カテゴリー「Natural/Baroque Trumpet CD review」の264件の記事

2020/05/08

CDその242 LIGHT DIVINE / Baroque music for treble and ensemble

Cd242a Cd242b

カテゴリ: Omnibus

タイトル: LIGHT DIVINE / Baroque music for treble and ensemble

演奏団体: The MIN Ensemble

Trumpet: Mark Bennett
                Simon Munday
共 演 : Aksel Rykkvin (Boy soprano)

収録曲目: Concerto in F, HWV331 (George Frideric Handel)
               Eternal Source of Light Divine, HWV74 (G.F.Handel)
               Alla caccia, HWV79 (G.F.Handel)
               Vien con nuova orribil guerra, from La Statira (Tomaso Albinoni)
               Ciaccona a7 (Philipp Jakob Rittler)
               Chaconne, from Les Indes galantes (Jean-Philippe Rameau)

録音年月: 2017.7, Barum (Norway)
レーベル: Signum Classics SIGCD526

お勧め度:推薦盤

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コメント:前半にヘンデルのソプラノとトランペットの曲、後半にラモーのオケとソプラノの曲をまとめ、その間にアルビノーニとリットラーのトランペットが活躍する曲を挟むという構成。変化があって聴いていて飽きないし、このオケが基本モダン楽器だというのに完全にバロック奏法を手中にしていて心底びっくりしてしまった。4トラック目のヘンデルのWhat passion cannot music raise and quell, HWV76においては独奏チェロがほとんどヴィオラ・ダ・ガンバに聴こえる。どんな弓技だろうか。The MIN Ensembleはヴィオラ奏者のラザール・ミレティッチが率いるノルウェーの団体で、古楽から現代音楽までレパートリーは幅広い。このCDではマーク・ベネットのディレクション(編曲も含む)で企画・制作されているので、マークがHIPをみっちり鍛え上げたか、あるいはノルウェー人たちの飲み込みが早いのか、ともあれ全く違和感がない。

目玉のソリスト、アクセル・リクヴィンは2003年ノルウェー生まれだから今年で17歳。12歳からメジャーデビューしているが成長過程にあるからきっと声のコントロールも難しい時期だろう。ボーイソプラノよりは声量もあり声に張りがあって、かつ透明度はそのまま。メリスマの音程なども正確でめちゃうまい。このままソプラニスタになるのだろうか、それともカウンターテナーに落ち着くのか。もちろんベネットのトランペットの音との相性もすごく良い。

マーク・ベネットは4穴のバロックトランペットを使用。マウスピースはイギリス人には珍しく(と言っては失礼か)サイズの大きいバロックのタイプを使っている。そのおかげか高音域まで輝かしい音色だし、テクニックも鮮やかで、とても好感が持てる。細かなことを言えばちょっと自分に合わないなと思ったのは一部のアーティキュレーション(1トラック目の冒頭の跳躍とか)くらいかな。ともあれ、演奏の内容といい、プログラミングの配慮の良さといい、先月紹介したアリソン・バルサムのよりは数段いいんじゃないかというのが個人的な感想だ。

マークは今はオスロに住んでいるということもあって、アクセルやノルウェーの団体との共演も多いようだ。
YouTubeに二人の動画があったので2つほど上げておこう。

Let the bright Seraphim (Handel)

Ven con nuova orribil guerra (Albinoni)

ライブで顕著だけど、マークは演奏に遊びを入れるのが好きだね(英語だと頭痛が痛いになっちゃうww、play in play)

ついでに蛇足ながら、マークは自転車に乗るのも好きです :)

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2020/04/30

CDその241 Handel / Messiah (Le Concert Spirituel)

Niquet-messiah-cd 

 

カテゴリ: English Music

 

タイトル: Handel / Messiah

 

演奏団体: Hervé Niquet / Le Concert Spirituel

Trumpet: Jean-François Madeuf

      Jérome Prince

共 演 : Andreas Wolf (Bass-Baritone)

 

収録曲目: Glory to God

      Hallelujah!

      The trumpet shall sound

      Worthy is the Lamb...Amen

 

録音年月: 2016.12, Notre-Dame (Paris)

レーベル: ALPHA 362

 

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コメント:メサイアは1742年に初演されてからすぐ人気となったので、いろんな機会に再演されることがあり、ヘンデルはその都度その環境(主にはソリストや合唱の技量による)に合わせて手を加えていたがために多くのバージョンが残されている。巷でよく演奏されるのは1750年版だが、ここでは珍しく1754年の捨子養育院版が採用されている。このバージョンだと、我々ラッパ吹きにとってショックなことに、第3部のアリア「トランペット・シャル・サウンド」の中間部及びダカーポの部分がカットされており、聴かせどころのオブリガートがあっという間に終わってしまう。でもアリアのオブリガートそのものが他のパートに移されたモーツァルト版に比べればまだマシか


さて、このCDに収められているのは、エルヴェ・ニケ/コンセール・スピリチュアルの2016年末のライブ演奏。ニケの棒はどの曲においても超快速だ。そして解釈もユニーク。ニケ自身、ライナーノートでこの曲は芝居やバレエこそ付いていないが立派なオペラで、ドラマティックな演奏を目指したと書いている。ニケの解釈で他の演奏との違いが一番鮮明なのは、
ハレルヤコーラスで「ハレルヤ!ハレルヤ!」と2回続くところの2回目をエコーに(弱く演奏する)していることだろうか。また、終曲の終わりコードに入る前に盛大なティンパニソロを入れているのは、最初は度肝を抜かれたが聞き慣れると爽快だ。トランペットに関して言うと、ライブなだけに「神様もやはり人の子であったか」とちょっと安心する場面もあった。

自分にとってメサイアの決定版はやはりドルチ/アンサンブル・フィオリータが不動かな。

 

Niquet-messiah-dvd

さて、こちらはほぼ同じメンバーによるDVD版のメサイアである。

 

演奏団体: Hervé Niquet / Le Concert Spirituel

Trumpet: Jean-François Madeuf

      Jean-Charles Denis

共 演 : Božidar Smiljanič (Bass-Baritone)

 

録音年月: 2018.12, Château de Versailles (France)

レーベル: Château de Versailles Spectacles CVS013

 

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上記CDより2年後のライブ映像。場所はヴェルサイユ宮殿内の王室礼拝堂、内部装飾がきらびやかだ。

ニケは採用している版も演奏解釈もCDとほぼ同じだが、映像が付いているので見ていて楽しい。
中でも、映像監督のお気に入りなのか、ファゴットのジェレミー・パパセルジョが頻繁にアップになるのが個人的には嬉しい。CDの時はうっかり聞き逃していたが、ジェレミーは曲によってセルパンに持ち替えて吹いているではないの!ちゃんと聴いてみると、確かにファゴットとセルパンとでは通底のテクスチャーが微妙に違う。面白い!
トランペットは録音のせいか、オフ気味で僕としてはやや欲求不満。これまたよく見るとバイオリンとの間に透明の防音材が立ててある。大オーケストラでマーラーやチャイコフスキーをやるんじゃないんだし、これは誰のリクエストだったんだろうか。

 

あ、こちらに丸ごと動画がありました。(Trumpet shall sound のアリアは 1:40:28 から)

 

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2020/04/17

CDその240 Alison Balsom Royal Fireworks / Balsom Ensemble

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カテゴリ: Trumpet Ensemble

タイトル: Alison Balsom Royal Fireworks

演奏団体: Balsom Ensemble

Trumpet: Alison Balsom               
               David Blackadder
               Wolfgang Gaisböck
               Franz Landinger
               Adam Wright
               Adrian Woodward
Timpani : Robert Howes

収録曲目: Music for the Royal Fireworks HWV351 (George Frideric Handel)
               Sonata in D Z850 (Henry Purcell)
               Jesu bleibet meine Freude from BWV147 (Johann Sebastian Bach)
               Trumpet Concerto in D (Georg Philipp Telemann)
               Suite aus dem Weihnachts-Oratorium BWV248 (J.S.Bach)
               Music for the Funeral of Queen Mary II (H.Purcell)

録音年月:2019.8 Hampstead, London (UK)
レーベル: Warner Classics 0190295370060

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コメント:前回のクリスマスアルバムから3年、人気のアリソン・バルサムの新譜である。トランペットアンサンブルの曲がタイトルの王宮の花火のほかバッハとパーセルで都合4曲、バルサムのソロの曲がパーセルのソナタとテレマンのコンチェルトの2曲収録されている。

まずソロの曲から見てみよう。テレマンのコンチェルトは僕がエクルンドのCDを聴いてノックアウトされ、自分もバロックトランペットに挑戦するきっかけとなった曲だ。バルサムは無難に上手い。そこでふと思った。もし僕が最初にこれに出会っていたらやっぱりエクルンドの時と同じようなショックを受けただろうか。多分そうかもしれない。でも、残念ながらこの数年の間に耳が肥えてしまったのか、上手なトランペット吹きもずいぶんと増えたし、マドゥフのように純正ナチュラルの演奏まで知ってしまった今となっては、特別な演奏にはもはや聞こえてこない。試しに初心に返ってエクルンドの演奏と聴き比べをして見た。うーむ、やっぱり全然違う。エクルンドの演奏の方が断然光っている。思うに、彼女の演奏には残念な点が主に2つあって、一つは高音時の音の伸びやかさが足りないこと。これは相変わらずモダンのマウスピースを使っていることに起因していると思う。もう一つはアレグロ楽章で明白だけれど、テンポの取り方がオンビートでノリが悪いことだ。鮮やかに吹いているようでいても聴いている方は切迫感があって窮屈な感じがしてしまう。

アンサンブル曲はどうだろう。ヘンデルのトランペットアンサンブルバージョンと言えばベルリンの連中のCDが楽しくて良かった。あっちは水上の音楽で王宮の花火は入ってなかったけれど、これも聴き比べをしてみよう。バルサムアンサンブルではオケのオーボエパートやフルートパート(バッハのクリスマスオラトリオなど)をトランペットに吹かせるようなアレンジになっているのだが、これがアンサンブルというよりもちょっとアクロバット的に過ぎてちょっと行き過ぎのように感じる。その点アンサンブルベルリンのアレンジは2つのトランペットコアーを対比させつつ、両翼で装飾などを競い合う作りになっていて、あくまでも自分の嗜好の問題ではあるが、こちらの方が好ましい。ついでに言うと、バルサム盤ではバッハのカンタータ147番からの有名な「主よ、人の望みの喜びよ」のコラールも入っているのだが、本来四部合唱のコラールの部分をトランペットアンサンブルにアレンジしている。ところが、ナチュラルの倍音の制約を少なくするために曲のピッチを4度上げにすることでその問題解決を図っている。ピッチが4度も上がるともはや同じ曲には聴こえないのだが、これはアリなのだろうか。せっかくこのアルバムにはボーカルアンサンブルも参加している(ただし演奏は1曲のみ)のだし、このコラールといい、同じくバッハのクリスマスオラトリオといい、歌手を起用してもいいんじゃないかと僕は思うのだが(例えばクイケン/ラ・プティット・バンドの同曲は各声部一人でレコーディングされている)。というか、そもそもクリオラは器楽曲じゃないんだし。

毎回、彼女のCDが出るたびに、いろいろと腑に落ちないところがあってモヤモヤとしてしまう。

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2020/04/07

CDその239 G.P.Telemann / Per Tromba & Corno da Caccia

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カテゴリ: German Trumpet Music

タイトル: Georg Philipp Telemann / Per Tromba & Corno da Caccia

演奏団体: Ensemble Eolus

Trumpet: Jean-François Madeuf                
Horn :      Jean-François Madeuf
               Pierre-Yves Madeuf

収録曲目: Suite in F major for 2Hr, 2Ob & Bassoon (G.P.Telemann)
               Menuet for 2Hr (G.P.Telemann)
               Suite in Eb major for Trp, 2Ob & Bassoon (Anonymous)
               Concerto in Eb major for 2Hr, Bassoon (Maximilian Fiedler)
               Concerto in D major for Trp, 2Ob & B.C. (G.P.Telemann)
               Air de trompette in C for Trp & B.C. (G.P.Telemann)
               March in F major for 2Hr, 3Ob, Bassoon & Drum (G.P.Telemann)

録音年月:2018.6 eglise Notre-Dame (France)
レーベル: Ricercar RIC 397

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コメント:演奏しているアンサンブル・アイオロスはジャン=フランソワ・マドゥフが主宰するアンサンブルで、その名前は神話の風の神(ギリシャ語でAeolus)に由来している通り、管楽器wind instrumentのみで構成されている。多分このCDがこのアンサンブルとしては最初のアルバムではないだろうか。
金管楽器はマドゥフ兄弟、木管楽器は僕の大好きなドゥース・メモワールのメンバー。腕達者なオールフレンチによる愉悦に富む洒落のきいた演奏を楽しむことができる。とりわけ耳を持っていかれるのがジェレミー・パパセルジョのバスーン。ファゴット吹きの人は絶対聴いた方がいいと思うよ。

マドゥフ氏の使用しているトランペットは、Eb管とD管ではハースのオリジナル、C管ではエーエのオリジナル楽器だ。そしてホルンについては19世紀ウィーンの楽器をグレアム・ニコルソンが復元したものを使っているようだ。トランペットでの聴きどころはやはりテレマンの2本のオーボエとのコンチェルト。トランペットもオーボエもそしてバスーンも、軽やかに歌うように音楽していて、当然強弱や発想記号など何も書いてない譜面からどうやってあれだけの豊かなニュアンスを引き出すことに成功しているのか、グーの音も出ないくらい圧倒される。アンサンブルしていても楽しいだろうねえ。

お勧め:特選盤

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2020/03/23

CDその238 J.M.Molter / Concertos for Trumpets & Horns

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カテゴリ: German Trumpet Music

タイトル: Johann Melchior Molter / Concertos for Trumpets & Horns

演奏団体: Daniela Dolci / Musica Fiorita

Trumpet: Jean-François Madeuf
                Henry Moderlak
                Tomohiro Sugimura
Horn :      Jean-François Madeuf
               Olivier Picon
Timpani: Hiram Santos

収録曲目: Sonata grossa in D major for 3 Trumpets
      Concerto no.1 in D major for Trumpet
      Sinfonia in D major for 2 Horns
      Divertimento in F for 2 Chalumeau & 2 Horns
      Tendrement in C for 2 Chalumeau & 2 Horns
                 Concerto no.3 in D major for 2 Trumpets

録音年月:2016.10 Basel (Switzerland)
レーベル: Accent ACC24327

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コメント: ヨハン・メルヒオール・モルター(1696-1765)はバッハにゆかりのあるアイゼナッハに生まれ、主にカールスルーエで宮廷音楽家として活躍した。当初はあまり音楽的環境に恵まれていなかったが、1747年にパトロンが変わってからは経済的にも安定し優れた楽団を雇うことができて、自在に作曲活動に打ち込むことが可能となった。オーケストラは各楽器の名手で構成され、その中にはトランペットのフリードリッヒ・プファイファーもいた。モルターの作品にはコンチェルトが数多くあり、中でもトランペットコンチェルトが難曲揃いであるのはそうした背景があったからだ。

技巧的かつスタミナを要するモルターのコンチェルトは、その難度ゆえにレコーディングされる機会が少ない。僕の手元にあるバロックトランペットの演奏もエクルンドプランケットのCDがあるのみだ。しかも穴なしのナチュラルでの演奏となると、このマドゥフのアルバムが初出だろう。氏はなおかつこの録音をヨハン・ウィルヘルム・ハース作(18世紀、ニュルンベルク)のオリジナル楽器で演奏している(2nd, 3rdトランペットは同じハースモデルをマルクス・ラケが複製したもの)。これぞ正統派18世紀の響き、と言ったところであろうか。

余談だが、このハース作のオリジナル楽器は前にマドゥフ氏が来日した時にちょっとだけ吹かせてもらったことがある。写真を添付しておこう。

With-haas-original

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2020/03/17

CDその237 Handel / Ode for St. Cecilia's Day

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カテゴリ: English Trumpet Music

タイトル: George Frideric Handel / Ode for St. Cecilia's Day

演奏団体: Daniela Dolci / Musica Fiorita

Trumpet: Jean-François Madeuf
                Henry Moderlak
Timpani: Hiram Santos

収録曲目: Ode for St. Cecilia's Day (G.F. Handel)
      track 10. Aria & Chorus "The trumpet's loud clangour"
      track 11. March
      track 17. Solo & Chorus "As from the power of sacred lays"

録音年月:2016.11 Basel (Switzerland)
レーベル: Pan Classics PC 10382

コメント: 聖チェチーリアの祝日のためのオード(ヘンデル作品番号76)は、その名の通り聖人チェチーリアの日(11月22日)を祝うための祝祭曲で、 1739年の9月に作曲され(ヘンデルは9日で書き上げたらしい)、同年の11月22日にリンカーンズ・イン・フィールズ劇場で作曲者の指揮により初演され大成功を収めたそうだ。

ドルチ率いるムジカ・フィオリータはこじんまりとした編成で、カップリングされているコンチェルト・グロッソ(これも同日のコンサートで演奏された曲だ)とともに軽快なアンサンブルを聴かせてくれる。13曲からなるこのオードの中でトランペットは6曲目のテナーのアリア、7曲目のマーチ、そして終曲の合唱曲に起用されている。ラッパ吹きの自分にとって聴きどころだったのは、補正孔なしの純粋なナチュラルトランペットを駆使するマドゥフ氏の音色に聞き惚れてしまうのはいつもの通りだったのだが、それに加えて第11倍音(ファ)の音程コントロールの見事さ。同じ旋律をヴァイオリンやオーボエがユニゾンで演奏している中にトランペットのその音が(多分微妙に音程高めだとは思うのだが)綺麗に溶け込んでいるのが素晴らしい。もう一つは終曲の小節数で言えば59小節目、それまでのソプラノソロに先導されてトランペットの1番がファンファーレを奏で、追っかけて2番トランペットがティンパニと共にいかにもプリンシパル的な信号を鳴らして煽ってくるところ、ここがゾクゾクして萌え部分だった。

お薦め度:推薦盤

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2020/03/16

CDその236 J.S.Bach / Christomas Oratorio BWV248 (Musica Fiorita)

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カテゴリ: J.S.Bach

タイトル: Johann Sebastian Bach / Weihnachtsoratorium BWV 248

演奏団体: Daniela Dolci / Musica Fiorita

Trumpet: Jean-François Madeuf
                Henry Moderlak
                Julian Zimmermann
Timpani: Hiram Santos
Horn:     Jean-François Madeuf
               Oliver Picon

収録曲目: Weihnachtsoraorium BWV 248 (J.S.Bach)

録音年月:2017.12 Basel (Switzerland)
レーベル: Pan Classics PC 10393

マドゥフ氏によるクリスマスオラトリオのCDは先にクイケン/ラ・プティットバンドによるものが出ていたが、あちらは2013年12月の録音。こちらはそのちょうど4年後の録音ということになる。また、マドゥフ氏以外のメンバーは総入れ替えになっている。この二つの演奏を比較して見ると、基本的なアプローチは同じだが、前回自分がやや違和感を持った第1曲目の32分音符のアーティキュレーションについてはそれほど後寄りでもないしスラーも(ついてはいるものの)目立たない、つまり聴いていて自然な流れになっているように感じた。また、録音についてだが、クイケン盤はヴォーカルがそれぞれ一人というせいもあるのかもしれないが、バランス的にトランペットが大きめでしかもオンに聞こえる(マドゥフ氏自身はこのバランスが正しくていいと僕に語ってくれていたし、僕もそう思う)のに対し、今回はやや控えめで全体に自然なエコーがかかっている。これも聴きやすくしている要因かもしれない。まあ、これらは些細なことで、いずれにせよどちらも素晴らしい演奏であることは間違いない。

ただし、今回の録音に関しては重大なミスがあるのを発見してしまった。それは編集時に発生したものと思われるが、時折不自然なカットが見られるのだ。今回気づいたのは2つあって、No.42(第4部の終曲)の最後から4小節目が丸々カットになっていることと、No.54(第6部の1曲目)の18小節目の3拍目だけが落ちている(つまりこの小節だけ二拍子になっている)ことだ。トランペット、ホルンが入っている曲(全64曲のうち9曲)だけでこれだけ見つかったから、他にも同様の編集ミスがありそう。優れた演奏だけに大変残念なことだ。

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2020/02/07

CDその235 J.H.Schmelzer / Sonatas (Le Concert Brisé)

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カテゴリ: Austro-Bohemian Trumpet Music

タイトル: Johann Heinrich Schmelzer / Sonatas

演奏団体: Le Concert Brisé
Trumpet: Jean-François Madeuf

収録曲目: Sonata a3
                 Sonata a5(いずれもJohann Heinrich Schmelzer)

録音年月:2016.10 Talange (France)
レーベル: Accent ACC24324

フランスのコルネットの名手、ウィリアム・ドンゴワ率いるコンセール・ブリゼがオーストリアの作曲家シュメルツァー(1623-1680)のソナタを集めたCDを作った。これにジャン=フランソワ・マドゥフが加わって 全10曲のうち2曲でナチュラルトランペットの妙技を披露している。3声のソナタはトランペットの他にヴァイオリンとトロンボーンと通奏低音、5声のソナタはそれにコルネットとドルツィアン(ファゴットの祖先)が加わった編成で、どちらもチェコのクロムニェジーシュのアーカイブにある手稿譜(1664年)を元に演奏している。マドゥフ氏の使っている楽器はConrad Droschel(1596-1644)をモデルにして2005年にマルクス・ラケが製作したものだ。

シュメルツァーの曲はどれも技巧的で、特に5声のソナタの方は中間部にそれぞれの楽器の超絶なソロがある。確かポール・プランケットのCDの時も書いたと思うけれど、なんでこんなふうに吹けるのか不思議というくらい超難しい。しかもこのプランケットの演奏にしろ、同じく見事な演奏だったウテ・ハーヴィッヒのCDにしろ、3つ孔のバロックトランペットでの録音だったのだが、マドゥフ氏は当然のことながら作曲時同時代のナチュラルトランペットで吹き切っているのがとにかく驚嘆すべきことで、聴いていても手に汗握る感じすらある。自分の場合、カッコいい曲を聞くと自分でも演奏してみたくなるのが普通の流れなのだが、この曲だけはちょっとトライしたいという気も起こさせないくらい、それくらい難易度の高い曲だとは言える。他の楽器も皆演奏は見事で、音色やスタイルのせいもあるかもしれないが、超絶技巧の中にもなんだか素朴な印象を受け、ふと以前訪れたチェコののどかな田園風景を思い浮かべてしまった。

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2020/01/28

CDその234 Daniel Speer / Kriegsgeschichten(Ars Antiqua Austria)

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カテゴリ:German Trumpet Music

タイトル:Kriegsgeschichten
               Musicalsch-Türckischer Eulen-Spiegel (1688)

演奏団体:Ars Antiqua Austria
Trumpet:  Martin Patscheider
               Christian Gruber

収録曲目:Sonata 26
               Sonata 27
               Sonata 28(いずれもDaniel Speer)

録音年月:2014.3 Germanisches Nationalmuseum Nürnberg
レーベル:Pan Classics PC10317

コメント:ダニエル・シュペール(1636-1707)はブラスアンサンブルをかじったことのある人にとっては懐かしい名前だろう。トロンボーンのトリオの曲とか「ヘボ詩人のソナタ」とかが有名だ。このCDはそのシュペールが創作した音楽劇「戦争物語」の一部を復元したもので、テノールが語りや歌で物語を進めていく伴奏を弦楽合奏が務めるという形式になっている。そしてその曲集の中に金管五重奏(コルネット2本とトロンボーン3本、あるいはトランペット2本とトロンボーン3本)のソナタが数曲収まっており、先にあげた「ヘボ詩人のソナタ」もこの中の29曲目に含まれているというわけだ。 このブラスアンサンブル曲は物語の合間に所々で賑やかしに使われたものと思われる。ここで取り上げられているのはトランペット2本トロンボーン3本のソナタが3曲。いずれもシンプルな曲だが、シュペールは各楽器の教則本も書いているほど器楽の使い方には精通しており、無理ないアンサンブルが楽しめる。ついでにドイツ語がわかれば荒唐無稽な物語も楽しむことができるようになっている。

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2020/01/20

CDその233 Weichlein / Encaenia Musices (Capella vitalis Berlin)

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カテゴリ:Austro-Bohemian Trumpet Music

タイトル:Encaenia Musices

演奏団体:Capella Vitalis Berlin
Trumpet:Helen Barsby
               Michael Dallmann
Instruments : Rainer Egger 2002 Haas, 2005 Ehe

収録曲目:Sonata I a6 (Romanus Weichlein)
              Sonata XII a8 (Romanus Weichlein)
              Duet No.1, No.2, No.4 (Romanus Weichlein)

録音年月:2013.2 Lindenkirche in Berlin
レーベル:Raumklang RK3401

コメント:カペラ・ヴィタリス・ベルリンは2002年結成のバロックアンサンブル。HPを見ると普段はバッハを主体とした演奏活動をしているようだが、これはオーストリアのヴァイヒライン(1652-1705)を取り上げている珍しいCDだ。ヴァイヒラインのEncaenia Musices (1695)という曲集についてはこちら参照いただきたいが、その中からトランペットを含むソナタ3曲のうち2曲、それに24曲のデュエット集から3曲を収録してある。アンサンブルメンバーのHelen Barsbyはニュージーランド出身で、渡欧してオランダでバロックトランペットを学んだのちドイツで活動を続けている。CDのライナーノートの写真を見ると二人とも3つ穴のショートモデルを使用しているようだ。演奏はオーソドックスだが水準以上で、こんな風にどんどん知らない奏者が出てくるのを見るにつけ、ドイツではバロックトランペットの教育がかなり浸透して裾野が広がっているんだろうなと思わされる。

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