高金利通貨に投資をするのは果たして賢明なんだろうか。
今でこそ低金利になってしまったが、かっては米ドルは高金利通貨だった。どのくらい高かったかというと、レーガン大統領時代、85年2月に米国財務省が発行した超長期30年国債の利回りは11.25%!今のデフレの時代から見るととんでもない高金利だ。このとき米国債を買っていたらさぞかし有利な運用だったに違いない。
ちょっと検証してみよう。
例えばこの国債に日本円から投資をしたとして、為替の変動も含めて今までどの程度の収益があがったか、ざっくり計算してみる。
1985年2月のドル円の為替レートは220円。1万ドル米国債を買ったら支払う金額は220万円である。毎年受け取る11.25%の利子はそのときどきの為替レートで円に交換するとする。もし今投資したものを回収しようとして米国債を売却し現在の為替レート90円で円に戻し、今まで受け取った利子と合算すると(ー細かい計算は省略するがー)合計金額は459万円。単純に見れば2倍以上になっているが、24年間という投資期間を考えて年平均で見ると単純利回りは4.53%ということになる。(利息には税金がかかるので正確にはこの利率ではない)
一方同じお金を日本の国債に投資していたとしたら収益はどうだっただろうか?85年当時、日本国債の一番期限の長い物は10年国債で利率は6.1%。満期が来る1995年にまた10年国債を買ったとしてその時の利率が4.4%。さらに2005年に買い替えをしたとしてその時の利率は1.5%。当初投下資金を同じ220万円とすると現時点での元本と受取利息の合計は464.2万円になる。年平均の利回りは4.625%という計算だ。(同じく利息には税金がかかる)
つまり、高金利(11.25%)の米国の債券に24年間も投資したのに、その結果は為替レートの変動のせいで思うような高利回りではなかった(4.53%)のに対し、低金利であった日本国債のつなぎ投資をしたほうが有利だった(4.625%)ということだ。
もちろんいつ投資するかというタイミングの問題も大きい。1985年と言えば9月にプラザ合意という為替相場にとっては20年に一度というような大イベントがあって、それまで240円だった為替レートが数ヶ月で一挙に120円と半値になった年だ。上記のシュミレーションもプラザ合意のあとに投資をしたと仮定すれば全く違った結果が得られる。
一般的には高金利通貨に投資をするならば為替リスクを相殺するためにある程度長めに持たなければならないというのが基本だ。あるいは為替レートが有利な状況になったら一旦回収して利益を確定するというやり方もある。しかしながら肝心な点は、どんなイベントや市場変動が将来待ち構えているのか誰にも予測できないということだ。
実は1985年2月というのは僕がD証券に転職した月だ。当時の米債30年指標銘柄としてこの11.25%2015年2月15日満期の債券は盛んに取引をしていた懐かしい銘柄でもある。よもやその債券が償還になろうかという頃まで売った買ったの仕事をしていようとは自分でも全く予測はつかなかった。
この20年間の為替変動があらかじめ予測できてれば今頃は大金持ちになって南の島でのんびりしてるか、フランスのシャトーでおいしいワインと料理に舌鼓を打っているに違いないのだが。