John Miller によるPJBEの記事
アメリカからヒストリック・ブラス・ソサイエティの会報の最新版が届いた(Histric Brass Society Journal 2019 volume 31)
中にフィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル(PJBE)についての記事がある。
John Miller
The Philip Jones Brass Ensemble, 1951-1986 (p51-p76)
筆者のジョン・ミラーは英国のトランペット奏者。1972年から1980年までPJBEのメンバーで、また同時に1994年までフィルハーモニア管にも在籍していた。僕の個人的好みではPJBEのラッパパートのベストはこの時代のメンバーで、PJの他はマイケル・レアード、ピーター・リーヴ、ジョン・ミラーもしくはエルガー・ハワースっていうラインアップなので、名前を聞くだけでも懐かしい。
PJBEについて書かれた本だと "The Odyssey of the Philip Jones Brass Ensemble"(Donna McDonald, Editions Bim 1986)に、PJBEの歴史やレパートリー、活動実績などがまとめてあり、豊富かつ詳細なデータと共に一望することができるが、これはPJの友人とはいえジャーナリストがPJBEの外側から取材して書いた本。それに対してこのミラーの文章は団の内部からのレポートなので、どんな秘められた話が出てくるのかな、と期待しつつ読み進む。
ところがそうした僕の思惑はどうやら外れだったみたいで、週刊誌的なネタ本(失礼)というよりは、PJBEを取り巻いていたブラス界の歴史について記載されている面が多かった。具体的には、PJBEが創設される前のいわゆるブラスアンサンブルの創成期の状況(英国ばかりではなく米国も)や、団結成後にPJBEが開拓したレパートリーの内容やその方向性、BBCを中心とする放送局や各種音楽祭との関わりなど、先にあげたマクドナルドの本では得られなかった情報がたくさんあって、これはこれでとてもありがたい資料ではあった。ちょっと自分の好奇心が満たされる、という感じではなかったけれど。
読んでいるうちに、なぜに今頃こんな記事を寄稿したのかな、とふと疑問に思ったが、会報と一緒に同封されていたシンポジウムの案内でその謎が解けた。
というのも、HBSは今年の4/17にNYで British-American crosscurrents over the Atlantic というテーマでシンポジウムを企画しているらしく、そのイベントのゲストプレーヤーとして The Wallace Collection を招致しているのだ。ミラーはJohn Wallaceとともにこのグループを立ち上げた創設メンバーでもあるので、きっとそのイベントでなんらかのプレゼンをするために資料をまとめたのではないだろうか。そう思うと記事の内容も腑に落ちる。
このシンポジウムそのものも興味深い内容ではあるのだが、今のこの状況だとキャンセルということになるのだろう。と思ってHBSのホームページを見たら、2021年の5月に延期とあった。やっぱり。
| 固定リンク
「トランペットの話題」カテゴリの記事
- ブラスアンサンブル編曲(ダウランド)(2020.04.23)
- 高音攻略法(2023.07.25)
- ナチュラルトランペットのウォームアップ(動画紹介)(2022.10.22)
- 思いつき話(2022.08.18)
- ラッパ購入遍歴(その2)(2022.06.30)
コメント