになってきた。メーカーももはやニュルンベルクではなく各地に分散している。
No.6 Inventionstrompete G管, Denis Antoine Courtois, Paris, 19c半ば
No.7 Inventionstrompete G管, Ferdinand Hell, Wien, 19c半ば
No.8 Inventionstrompete F管, Michael Saurle, München, 19c前半
No.9 Stopf-Inventionstrompete G管, Christian Hirsbrunner, Sumiswald, 19c初頭
そしてキイ・トランペットも2つあった。どちらも5つキイのもの
No.12 Klappentrompete G管, Franz Stöhr, Prag, 19c第2四半期
No.13 Klappentrompete G管, Alois Doke, Linz, 1825頃
ナチュラルもインベンションも、D管より短いEsやF, Gの調の楽器が多いことに改めて気づく。元々のピッチの高さが不明ということもあるが、本体は高めの調で作っておき、あとはクルークで調整する方が汎用性があったのだろう。
他にもたくさんの楽器があり、時間を忘れて見入ってしまう。
No.22 コイル状の楽器はいわゆるオリジナル楽器ではなく、1963年にHelmut FinkeとOtto Steinkopfが考案・製作したvent hole付きの楽器だ。ブランデンブルグ協奏曲第2番の復元演奏をした時のもの。
僕のようなナチュラルトランペット吹きにとっては垂涎のコレクションの博物館だ。再訪するまでこんなにハースの楽器があるとの認識もなく、きっと前に来た時はぼんやりとしてたんだねえ。
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