ロマン派のレパートリーについて(その1 バルブシステムについて)
クラシックのレパートリーにおいて、どこまでナチュラルトランペットが使われていたか(あるいはどこまでナチュラルで演奏可能か)を調べると、一番悩ましいのが古典派からロマン派への過渡期、すなわち19世紀前半の曲ということになる。アプローチの方法としては2つ考えられる。つまり、1つは楽器自体の改良や変化(発展という言葉は敢えて使わないことにしよう)から見る方法、もう1つはスコアに書かれた楽器の使用法から見る方法だ。最終的にはその2つを合体させて判断することになるんだろうとは思うけれど。
まずは楽器の変化について
トランペットで自然倍音以外の音を出そうという試みにはいくつかのアプローチがあった。初期のものとしてはホルンと同様のストップ奏法によるもの、ばね仕掛けのスライドを取り付けて音を下げるもの、それから楽器に穴を開けてキイを取り付けたキイ・トランペット。しかし、ストップ奏法とスライドトランペットは半音階を全て演奏することはできなかったし、キイ・トランペットは半音階こそ出せたものの音色などの問題から広く普及するに至らなかった。結局のところ、オケで満足にメロディーを吹けるようになるためには、現在使われているピストンやロータリーなどのバルブシステムの出現を待つしかなかったのである。では、それらはいつ発明されたのか、代表的なタイプ5つとその構造を以下に示す。(年号と名前はそのパテントを取得した年と人名、国名)
1.のシュトルツェル・バルブは短命に終わって普及はしなかったが初期のコルネットに多く採用されたタイプだ。2.のロータリー・バルブと3.のウィンナー・バルブは現在も使われているが、ウィンナータイプは今ウィンナホルンに残るのみとなっている。4.のディスクバルブはシュトルツェルと同じく広まらずに廃れてしまった。そして5.のペリネ・バルブが現代で最も使われているピストン式のおなじみのバルブである。
別の記録ではシュトルツェル・バルブを使った最初のコルネット(Cornopean)が売り出されたのが1825年頃、そして1827年にはパリのオペラで初めてバルブトランペットが使われたという記録もある。
さて、本稿のタイトルを「ロマン派のレパートリーについて」としたのだが、そもそも以上のようなことを調べようと思ったのは、たまたまメンデルスゾーンの曲を見て疑問が膨らんできたからなのだった。というわけで、今度はメンデルスゾーンがトランペットをどう扱ったかを見ることにしよう。(以下その2に続く)
Elisa Koehler; Fanfares and Finesse
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