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2020年5月

2020/05/25

ロマン派の曲はどこまでナチュラルトランペットで吹けるか(「ロマン派のレパートリーについて」目次)

11回に分けて表題の目的でロマン派の曲について調べたのでここに目次を作っておこう。

その1 バルブシステムについて
その2 メンデルスゾーン
その3 シューベルト
その4 シューマン
その5 カール・マリア・フォン・ウェーバー
その6 ロッシーニ
その7 ショパン
その8 グリンカ
その9 ベルリオーズ
その10 ビゼー
その11 ワーグナーその他
おまけ クラシカルトランペットを手に入れるには

こうやってそれぞれの曲を調べてみると、次のような共通点があることがわかった。

① 曲により(曲中でも)多様な調が出てくる(A/B/H/C/D/Es/E/F/G)
② 音域は決まっていて譜面上は難しくはない(第3倍音から第12倍音まで)
③ 音程上不安定な音(第11倍音のファや第7倍音のシ♭)、たまに自然倍音以外の音がある(ミ♭やラ)

当たり前といえば当たり前なのだが、こうした点を鑑みるにつけ、つくづくその時代のトランペットが一番ふさわしいんだなと思った。つまり、ロマン派に適した楽器とは、①の転調にはクルークの付け外しで簡単に調を替えることができ、③の音程にはチューニング部分を伸ばして音を少し下げることができる、いわゆるインベンションタイプのナチュラルトランペットが万能だということだ。もちろんこれらの諸点は古典派のレパートリーにも当てはまるが、ロマン派になると曲中の転調が多くなるため、クルークでの機敏な対応がより重要になってくるのだ。

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  画像:インベンショントランペット(1830年頃の楽器のコピー、マルケス・ラケ作、筆者所有)

 

(以上でこの稿終わりです)

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ロマン派のレパートリー(その11 最終回 ワーグナーほか)

さて、ナチュラルトランペットで吹けるロマン派のレパートリー、もうほとんどカバーしてしまったので今回で最終回。

ワーグナーの曲ではトランペットが大活躍するが、あまり有名ではない初期作品ではナチュラルトランペットが使われている。

Richard Wagner(1813-1883)

・演奏会用序曲 WWV20(1831)2 Trombe (D)
・大演奏会用序曲 WWV27(1832)2 Trombe (C)
・交響曲ハ長調 WWV29(1832)2 Trombe (C/F)
  何を勘違いしたのか、1楽章に1ヶ所だけラのオクターブが出てくるが、それ以外は全て自然倍音

・歌劇「妖精」WWV32(1833)2 Trombe (E/C/Es/B/D/F/A)
  なぜか2幕のフィナーレで1ヶ所だけ1st Trp in D にミ♭あり(ホルンと同じ音)

・序曲「クリストフ=コロンブス」WWV37(1835)2 Trp (Es), 2 (D/Es), 2 (C/Es)
  1st Trpと5th Trpにシの音がかなりの頻度で出てくる(メロディの一部)
  この曲のラッパの扱い方は巧みだ。曲の途中でトランペット主体のファンファーレの部分があるのだが、数小節単位でコードが変わっていくところを2本ずつの異なる調の楽器でリレーしながらカバーしている。苦肉の策とも言えるが。
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1段目:Trombe 1,2 in Es、 2段目:Trombe 3,4 in D、3段目:Trombe 5,6 in C

・序曲「ポーランド」WWV39(1836)2 Trombe piston (F), 2 Trombe (C)
  この曲からバルブトランペットを使用。しかものっけからソロありだし、全曲にわたって旋律をバリバリ吹いて大活躍する。ワーグナーはトランペットの音をイメージしていたのに、それまでは制約があって使うに使えなかったということか。完全に呪縛から解き放たれた感じ。

・序曲「ルール・ブリタニア」WWV42(1837)2 Trombe なんとか(D), 2 Trombe ordini (D)
  Trombe ordini は通常のナチュラルトランペットということだろう。Trombe なんとかは Trombe e seiaveのようにも読めるのだが対応するイタリア語が見当たらない。譜面から見てバルブトランペットを指定していることは間違いない。
   Rule-britannia

・歌劇「リエンツィ」WWV49(1838)2 Trombe ventile, 2 Trombe ordin.
  バルブトランペット2本とナチュラルトランペット2本の組み合わせ(序曲は4本ともD管)

このリエンツィを最後に、ワーグナーはバルブトランペットに鞍替えしている。具体的には1839年の序曲「ファウスト」、1941年作の歌劇「さまよえるオランダ人」以降の歌劇、楽劇の全てがクロマティックで書かれているのだ(マイスタージンガー序曲の3rd Trumpet in C などの例外を除く)。


そして以下の作曲家の作品はバルブトランペット想定なので一部の例外を除きナチュラルトランペットで演奏することはできない(ブラームスはよく知られているようにトランペットを古典的な書法で取り扱ったが、非自然倍音も多く、このカテゴリーに入れることにした)

・Franz Liszt(1811-1886)
・Giuseppe Verdi(1813-1901)
・César  Franck(1822-1890)
・Anton Bruckner(1824-1896)
・Johannes Brahms(1833-1897)
・Camille Saint-Saëns(1835-1921)
・Modest Petrovich Mussorgsky(1839-1881)
・Petr Ilych Tchaikovsky(1840-1893)
・Antonín Dvořák(1841-1904)

例外としては、サンサーンスの交響曲第3番オルガン(1886)がある。3管編成のトランペットは1st,2ndがクロマティックだが、3rdトランペット(C)は自然倍音のみで書かれている(2ヶ所だけ非自然倍音のシの音がある)。

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ロマン派のレパートリー(その10 ビゼー)

Georges Bizet(1838-1875)

随分後の世代になるが、同じフランス人のビゼーにもナチュラルトランペットを想定して書いた曲がある。

・交響曲第1番(1855)2 Tromba (C)(1st,2nd共に2ヶ所シの音がある)
・組曲「ローマ」(1861, 1871改訂)2 Tromba (B/C/Es/E/G)
・「アルルの女」第一組曲(1872)2 Trumpet (C/E), 2 Cornet a Pistons (A)
・序曲「祖国」(1873)2 Trompettes (G/C/A), 2 Pistons (B)

ビゼーは1860年以降もナチュラルトランペットを愛好していたと見える。序曲「祖国」における Pistonsはトランペットなのかコルネットなのかははっきりしないが、短管楽器であることは間違いないだろう。この曲のスコアには興味深いコメントがあった。曲の途中に 1st Trumpetのソロがあるのだが、そこに「オーケストラにトランペットがない場合は1st Pistonが代わりに演奏する」とあるのだ。つまりこの頃には作曲者が想定していてももうオケに長管のナチュラルトランペット吹きがいないという状況が現出していたということなのだろう。ちなみに同じ頃作曲されたオペラ「カルメン」(1873-74)はPiston2本(A/B)のみでありナチュラルは起用されていない。

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  譜例:「祖国」該当部分
     (上からTrompette in G, Trompette in C, Pistons in B, Trombones)

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2020/05/24

ロマン派のレパートリー(その9 ベルリオーズ)

次にフランスはどうか。まずはオーケストレーションの達人、ベルリオーズの音楽について見てみよう。

Hector Berlioz(1803-1869)

ベルリオーズはメンデルスゾーンやシューマンと同じく、トランペットが急激に変化する真っ最中に作曲活動をしていた。彼の作品はトランペットの扱い方という観点から時代順に3つの時期に分けられるように思う。

I. ナチュラルトランペットだけを使用(主に1820年代)

・ミサソレムニス初稿 H20A(1824)
    2 Trombe 
・主はよみがえり(ミサソレムニスの第5曲目)H20B(1825)
    2 Trombe (Es) & 2 Trombe (F) 
・カンタータ「ギリシャ革命」H21(1825-26)
    2 Trombe (A/D/C)
・ファウストの8つの情景 op.1 H33(1828-29)
    2 Trompetts (B)
・カンタータ「クレオパトラの死」H36(1829)
    2 Trombe (B/Es/E)
・序曲「リア王」op.4 H53(1831)
    2 Trombe (C)

II. ナチュラルトランペットとバルブ楽器の併用(1827-1858)

・序曲「宗教裁判官」op.3 H23D(1826-28)
    2 Trombe (E/C) & 1 Tromba à Pistons (Es)
・序曲「ウェーヴァーリ」op.2 H26(1827-28)
    1 Tromba à Pistons (D) & 2 Trombe (A)
・幻想交響曲 op.14 H48(1830)
    2 Trompettes (C/B/Es) & 1 Trompette a Pistons (Es)
    (2楽章にオブリガート Cornets à Pistons in A あり)
・レリオ op.14b H55(1831,1855改訂)
    2 Trombe (Es/E/F/D) & 2 Cornets à Pistons (B)
・交響曲「イタリアのハロルド」op.16 H68(1834)
    2 Trompettes (C) & 1 Cornets à Pistons (A/B)
    (後からcornet a pistons 1本追加)
・死者のための大ミサ op.5 H75(1837)
    12 Trombe (B/C/D/Es/E/F) & 4 Cornets à Pistons (A/B)
・歌劇「ベンヴェヌート・チェルリーニ」op.23 H76(1838)
    4 Trombe (B/C/D/Es/E/F/G) & 2 Cornets à Pistons (A/B)
・劇的交響曲「ロミオとジュリエット」op.17 H79(1839)
    2 Trombe (B/D/Es/F) & 2 Cornets à Pistons (A/B)
・葬送と勝利の交響曲 op.15 H80(1840)
    8 Trombe (B/C/F) & 4 Cornets à Pistons (B)
・序曲「ローマの謝肉祭」op.9 H95(1844)
    2 Trombe (D) & 2 Cornets à Pistons (A)
・序曲「海賊」op.21 H101(1844, 1851改訂)
    2 Trombe (C) & 2 Cornets à Pistons (B)
・ファウストの劫罰 op24 H111(1845)
    2 Trompettes (B/H/C/D/F) & 2 Cornets à Pistons (A/B)
・オラトリオ「キリストの幼時」op.25 H130(1850)
    2 Trombe (B) & 2 Cornets à Pistons (B) ほぼユニゾン
・歌劇「トロヤの人びと」H133(1858)
    2 Trombe (Es) & 2 Cornets à Pistons (B)

III. 全てバルブ楽器を使用(1860ー)

・歌劇「ベアトリスとベネディクト」H138(1860-1862)
    2 Trompettes à Cylindres (D/Es/E) & 1 Cornets à Pistons (A/B)

注)パート名については分かる限りベルリオーズの手稿譜の記載に従った。

  楽器の区分は名称及び調性から以下の通りと推察される   
  ・TrombeおよびTrompettes ナチュラルトランペット(長管)
  ・Cornets à Pistons  シュトルツェルバルブのコルネット(短管)
  ・Tromba à Pistons バルブトランペット(長管、バルブのタイプは不明)
  ・Trompettes à Cylindres ペリネバルブのトランペット(長管)

ベルリオーズは「近代の楽器法と管弦楽法 Grand traite d'instrumentation dt d'orchestration modernes」(1844, 1856改訂)を著していることからも分かる通り、多様な管楽器に詳しかったし、楽器メーカーのアドルフ・サックス(サキソフォンやサクソルンを開発)と仲が良かったので、先進的に新しい楽器をオーケストラに取り入れた作曲家である。キイ付きの金管楽器であるオフィクレイドを積極利用した反面、セルパンなど昔の楽器には冷たかったようだ(セルパンは幻想交響曲5楽章のディエスイレのおどろおどろしい場面などでは使われてはいるが、これはその音色のキャラクターを利用したのだろう)。

ベルリオーズはドイツの作曲家が見向きもしなかったバルブコルネットをいち早くメロディー楽器として使って、金管セクションのサウンドを豊かで機動性のあるものにしている。しかし一つ謎に思われるのは、1850年代までずっとナチュラルトランペットに固執しているところだ。1840年代半ばにもなればバルブトランペットがだいぶ広まっていたであろうに、ナチュラルトランペットとコルネットとの組み合わせがいいと判断したのか、それともオーケストラの奏者がなかなかナチュラルトランペットから卒業しなかったのか、あるいはもっと別の理由だったのか。このあたり、1848年頃を境にバルブトランペット一辺倒に切り替えたシューマンなどと姿勢が異なるところが面白い。

また、コルネットとトランペットを併用するアイデアは、ドイツを飛び越してチャイコフスキーやプロコフィエフなどロシアの作曲家に継承されたという点も(ロシアはフランスかぶれの面はあったにせよ)興味深いところだ。

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  画像:Cornet à Pistons in B♭(19世紀後半フランス製)
     National Music Museum, University of South Dakota のHPより転載


(追記)
タール氏の本"The Trumpet"には「フランスでは1891年までトランペット奏者はナチュラルとバルブトランペットとを持ち替えしていた」とあった(The Trumpet P106)。また、フランスの曲で最初にバルブトランペットが指定されたのは1827年6月に初演されたアンドレ・シェラード作のオペラ「マクベス」で、そのオケメンバーの中にはアーバンの先生だったデュベルネもいた(同P107)。

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2020/05/21

ロマン派のレパートリー(その8 グリンカ)

ロシアの曲にもナチュラルトランペットで吹けるものがある。

Mikhail Ivanovitch Glinka(1804-1857)

とは言ってもグリンカの曲で我々がオケで演奏することがありそうなのはルスランとリュドミラ序曲くらいだが。

・歌劇「イワン=スサーニン」序曲(1836)C
・歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲(1842)D
・スペイン序曲第1番「ホタ・アラゴネーサの主題による華麗な奇想曲」(1845)Es
・スペイン序曲第2番「マドリードの夏の一夜の思い出」(1851)F
・幻想曲「カマリンスカヤ」(1848)F

どの曲もナチュラルトランペットで演奏可能で、しかも音域も無理なく、譜ヅラも優しい(第7,11,13倍音などは全く出てこない)。特にルスランとかは鳴らしやすいD管だし、目立つ部分もあるし、吹いたらとっても気持ちが良さそうだ。

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  譜例:「ルスランとリュドミラ」序曲より 1st Trumpet in D

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2020/05/20

ロマン派のレパートリー(その7 ショパン)

Frédéric Chopin (1810-1849)

ポーランドの作曲家、ショパンのオーケストラ曲もナチュラルトランペットで演奏が可能だ。オケの曲とは言ってもピアノ協奏曲(及びピアノとオーケストラの曲)だけではあるが。

・ピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.11(1830)C/E
・ピアノ協奏曲第2番へ短調 Op.21(1829)B
・ポーランド民謡による大幻想曲イ長調 Op.13(1828)D
・ロンド「クラコーヴィヤク」へ長調 Op.14(1828)C

いずれの曲も2管編成でトランペットの譜面も古典派と同様の扱いだ。コンチェルトの1番の終楽章はE管で上のソの音(第12倍音)が頻繁に出てくるから音域的に少し高めだけれど、それ以外はいたって平凡。まあ、なんと言ってもどの曲もピアノが主役ですから。

ショパンの管弦楽曲を調べていてちょっとユニークだなと思ったのは、オーケストラの中にバストロンボーンを1本だけ入れてあるところ。これは2曲のコンチェルトもそうだし、「アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ Op.22」という曲ではホルン2本とトロンボーン1本、ティンパニという組み合わせ(トランペットは含まれていない)だった。なぜにトロンボーン1本だけ?きっと佐伯さんだったらご存知なんだろうなあ。
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  譜例:ピアノ協奏曲第2番冒頭(スコア)

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2020/05/17

ロマン派のレパートリー(その6 ロッシーニ)

このあたりでドイツ・オーストリア路線から離れて別の国の作曲家を見てみよう、と言うことでイタリアから。

Gioachino Rossini(1792-1868)

ロッシーニといえばオペラ。1810年作の「結婚手形」を手始めに40ものオペラを作曲し若くして大成功を収めた。が、早々と人生の中盤(37歳)で全てのオペラの作曲を終えている。編成は常に2本、オペラはどの曲も自然倍音で演奏できるし、使用法も常識的(音域は第3倍音から第12倍音まで。ピッチのズレやすい音の中では第7倍音がたまに出てくるだけで、第11倍音は使われていない)。

主要なオペラを作曲年順にリストアップしラッパの調性を付記したものが次の通り(本邦での演奏頻度を勘案し、セビリアの理髪師とチェネレントラ以外は序曲の調性のみを記した)

・アルジェのイタリア女(1813)C(序曲)
・セビリアの理髪師(1816)A(序曲)A/B/C/D/Es(全曲)
・チェネレントラ(1817)B/Es(序曲)A/B/C/D/Es(全曲)
・泥棒かささぎ(1817)A/E(序曲)
・セミラーミデ(1823)A(序曲)
・ランスへの旅(1825)A(序曲)
・ウィリアム・テル(1829)E(序曲)

ウィリアム・テルを最後にオペラから卒業したロッシーニはその後グルメ生活をエンジョイしていた(ステーキとフォアグラのロッシーニ風という料理は彼の名前からつけられたものだそうだ)が、その後も宗教曲などの作品が単発的に作られている。検証できる作品が多くないのが残念だが、いつからバルブトランペットに切り替わったかが大まかにわかる。かなり大まかすぎるきらいはあるが。。

⚪︎ スターバト・マーテル(1842)A/B/C/Es

この曲はオペラと同様、自然倍音のみ。まだナチュラルトランペットが主流だったのだろうか。

× 小ミサ・ソレムニス(1863) 2 Tromba  (A/C/D/E) & 2 Cornetti (A/B)

小ミサと言いながらもこの曲には4本の楽器が使われており、4つのどのパート譜も完全なクロマティックである。さすがにスターバト・マーテルから21年も経っているからバルブトランペット/コルネットが当たり前だったんだろう。面白いのは、バルブで半音階が可能なのだから、スコアにおける楽器の調性はどれか一つ(例えば全曲inCで書くとか)でも良さそうなのに、いちいち管を指定するあたり、前時代の名残のように見えてしまうところ。

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   譜例:小ミサ・ソレムニス、 7 Cum Sancto Spiritu より金管パート部分
      (上から3段目 1,2 Tromba in C, 4段目 2 Cornetti in B) 

さて、話はロッシーニに限らないが、自分がナチュラルトランペットで演奏活動を始めて痛切に感じたことの一つに、調性をより意識するようになったということがある。つまり最後のポイント(前時代の名残?)を立場を変えて考えてみると、作曲家が楽器の調性を意識していた時代のレパートリーを、我々現代の奏者が手持ちの楽器(C管にしろB管にしろ)で移調して演奏して済ませてしまう方がむしろ現代ならではの奇習というふうにも思えるのである。なぜならば、古典派ロマン派を問わずナチュラルトランペットを想定して書かれた曲では、それぞれの調でのトニック(主和音)とドミナント(属和音)を強調するためにラッパとティンパニを使っていることが多い。したがって演奏する方もそれぞれの音程や和音、キャラクターをちゃんと表現することが求められているからだ。やや我田引水になってしまうが、そのための一番の近道(むしろ本道)は、指定されたそれぞれの調の自然倍音が出せる楽器を使うということではないかと思うのだが、どうだろうか。

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2020/05/15

ロマン派のレパートリー(その5 カール・マリア・フォン・ウェーバー)

Carl Maria von Weber (1786-1826)

ウェーバーの音楽はロマン派に属するが、トランペットの使用法は完全に古典派を踏襲していて特に目新しいことは見当たらない。作品の全てがナチュラルトランペットで演奏可能だ。
トランペットの編成は2本のペア。オクターブや5度あるいはユニゾンで使われることがほとんどで、最高音は第12倍音(上のソの音)まで、第7倍音(シのフラット)も使われていない。ベートーヴェンの方がよっぽど革新的な使い方をしているくらいだ。

主な作品の作曲年および楽器の調性は下記のリストの通り。

・交響曲No.1 Op.19(1807) C
・クラリネット協奏曲No.1 Op.73(1811)F
・クラリネット協奏曲No.2 Op.74(1811)Es
・歌劇「アブ・ハッサン」J.106(1811)C(序曲のみ)
・交響曲No.2 J.51(1813)C
・祝典序曲 Op.59(1818)E
・歌劇「魔弾の射手」Op.77(1821)C/D(全曲)
・劇音楽「プレチオーザ」Op.78(1821)C(序曲のみ)
・コンチェルトシュトゥック(PfとOrch.) Op.79(1821)F/C
・歌劇「オイリアンテ」Op.81(1823)Es(序曲のみ)
・歌劇「オベロン」J.306(1826)D(序曲のみ)

プロシア(当時の首都はブレスラウ、現在のポーランド)のホルン奏者、シュトルツェルが最初にバルブを発明したのが1818年だった(こちらを参照のこと)。ウェーバーは音楽家として駆け出しの頃は同じブレスラウにいたけれども、1813年以降はプラハやドレスデンを活動の拠点としていたので、1826年に39歳の若さで亡くなるまでオーケストラで使われる楽器にも変化はなかったのだろうし、従って楽器用法も保守的だったのは当然の帰結なのだろう。

それにしても魔弾の射手のオペラ全曲がC管とD管だけで賄えるなんて、ホルンの活躍ぶりに比べるとラッパの扱いは本当に軽いもんだ。
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  譜例:歌劇「魔弾の射手」冒頭
  (上から4段目が1,2 Horn in F、5段目が3,4 Horn in C、7段目にTrombe in C となっている)

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2020/05/11

ロマン派のレパートリー(その4 シューマン)

前回からかなり期間が空いてしまった。ロマン派の3番目の作曲家としてシューマンの曲を見てみよう。

Robert Shumann(1810-1856)

まさにロマン派を代表するシューマンは、先に見たメンデルスゾーンと同じく、ちょうどトランペットが変わる過渡期に位置している。
トランペットのレパートリーとしては4つの交響曲といくつかの序曲くらいで数は限定される。早速作曲年代順にリストアップしてみた。
(表の見方:曲名/作品番号/作曲年/楽譜指定の管の調性、曲名の前の⚪︎×はナチュラルトランペットでの演奏可否)

⚪︎ 交響曲No.1 Op.38(1841)B/D
⚪︎ 序曲・スケルツォとフィナーレ Op.52(1841)E
⚪︎ 交響曲No.4 初稿 Op.120(1841)D
⚪︎ ピアノ協奏曲 Op.54(1841-1845)C/D
⚪︎ 交響曲No.2 Op.61(1845-1846)C
△ 歌劇「ゲノヴェーヴァ」 Op.81(1847-1848)C/B/D/Es/E/F
× 4本のホルンとオーケストラのためのコンチェルトシュテュック Op.86(1849)F
× マンフレッド Op.115(1848-1849)D/Es/E/F
× 交響曲No.3 Op.97(1850)Es/F
× チェロ協奏曲 Op.129(1850)F
× 序曲「メッシーナの花嫁」Op.100(1850-1851)Es
× 交響曲No.4 改訂版 Op.120(1851)F
× 序曲「ジュリアス=シーザー」Op.128(1851)F
× 序曲「ヘルマンとドロテア」 Op.136(1851)E
× 序奏とアレグロ・アパッショナート Op.92(1852)E
× ヴァイオリン協奏曲 WoO.23(1853)不明

ご覧の通り、極めて明快に境目がわかる。1848年作のゲノヴェーヴァからだ。
しかもこのオペラをより細かく見てみると、序曲こそはC管ナチュラルの自然倍音で書かれているのだが、5曲目以降から自然倍音ではない音が出てくる。曲を挙げれば、Act1 No.5 & No.7 (in E) Act2 No.12 (in Es) Act3 No.14 (in F) Act4 No.20 (in D & F) No.21 (in Es) はナチュラルトランペットでは吹けない。さて、作曲の進行はWikipediaによるとこうだ(以下Wikipedia日本版より引用)

作曲は1847年4月5日序曲の構想及びスケッチを大まかに書き上げており、5月頃には本格的に序曲のスケッチに着手する。同年の12月26日に序曲が完成し、完成後間もなく1848年1月3日に第1幕のスケッチに着手、2月4日に第2幕のスケッチがほぼ終え、3月30日に総譜を完成。第3幕は4月24日に着手したうち5月3日に終わらせ、第4幕を6月27日に終了している。全体の完成は同年の8月4日に完了したが、翌年の1849年まで細部の手直しを行う 」

この作曲経緯の通りだとすると、シューマンは1847年中まではナチュラルトランペットを想定、遅くとも1848年3月には新時代の楽器に軸足を移したということになる。僕があたったスコアは後年の出版譜なので、実際にシューマンがどのようにパート譜を書き記したのかは定かではないが、このゲノヴェーヴァより後の曲になると、自筆譜にも出版譜にもパート名に "Ventil Trompete (Valve trumpet)"と記載してあり、シューマンの場合は一度バルブ付きトランペットに移行したらもうナチュラルには戻らなかったということになる。

もう一つこのリストでわかることは、ヴァルブトランペットの場合、管長の短い楽器、すなわちF管をベースにしてそこからクルークでEs管まで延ばして使っていたらしいということだ(一部例外的にD管はあるが)。本体はD管もしくはEs管が主流で、必要に応じてB管まで延ばしていたナチュラル時代と比較すると、もうすでにこの時点でトランペットの短縮化の流れが始まっていたということになる。

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    画像:Valve Trumpet (G/F/Es/D/C/B)1830年代オーストリア製
    National Music Museum, University of South Dakota のHPより転載

余談:トランペットの話ではないが、ホルン吹きには有名な作品番号86のコンチェルトシュテュックのスコアには、4本のソロホルンに "Ventilhorn(バルブホルン)in F"、伴奏オーケストラの2本のホルンは "Waldhorn(森のホルン、すなわちナチュラルホルン)in F" と区別して指定してある。なお、トランペットも "Ventiltrompete(バルブトランペット)in F" となっている。

(蛇足)
以上のようにシューマンの場合はとても楽器の変遷がクリアなのだが、調べていてどうにも解せなかった曲が一つあった。それは1832年に1楽章のみ作曲された交響曲ト短調 WoO29(ツヴィッカウ)だ。作曲年次が早いので習作との位置づけだが、この曲に使われているトランペットはなぜか自然倍音は全く無視の自由奔放。これはどのように解釈したら良いのか全くわからなかった。誰か秘密を知っていたら教えてください。

 

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2020/05/10

2周遅れ?

CDレシーバーを買い換えてからは音が格段に良くなったこともあっていろいろ聴き倒している。

CDも同一曲の聴き比べなどしていると今までラックに眠っていた盤が久しぶりに陽の目を見たりしているし、前の記事にも書いた通りインターネットラジオを始めBluetoothなどでいろんなソースにリモートアクセスできるのも楽しい。

で、そうやって遊んでいてうかつにも今日やっと気づいたのだが、Amazon musicやNAXOS Music Libraryは、iPadやiPhoneなどのデバイスからBluetoothで飛ばさなくても、Airplayなどで直接ストリーミングができるのだ。しかもその方法だとBluetooth接続のデバイスを変えるときの煩わしさもなければ、デバイスが受け取る雑音とか電波障害とかもなくなる。音質も文句なし。CDレシーバーのフロントパネルに演奏中の曲目も表示されるし、便利で快適なことこの上ない。

というわけで、NAXOSではクラシックの、Amazonではジャズやポップス系の、というふうにジャンルの棲み分けをして、聴きたい曲やアルバムのプレイリストを作っては聴いて楽しんでいるという次第。Amazonの方は既存のTPOに応じたプレイリストがあるからそれも重宝している。

この2つのサブスクリプションさえしていれば音源には困らない。悲しいかなCDコレクション。

タワレコオンラインを物色したり、ディスクユニオンに立ち寄ったり、という行為は今後不要のものとなってしまった(予約してたエベーヌQのベートーヴェンとアルバンベルクQの全集がもうすぐ配送されるけど、これで打ち止めだね)。

こういうサブスクの音楽生活って、今はもう常識なの?
単に自分がトラック2周分くらい遅れていたことに今まで気がついてなかっただけなのか?

(余談)
手元に持っているCDはNAXOSのプレイリストには入れないことにしている。ささやかな抵抗というか、意地を張っているというか、なんか悔しいじゃんね。

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2020/05/08

CDその242 LIGHT DIVINE / Baroque music for treble and ensemble

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カテゴリ: Omnibus

タイトル: LIGHT DIVINE / Baroque music for treble and ensemble

演奏団体: The MIN Ensemble

Trumpet: Mark Bennett
                Simon Munday
共 演 : Aksel Rykkvin (Boy soprano)

収録曲目: Concerto in F, HWV331 (George Frideric Handel)
               Eternal Source of Light Divine, HWV74 (G.F.Handel)
               Alla caccia, HWV79 (G.F.Handel)
               Vien con nuova orribil guerra, from La Statira (Tomaso Albinoni)
               Ciaccona a7 (Philipp Jakob Rittler)
               Chaconne, from Les Indes galantes (Jean-Philippe Rameau)

録音年月: 2017.7, Barum (Norway)
レーベル: Signum Classics SIGCD526

お勧め度:推薦盤

NAXOS Music Library はこちら
Tower Record はこちら
HMV はこちら

コメント:前半にヘンデルのソプラノとトランペットの曲、後半にラモーのオケとソプラノの曲をまとめ、その間にアルビノーニとリットラーのトランペットが活躍する曲を挟むという構成。変化があって聴いていて飽きないし、このオケが基本モダン楽器だというのに完全にバロック奏法を手中にしていて心底びっくりしてしまった。4トラック目のヘンデルのWhat passion cannot music raise and quell, HWV76においては独奏チェロがほとんどヴィオラ・ダ・ガンバに聴こえる。どんな弓技だろうか。The MIN Ensembleはヴィオラ奏者のラザール・ミレティッチが率いるノルウェーの団体で、古楽から現代音楽までレパートリーは幅広い。このCDではマーク・ベネットのディレクション(編曲も含む)で企画・制作されているので、マークがHIPをみっちり鍛え上げたか、あるいはノルウェー人たちの飲み込みが早いのか、ともあれ全く違和感がない。

目玉のソリスト、アクセル・リクヴィンは2003年ノルウェー生まれだから今年で17歳。12歳からメジャーデビューしているが成長過程にあるからきっと声のコントロールも難しい時期だろう。ボーイソプラノよりは声量もあり声に張りがあって、かつ透明度はそのまま。メリスマの音程なども正確でめちゃうまい。このままソプラニスタになるのだろうか、それともカウンターテナーに落ち着くのか。もちろんベネットのトランペットの音との相性もすごく良い。

マーク・ベネットは4穴のバロックトランペットを使用。マウスピースはイギリス人には珍しく(と言っては失礼か)サイズの大きいバロックのタイプを使っている。そのおかげか高音域まで輝かしい音色だし、テクニックも鮮やかで、とても好感が持てる。細かなことを言えばちょっと自分に合わないなと思ったのは一部のアーティキュレーション(1トラック目の冒頭の跳躍とか)くらいかな。ともあれ、演奏の内容といい、プログラミングの配慮の良さといい、先月紹介したアリソン・バルサムのよりは数段いいんじゃないかというのが個人的な感想だ。

マークは今はオスロに住んでいるということもあって、アクセルやノルウェーの団体との共演も多いようだ。
YouTubeに二人の動画があったので2つほど上げておこう。

Let the bright Seraphim (Handel)

Ven con nuova orribil guerra (Albinoni)

ライブで顕著だけど、マークは演奏に遊びを入れるのが好きだね(英語だと頭痛が痛いになっちゃうww、play in play)

ついでに蛇足ながら、マークは自転車に乗るのも好きです :)

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2020/05/07

いいこともある

Facebookを見てたらフリーデマン・インマー氏が「オンラインレッスン始めます」って告知していて、うわっ、すごい時代になったなと思った。移動もせずに世界一流のプレーヤーのレッスンが受けられるなんて夢のような話で、ひと昔前の自分だったら飛びついただろう。今はそういう気概はないけれど。

こういうことがラッパの世界だけでなくいろんな分野で起こり始めているとしたら思わぬ恩恵だね。

(追記)
しかもそういうニュースを本人告知の24時間以内に手に入れられるってのもすごいな、と後から思った。

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2020/05/06

「超過死亡」

昔、相場のテクニカル分析に凝っていた時期があった。
その時に勉強していた本に「どんなに精緻なシステムを構築しても、投入するデータにごみが入っていたら出てくる結果もごみでしかない」という意味合いの文章があった。当たり前のことだが、モデルがワークするかの方に気をとられて肝腎の元データのチェックがおろそかになったりするのはよくあることだ。

このブログで度々引き合いに出しているCOVID-19の各国の数値、3/11から毎日せっせとつけていたけれど、そろそろやめることにした。もう大体の傾向はわかったということが主たる理由だけれど、それに加えてそもそもこの数字は正しいの?という疑問が拭えないことがあったからというのもある。感染者数についてはそもそも正確に把握できないだろうから参考程度と思ってはいたものの、それ以外の数値、例えば回復者の数についてもイギリスやオランダが極端に少なかったり、ブラジルで短期間にそんなに増えるわけないだろうという数字だったり。無論、ジョンズ・ホプキンス大の数字がおかしいわけではなく、その情報ソースとしている大元の報告の集計方法が違ったり信頼性のばらつきがあったりしているのだ。それはしょうがない。それでもさすがに死亡者数については誤謬が少ない(少なくとも先進国においては)のではないかと思っていた。

が、FTの記事によると、新コロナウイルスによる推定死亡者数は実際の報告より60%多いのではないかと。「超過死亡」という観点から割り出した数字で、これはかなり真実に迫っているのではないだろうか。

それで冒頭の本のことを思い出したというわけだ。ごみというのは言い過ぎにしても、別に精緻なシステムで研究をしているわけでもないしね。

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2020/05/05

COVID-19について(その6)

JSatoさんのNotesを引き続き拝見している。

米国では多くの死亡者が出ているが、4月末現在で米国在住の日本人の死者はたったの1名なんだそうだ。

JSatoさんが5/4付で引用しているたけぴさんのブログ
この人、ソフトウェアエンジニアが本職で医学や免疫学の専門家じゃないらしいけど、BCG仮説の検証がすごい。

これだけの社会的事件だからいろんな説が出回るのは当たり前だし、TVを筆頭に玉石混交の適当な話にさらされてしまうから、信頼できる筋(WHOやCDC、厚労省などの公的機関)の情報だけを信頼する姿勢が大事ということはわかっているつもりだ。だがマスコミ報道をみている限りBCG仮説はあまり取り上げられているようには思えない。

いわゆる専門家の方々ももうちょっと本腰を入れて検証したらどうなのかしらん。JSatoさんがコメントしている「製薬会社がBCGワクチンに興味がないのは利益マージンが低いから」というのが本当だとしたらとても残念なことだ。

(5月6日追記)
HLA仮説という別の意見があった。素人の悲しさ、これも信憑性がありそうに見えてしまう。

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2020/05/03

CDプレーヤー新調

リビングのステレオコンポのCDプレーヤーを買い換えた。
あ、最近はCDプレーヤーとは言わないようで、ネットワークCDレシーバーと言うらしい。メーカーはマランツ
ネットワークレシーバーと称するだけあって、インターネットラジオとかBluetoothを介しての受信とかCDをかけるだけではないいろんな機能が付いている。世界中のラジオ局の放送が聞けて楽しい。

以前のコンポはKenwoodのもの(これとてコスパはすごく良かった)に途中でスピーカーだけYamahaにアップグレードしてあったのだが、今回の組み合わせでハイレゾも聴ける体制となった。とは言っても音源はまだないし、あまりそこにこだわっていた訳でもない。

システムを替えてみて一番変わったのはピアノの音。生ピアノにグッと近づいた気がする。普段あまりピアノのCDは聴かないのだが、いろんなピアニストの音を聴き比べてはその美しさにうっとりしている。弦楽四重奏も悪くない。臨場感が変わって緊密なアンサンブルに引き込まれる。一方、フルオーケストラのCDになると、前よりは充実したものの解像度という点ではまだごちゃっとしているところがあって、やっぱり大スピーカーやハイエンドのシステムには敵わないのかなと思ってみたり。ま、そこまで金かけるつもりもないし、とりあえず今回の組み合わせで大満足ではある。

それにしても、コストパフォーマンスという観点からすると、このCDプレーヤーとスピーカー合わせても大した金額ではないのに、すごく立派な音がするもんだ。どうしても過去の経験と比べてしまうけれど、社会人なりたての数十年前、趣味としてオーディオを揃えるっていうのが当たり前に流行っていた時は、プリメインアンプにスピーカー、ターンテーブルとカートリッジ、チューナーとカセットデッキなど、一通り揃えるのにそれこそ初任給の何カ月分かを費やしたりしていた。加えて値の張る(嵩張りもする)LPレコードへの支出。無駄打ちはできなかったからレコ芸とかも読むし、時間があれば秋葉原の石丸電気に出かけて海外盤を漁るのがストレス解消でもあった。音源には餓えていたからFMfanなどの雑誌で番組表を調べながらどうやったらカセットテープ(もはや化石)に無駄なくエアチェック(死語)することができるか頭を悩ませたり。

時は過ぎて今や音源は劣化しないCDだし、それもかつての名盤がBOXセットであっと驚くような値段で手に入る(ネットで購入するから出かけることもなし)。それどころか、そもそも音源を手元に持たなくてもAmazon musicやNaxosライブラリーに月々定額を払えば一生かかっても聴ききれないほどの大量のコンテンツにアクセスできる。

こうやって比較すると、考えようによってはコレクターとしての楽しみの諸要素が奪われてしまっているのかも(つまり、探さない、所有しない、集めない、時間もかけないようになった)。真剣味が減ったぶん、聴き方も「鑑賞」から「消費」に変化してきてしまっている。便利になったことには間違いないのだが、それに比例して楽しみが増えたかというとそうでもないのが現実だ。

ともあれ、コロナ禍でStay Homeの日々、家でたっぷり音楽を楽しむ時間があることに感謝しよう。

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